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マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-  作者: 琉璃宿命
13.泉客那戯

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第63話 完遂

 期末考査が終わって、夏季休業手前へ差し掛かる頃。

 泉客那戯の消息は、依然として絶たれたままだ。

 美岬を通じて、いつでも出てこれるやもしれないが、あの人を犠牲にするつもりはない。


「最初に約束したでしょ、美岬さん。

 全員が生き残る道を探す、そこからきみ自身が外れてはいけないんだ。

 ところで、今度の夏は山でも案内してくれないか?」

「山、どうして」

「そりゃ、海なんて見飽きるほどだからね。

 もう親の顔より見たんじゃないかってくらいだ」


 すると美岬は噴きだして笑う。


「いいよ、わかった。全部終わったら、天充くんの言うとおりにする」


*


 考査の終わったあたりから、都内へ転移して、姉さんの事務所のマネージャーを、身をやつして尾行した。

 毎晩のように通うキャバクラで、姉さんをキズモノにしたあの男もすぐに見つけた。

 こうしてあたりはついたので、あとは警察には、僕が怨恨の線で拉致したなんてことを気取られないよう、入念に計画を編む。

 奴らは、ひとを食った性格で、隙を見つけるのは簡単だった。

 泥酔して店を出たところをひっ捕まえれば、それでよかった。

 付近のカメラの歩行認証あたりはどう誤魔化すか、結局最後までいろいろ考えていたのだが、顔が映らなければ御の字とすることに。靴は踵を増すやつを履いたが、正直役に立つとも想えないがまぁ。……どうせまともな科学捜査で、僕のアリバイが整合することはないんだから。

 警視庁や警察庁が、テルクの海原を前提に捜索を行えるわけもない。

 犯行はマネージャーから順、二回にわけて行う。

 主犯は、マネージャーがいなくなれば、警戒くらいするかもしれないが、もうどうにでもなれ。

 死体と証拠さえ、テルクにすべて沈めればいい――。


*


 二回とも驚くほどすんなりと進んでしまった。


「おい!?

 俺を助けろ、おまえ!」

「――」


 フードを被った僕の顔など、わかるまい。やつも相当数の人間に、恨まれているはずだ。

 僕は砂上に倒れたやつに近づいて、フードをとった。

 やつは、息を呑む。


「死んだ、はずじゃ……」

「本当に死んだと、想ってました?」


 枸櫞の顔立ちはなんだかんだ、生前の檸檬によく似ていた。

 するとウィッグや化粧で、それに近い姿にはなれるのだ。

 彼は乱暴に、拘束した男を岩場へ突き飛ばす。


「じき、潮が満ちる。

 意味はお分かりですね?」


 そうして、動けない手足の静脈に狙って弾痕をつけ、放置する。

 自分は岩場に登って、やつが喚いて、こと切れるまでをじっくり見物させてもらうことにした。

 とにかく、長く苦しんでもらおう。

 どうせ、マネージャーにもこのまえやっている。

 人を殺すことに、良心の呵責などないか?

 どうでもよろしい、僕はただ、これを整然と執行したいだけなんだ。


「――、――」


 これで、よかったのだ。

 僕は望んで、奴らを殺す。


「本当に海なんて、見飽きてしまうよ……」

「きみの執念には、見上げたものだ。

 できれば、敵には回したくないんだが」

「――」


 背後から声がかかった。

 テルクの岩礁、美岬の姿でやつはまた現れる。


「復讐達成おめでとう、天充くん」

「……どうも、よもや那戯さんにお祝いしていただけるとはね」


 彼女の背後に、薄水色の壱号機も立っている。

 夜景には映えた魔性だ、皮肉なくらいに。


「いつまで美岬嬢を使い潰すつもりですか、ぼろ雑巾じゃあるまいて?

