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マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-  作者: 琉璃宿命
9.チェインドライヴ

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第41話 拘禁

 美岬は憤然と、理事長室へ赴いた。


「入るならノックぐらいしたらどうだ」

「天充枸櫞が、道中で海軍に拉致されたんですよ?

 こうなること、あなただって予想できていたはずです!」

「――、美岬。これが結果だ。

 政府や軍が本格的に動けば、我々などひとたまりもない」

「見え透いた犠牲を出して、どうしてふんぞり返っていられるんです」


 彼女は怒りに肩を震わせている。


「遺跡から手を引け。あれは元来、我々の手に負えるものではなかったのだ。

 お前はそうして、あの少年を取りこぼした。

 次は一人だけでは済まされん」

「天充くんは、私の手で救ってみせます。

 あなたに共鳴者たちを語る資格なんてない、犠牲を損切りしているだけのあなたには!」


 美岬が部屋から出ていくと、父は頭を抱えた。


「……それがただの増長でないなら、天充枸櫞はこの難所を乗り越えていたはずだ。もう事態は決している」


*


 後頭部の鈍痛がやまない。暗がりで目を覚ますと、後ろ手を拘束されていた。


「――」

「八号機の共鳴者、天充枸櫞だな?

 どうやら人違いということもなさそうだ」

「……」


 すっと息を吸おうとした彼に、ナイフを携行した男たちが警告する。


「叫ぶのはやめておけ、ここを水深何百メートルだと思っている」

「どこですか、ここは」

「きみに答えてやる義理はない、異端の共鳴者」


 異端、か。


「こんなところへ問答無用に連れてきたとして、僕になにかやらせようってんでしょう」


(地元で先輩に会って、美岬嬢に教わった興信所を訪ねた。

 駅から尾行されていた?

 ようには思わないけど――)


「ヤヲ因子を、嗅ぎつけたのか」

「察しがいいな。こちらとしたら、言うこと聞いてくれればそれで済むのだが」


(潜水艦内……かといって、僕も詳しいわけじゃない。

 だけど、すでに陸から離れていそうだ)


「当代で人形を覚醒に至らせたのは、八号機と二号機の共鳴者のみだ。

 泉客の周辺では、遺跡に阻まれてしまうが――きみはその限りでもなかったのだから、我々には僥倖だ」


(陸軍に行くはずが、海軍に拉致られると。

 共鳴者の争奪戦なんて、彼らはやっているわけか?)


「回りくどいのは嫌なんですが。

 そいで、海軍さん方は僕になにをお求めなんです?」

「十三号機の共鳴者と協力し、この舟をテルクへ送ってくれ。

 ネーレイス用に開発された、試作弾頭のテストだ」

「……御冗談を」

「きみは我々の周りを嗅ぎまわっていたはずだ。

 十三号機の限定跳躍能力は、喪われていない」

「なぜ僕なんです。共鳴者はほかにいくらだって」

「天命を与えられたなら、国に生まれた海の男は、それを全うするべきではないかね。言い訳など必要ない」


 押しつけがましい話だ。


「十三号機には、十三号機の共鳴者がいるはずだと言っている。

 なんならこの場で死んでやるぐらい、僕はやってやるが?」


 客観的には舐めた態度だろうが、枸櫞は本気だった。

 話していた男に、直後殴打される。


「共鳴者の病理か?

 お前たちは自分らの価値を高く見すぎている。

 必要なのは故国へ奉じる駒だ、おのが誇りもない輩は、ほんとうにたちが悪いな」


 鼓膜が破られたらしい、半分くらいの物音が、遠ざかってしまった。

 この程度なら、人魚の力で徐々に修復できようが――やつらは僕に、抵抗させないつもりだ。

 閉鎖空間ということもあり、彼らはここでの出来事を隠蔽できる気でいる。

 実際、できてしまうんだろう。だから平然と手を上げられる。


(待てよ。なぜ十三号機の能力をあてにしている。

 八号機やシトラではなく――泉客からの情報すべてが、こちらに流れているわけじゃないなら、彼らは僕自身が八号機を跳躍できるとは知らないのか?)


 それとも、枸櫞にそう思わせるブラフかもしらないが。

 舟をテルクへ転移させ、ネーレイスへの試射訓練?

 陸軍はこのことを掴んだとして、そののちどう動いているだろう。


(もし陸軍に伝わっていないなら、こちらが約束を反故にしたと思われるのは、よくない)


 出かけに理事長から、接触すべき人物の連絡先は貰っている。

 美岬嬢は両軍とも、介入されたくはなかろうが――こうなったら、巻き込んででも解決を図ろう。“暴”には、相応の権威で対抗しなくてはなるまい。


「なら十三号機だけでやってればいいでしょう、こっちまで巻き込むなよ!」

「減らず口だな。人造の共鳴者など、消耗品だ。人形を覚醒できる手堅い駒が本命だ、きみは生かさず死なさない」


 口に猿轡を押し込まれた。


「大人しく協力するとは思えなかったが、結局こうするのが正解のようだな」

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