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マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-  作者: 琉璃宿命
9.チェインドライヴ

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第43話 繋ぐ

 舟を壊したばかりの十三号機は、海の上で槍を振るう。

 まるで号令するかのように。


『なんだよ、あれ』


 現れたネーレイスの群れが、同族同士で乱闘を始めるではないか。

 殆どはフェザー級や魔海狼級やら、ろくに等級もついていないようなのも含め木っ端だが、如何せん、数が多い。


「人魚を惑わす、人形の唄――おおよそ海軍がしたかったこと、なんだろうけど」

『どういうこと、みっちゃん』

「あいつは海軍の仲間を殺した。

 元々仲間だとも思っちゃいないんだろう。

 気を抜いていると、何をしでかされるかわからないぞ」

『自分たちの駒の手綱も御し得ないのか、あいつらは』


 濱田は呆れている。当然の反応だろう。

 十三号機は、ネーレイスを操っている。

 すぐにこちらへも、群れの一部を差し向けた。


『言わんこっちゃない!?

 いくら鮫人が《《四機》》いるといえ、ネーレイスがこの数では骨が折れるぞソラの字!』

『龍宮探査の二の舞は勘弁してくれろよ』

「泣き言が、多いすね、先輩方。

 こちとら覚醒した人形が二体いるんだ、もっとどっしり構えたらいかがでしょう?」


(四機……まぁシトラを頭数にはしないよな、アサくんは。

 一緒に戦うのが常態な、僕のがどうかしている)


 枸櫞はふっと息を洩らしてから、目を細める。

 戦闘に集中するよう、切り替えていこう。


「護斗くん、指揮系統は?

 発令所からはなんと言っている?」

『シトラちゃんが出たとき、お嬢からは現場の判断を優先する、生き残れと言われた。

 これはもう、発令所の椅子から指示出しして処理できる内容を越しているだろう』

「――、きみに任せる。

 僕は僕の意思で、あれを捕えたいが、戦略的にみなを動かせるのは、きみだけだ」

『付き合いの年季がちげぇよ、たりめぇだろう』


 濱田から懸念の声が出た。


『海軍の舟をやったやつだぞ、正気か?』

「最悪、残骸にしてから陸軍に渡しても、それは仕方ないんですが……ここから先、海軍に対抗する手札が欲しいんです。

 でなくては、この場限りを生き延びても、泉客の共鳴者たちが生き残れない。海軍の傀儡がお望みでないなら、手伝ってほしいんですね。

 生かしてさえおけば、自分たちのやらかしを手中に収められているとの同じですから」


(それにしてもシトラは、なぜ心臓のない四号機を動かす?

 八号機やリターナーでさえない。琉稀さんの身体で、負担を押して、危険を冒してまで――)


『くるぞ!』「!?」


 五号機が十三号機と正面から槍術で迎え撃つ。


『弐号機と八号機で、操られたネーレイスを牽制してくれ!

 代わりに俺と三号機で――こいつだけは!』


 三号機は弐号機に壊された両腕を、よりにも紅珊瑚で再構築してもらっているようだ。細かい操作が効かないため、三号機の鋸刃は手首に一体化されている。

 鮫人二人がかりならあるいは、とみな考えないではなかったが――十三号機は容赦なかった。

 右肩口にミサイルポッドとも魚雷ともとれるスロットが展開され、五号機と三号機は取っ組み合いの合間にそれを回避しなくてはならない。


『ネーレイスのようにはいかない』

「「「!」」」


 十三号機から初めて、人の言葉が発される。


「十三号機の、共鳴者。

 聞こえているなら答えろ、なぜ海軍の舟を攻撃した!」

『その上から目線、何様のつもりだ。

 俺が仕込まれたのは、人の殺し方だ。

 お前たちがネーレイスを相手に、ちまちまやっているごっこ遊びとは違う』

「ほぉ」

『感心している場合か、ソラの字!?

 手加減なんてできないぞ!』


 そんなことは百も承知だ。

 十三号機を無力化するか、破壊できなければ、ネーレイスたちの暴走も止まらないだろう。


『なぜお前たちは俺を止めようとする!?

 関係ないだろう、俺は海軍の馬鹿どもからやっと自由になれたんだ!

 お前たちだってネーレイスは憎いはずだ、滅びていいとすら想っている!

 生半可な覚悟で俺の前に立つなら、死んでしまえ、共鳴者たち!』

『ぐっ』『みっちゃん、避けて!僕は二人を――』『こいつはなにがしたいんだ、天充弟、四号機を!』


 三人を盾に、上空からのミサイルの雨を回避する。


「――」


 八号機は、浜で立ち尽くす四号機の前に立った。


「琉……シトラ、大丈夫か」

『枸櫞……枸櫞なら、あの子を救ってあげられる』

「なぜ、そうまでするんだ。

 まるで僕の望みなんて、わかりきっているかのように、いつも、きみは――」

『わかるよ。琉稀も、檸檬も……枸櫞の、お姉ちゃんだから』

「――」


 頭を、冷やせ。


『人魚は魔性だ、人を狂わせ、俺たちの人生を無茶苦茶にする!』

「枸櫞、あいつがくる」

「あいつ」


 直後、犬型の黒い異形が浜の向こうから現れる。


真水狩人アーウィヅォウト

 共鳴機構とやらに、引き寄せられたか」


 俺が必死で探しても、ろくな棲処の手がかりもなかったのに。


(ちゃっかり出てきやがって――けど)


 今は十三号機を片付けることに集中しなくては、みなの命がかかる。琉稀さんは、僕が三人を見殺しにするようなこと、納得はしてくれないだろう。

 広域型の攻撃ができる、二号機の異能を扱ってなお、十三号機に圧倒される。

 珊瑚くんの力だって、以前にも増しているのに。

 ポッドの中は尽きる様子がなく、時間差でミサイルの雨が続いている。こうなってくると、元の容量をヤヲ因子かなにかの作用でかさ増ししているんじゃないかとすら思えてきた。

 弐号機はそのたび異能で、ミサイルを串刺しにすることで着弾を防ぐが、そちらの発動に気を取られると足場にネーレイスが寄せて崩されかかる、を繰り返しており、護斗たちは足元のネーレイスを封じるので手いっぱいになっている。


『このままじゃ、ジリ貧だ!

 天充弟、四号機に向かってる!

 いま抜かれた!』

「問題ありません。

 シトラ、そうなんだよな?」


 四号機が、頷いた。


『あーうぃづぉーと、来るよ』


 四号機に跳ぶ十三号機の脇腹に、そいつは噛みついていった。


『んっ……《《枸櫞くん》》?』

「琉稀さん!?」


 真水狩人に近いからか、彼女の意識が覚醒しかかっている。


『シトラちゃん、どうして四号機のなかに――』

『ふたりとも、てつだって!

 シトラ、あいつらに《《負けたくない》》!』

「シトラ……僕は、なにをすればいい?」


 色々起き過ぎていて、理解が追いついてこない。

 だけど、一気に状況を解決すべき時が、ここなんじゃないか。


『四号機に、わたしが繋ぐ!

 くえんの力、みんなに!』

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