 そういうのをやめていただければ、お互いもっと建設的なお話にもなりましょうに」

「きみはそういうのに、拘る人だったんだな。

 だけれどやはり、正義の味方でなく、独善を貫くモノだ」

「僕は人の造る法を尊重し、順守していきたいと心の底から願っていますよ。

 運よく、僕らにはこの世界があった。

 ここは到底、日本の国内とは呼べんでしょう?」

「好きだよ、その詭弁。

 実際、警察は君を疑ったところで、けしてきみを罰せない。

 そのどこまでも合理を徹底する、きみの姿勢こそ、僕のパートナーに相応しい。

 きみが僕の手を取ってくれれば、僕は美岬を殺さなくて済む、どうかな?」


 枸櫞は岩から降りて、虫の息の男のところまで歩いていく。

 そして、額に一発。

 僕ら家族を壊した存在は、目を剥いて、今度こそこと切れる。

 枸櫞は黙々と、ウィッグを脱いだ。

 あとは死体を、浜で焼く。


「もういいのかい?」

「飽きましたから。

 それに――姉さんの真似も、得意じゃありません。

 あなたはこの世界で、いったいなにを望んでいるんです」

「美岬から聞いたはずだろう。

 テルクと現世うつしよの均衡を覆してやるのさ。

 ネーレイスの身体、ヤヲ因子は本当に便利だな。

 先史文明と先人たちは、素敵なものを僕らに遺してくれた。

 そうは想わないか?

 僕は遵法になどとんと関心はないが、世の理を手にするやり方は心得ている。文明諸共に滅ぼせば、規範そのものが押し流されるわけだ」

「可愛い顔と口して、言うことがほんとう物騒ですね」


 枸櫞は彼に近づいて、その下顎に指をかける。


「?」


 枸櫞が唇を寄せると、向こうは動揺して、彼の顔を叩く。


「ばかじゃないの!?

 付き合ってるひといるのに!!!」

「――、やっぱりまだ、そこにいるじゃないか、美岬さん」

「!」


 泉客美岬は、後ずさった。


「俺はそういうきみの潔癖さを、媚びなさをこそ好きなんだよ。

 とても高く、評価している。

 だからさ、いつまでもそんなクソ野郎に身体使われてないで、いいんじゃないか?」

「っ……やっぱ人類、滅ぼそうかな」

「おお、こわ」


 枸櫞は肩を竦めて、おどける。いまのは完全に『美岬』だった。

 美岬の顔で、やつは苦笑する。


「死にぞこないをこうやって取り戻そうとはね、仕方ない。

 だけれど、壱号機は貰っていく。もともと、翼にはもったいないと想っていたんだ」


 美岬が、項垂れる。

 背後で壱号機が動き出し、遠方へと去っていく。


「んー、まんまと盗られちゃったな」

「なにやってくれてんの……ばかそらみつ」

「じゃあ、あの兄のために、死んでよかったのか?

 きみの自我を、完全に消し去るつもりでいたんだろう」

「わたしは」

「造り物だから、長生きなんてできなくてしょうがない?

 それ同じこと、闢くんに言えるかね」

「――、ほんとっ、ずるい。

 私をこんな風にした責任、絶対取ってもらうから!」

「知っているかい。

 アステロイドベルトでは、重婚が可なんだって。

 日系の移民で、両手に花なひと、そう言えばいたよな」

「あぁ、元は軍人の。

 ……それはなに?

 遠回しなプロポーズですか?」

「本気で受け取らないでくれよ、俺は琉稀さん一筋って、もう腹括ったんで。

 それに、まずは家族のもとへ、生きて帰れる。

 壱号機は盗られちゃったけど」

「あいつ、もう私の意識は乗っ取れないかもしれないけど、私が見聞きするものは、結局ヤヲ因子を通じて、筒抜けているとおもう。

 私なんか取り戻して、いいこと」

「闢くんが喜ぶ。僕も嬉しい。

 シトラは大喜び、なにか問題でも???」

「な――」

「いいことづくめしかないね、証明終了《QED》?」


 彼のおちゃらけた態度には、やや納得いかなかったが。

 美岬は、彼の胸に飛び込んで、しばらくじっと顔を埋めていた。


「ありがとう……私を、見つけてくれて」

スーパー復讐タイム終了しちゃった……次から何を糧に続き書いていけばいいんや?(;^ω^)


わいの宇宙では重婚可なんや(ルー○ス並感で貞操の行方を語るな

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