表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-  作者: 琉璃宿命
14.混線

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/107

番外SS4:シトラの食事

「シトラがさぁ、最近舌が肥えてきたようなんだ」

「へぇ、というと?」


 最近のみっちゃんは、シトラのことばかり話している。

 すっかり親バカのそれだ。


「のり弁当、あるじゃん。

 海苔の下に敷く鰹節、持っていくと冷めてしけしけになってるのが微妙に……というか本気で気に喰わないらしくてさ、のりの間に鰹節挟むなって言い始めるんだよ。

 でもそれさ、正直ほぼ米の味にならん?

 あれってないときに初めて、鰹節の風味がどうバランスを取ってくれてたか、ようやくその有難さに気づいたりするんだよ」

「お、おう」

「流石に贅沢言うなって話でさ、仕方なく、あったかい米に海苔と鰹節のあるやつないやつ比較で出すじゃん。でもやっぱり冷たいのはいやーって。もうさ、三歩歩いて忘れるんじゃないんだからさ。

 ただ、学校行っていると、僕のいない時間がどうしてもできるじゃん。

 四六時中作ってやれるわけもないんだし、レンジであっためて、とか後から海苔を挟んで、みたいに細かい指示出しても、小さい子が全部わかってタスクを処理できるわけじゃないし」

「みっちゃん、本当にシトラのこと大切そうに話すよね」

「そりゃまぁ、家族なんだし」

「ふーん……それで、その荷物は?」


 枸櫞はわりと大掛かりな荷物を背負っている。


「明日日帰りで、バウムクーヘン」

「どういうこと???」

「キャンプ地とかで焼いてさ、シトラに食わすの。

 最近お高そうな店の見かけてさ、そこのばっか買ってこいって言うんだけど、やっぱり物の価値というのを一から叩きこまないと」

「だからって、なんで?」

「竹筒で焼けるって知ってた?

 なんなら、珊瑚くんも一緒に行くかい」

「――」


*


 結局、その誘いに乗っていた。


「さんごもばーむくーへん手伝ってくれるの!?」

「うん」

「じゃあはやくはやく!」


 ガキのくせして、結構強い力で袖を引っ張られる。


「アサくんに道具借りたんだ、炭とかさ。

 藍堂さんが車出してくれたし」

「道理で見覚えのあるわけだ。

 その護斗は?」

「今日は用事があって、これないって。

 珊瑚によろしく言ってたよ」

「さいですか、ならやったろうじゃん、真のバウムクーヘンを」


 軍手をもらい、服の袖をまくった。

 そうやってしばらく、気合入れて取り組んだものの――



「――、なんか違う」

「これ、筒に定着してないな。破裂防止の穴あけはできてるけど。

 最初に油抜きしないとだめらしいぞ」

「ごめん、ちゃんと確認してなかった」

「時間はまだあるから、またやってみよう」


 みっちゃんは失敗した僕を励まして、すぐに次の行動に移る。

 シトラに喜んで欲しい――そういうことなんだろう。

 僕は自分の見栄を張りたくて、気がはやっていたというに……本当、彼の器の広さに、救われている。


「筒を回転させるのも、技術が要るんだって。

 流石に、素人でよって集まってるだけだしなぁ」


 動画や検索サイトの知識をかじってだけど、やがてなんとか、食べられそうな形にはなってきた。


「本人は向こうで遊んでるけど、いいの?」

「生地は頑張って混ぜてくれたよ。

 火元にずっと近づけててもしょうがないだろう、これ交代でやってても、結構熱いし疲れる……」

「だね。人魚が草遊びですか」


 結果、焼き上がりはやや不格好な年輪になったけれど、シトラは大満足のお味だったようだ。

 焼きたてのバウムクーヘンを頬張りながら、頑張った甲斐はあったと想うのだが――


「そういやみっちゃん、どうして僕を誘ってくれたの?

 護斗はとかく、白錫先輩だっているじゃない、この三人と藍堂さんだなんて」

「予定は合わないじゃなかったけど、力仕事があったからな。

 それに、浅葱さんが別で大学のゼミ生と遊ぶ約束入れてたみたいで、邪魔するのも忍びなかったし。

 なにより僕が、珊瑚くんと行きたかった。

 学年とかそういう上下をさておいて、マブダチと旅行できたって思い出、いくらあっても困らないでしょ?」

「ありがとう……」


 しぜん、謝意が口から洩れた。みっちゃんはいつも、周りのことをよく考えている。年齢に見合わないほど成熟しているのが、けしていい境遇かはわからないけど、そのたび自分のことで頭がいっぱいな僕は、彼の度量に拾ってもらってる。

 そんな僕なのに、彼はかけがえのない友だと、認めてくれているのが、本当にうれしくて――


*


 あのあと急に、珊瑚くんの涙腺が崩壊したから何事かとおもったが、その日はネーレイスに関する変なことも起こらない、ほんとうに穏やかな日で。

 ……だけど僕は、あと何度、こうした日を過ごせるだろうか。

 帰りの車内、遊び疲れて眠ってしまったシトラ。

 彼女を膝に抱え、西日にぼんやりと想いを馳せていた。


「もうすっかり、人の親だな」


 藍堂から言われる。


「そういうもの、でしょうか。自分では、あんまりうまくできている気もしないですけど」

「これだって、その子のために、考えてやったことだろう」

「お嬢やアサくんの力を借りて、ようやっとですよ」

「それでも、実現できてよかったじゃないか。

 ……うちに娘がいたら、きっといまのシトラちゃんぐらいだったんだろうな」

「?」


 引っかかることを言う。ゴリラ顔なのに、既婚者だったか?

 わりに伴侶は見かけないが――確かに左手薬指に指輪がある。


「あはは、湿っぽいこと言っちまう」

「別居中ですか」

「おうよ、俺が不甲斐ないばっかりにな。

 その子をお前が猫かわいがりするのも、わかる気がするよ。

 今度、うちの妻に紹介してやってくれないか?」

「人魚ですよ」

「そういうのは、さておき。

 きっと気に入ると想うんだわ」

枸「おいおめぇら!

 シトラ様はバウムクーヘンが大好物だそうだ、献上しろッ!!!」

シ「そこで素直にこーひょーか、おねだりしちゃいけないの?」

珊「規約は守ろうね、シトラちゃん。

 ところでシトラが図太いの、みっちゃんの性格のせいが九割がただと思う」

枸「(;´Д`)」


 大人サイドを深堀りする尺的な余裕がなくて、四苦八苦です(;^ω^)

 ブクマ感想はお気軽にお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