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マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-  作者: 琉璃宿命
8.八岐級

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第40話 東京行き

「東京へ行って、陸軍と接触する!?

 またあの人は!」

「僕も断れなかった、理由は想像に任せるけど」

「なぜきみこそ、承諾したの。断れなかったと言いつ、ホントはなにか引き出そうとしたんじゃないの」

「……そうだな。考えてみれば僕は、泉客グループを通してしか、遺跡や鮫人のことを知りようがなかったから。

 軍がそれをどう捉えているか、興味がないじゃなかったのか」

「バカ言わないで、大人しく従えば、私たちは奴らに使い捨てられるだけよ」

「それをこれから、確かめてくる。

 まぁ僕になにかあったら、シトラのことは頼んだよ」

「――」


 美岬は案の定、いい顔をしなかった。


「シトラには伝えたの?」

「あの状態の子にか?」

「あの子にとって、状態は些細なことでしょ。

 無理にとは言わないけど、やってきたら」

「あぁ……」


 枸櫞は重い腰をあげるしかなかった。


*


「シトラ」


 琉稀の姿の彼女をそう呼ぶことに、今も妙な感覚が尾を引く。浅葱さんもいた。


「大学の講義は?」

「シトラちゃんがこなしてる。琉稀の記憶を辿って、これで案外やれてるの」

「へぇ……東京へ行ってくるよ。

 やらなきゃならないことがあるんだ。戻ってくるのに、数日かかりそうだ」

「うん……」


 シトラ本人は俯くばかりだ。気まずい空気が流れていた。てっきり、危険だと引き留めてくれるんじゃないか、そんな気でいたが。


*


 東京へ行くのは、初心を見つめ直すためでもある。

 向こうに戻っている間、ネーレイスは護斗達に任せておけばいいだろう。

 元々僕がいない頃から、彼らはずっとやっている。

 泉客の遺跡を軍や政府が乗っ取ろうとしているって話は、寧ろこれまでなかったほうがおかしいっちゃそうなんだ。

 人形個々に持っている超常の力そのものはさしたる問題でなく、それが海域を支配するという実利。

 鮫人というより、連中はテルクにいるネーレイスを含めたすべてを多角的な観点から、軍事に接収する手立てを考えている。

 大人たちの策謀を巡らしたあとから、僕らの世代が遺跡に関心を持ってしまった。

 子世代なんて、いつもそうやって横柄に大人たちのやってきたものを持って行ってしまう。


 ……そんなことより、僕の復讐をいい加減に進めなきゃならないか。

 泉客さんの情報網に頼って、やがてわかってきたことがある。

 事務所のプロデューサーと加害者は実際に懇意だった。

 事件の当日も、姉さんと加害者の対面をセットしたのも、事務所側だ。

 つまり事務所は、守るべきタレントを守ろうとしなかった。

 ならば彼らの責任だって追及されるべきだ。

 警察の捜査線上に浮いた情報をなぞっているのと、結局は変わらないかもしれない。

 だけど司法は、あの男を執行猶予付きで逃している。そんなもの、野放しと意味が違わない。美岬嬢に頼らなければ金もない僕にできることは、限られている。


「あの男を、殺す。

 いやそれだけで足りない……すべて、地獄に引きずり込んでやらないと」


 ヤヲ因子の権能は、首都圏でも有用なはずだ。

 シトラの空間転移を使えば、新幹線や私鉄の乗り継ぎなんてすっ飛ばせるかもしれないが、軍がヤヲ因子にどのような対抗策を持つのか定かでないので、下手に目立ちそうなことはしない。

 加害者の男を処理するのは、非常に簡単なことだ。

 アポイントをとって、テルクへおびき出せばいい。

 あそこで殺せば、死体が出ることはない――事件そのものを隠蔽することは簡単だ。だから、最後にやるべきことは迷っていない。


(仮に僕の復讐が一つ終わっても、ヤヲ因子は共鳴者を手放さない。

 人形を降りるだけならできるけど、それはネーレイスとの戦いを、いま護斗たちに任せているように、誰かへ押し付けるってことだ。

 まぁ、ある日無作為に選出されるのと、国防のために自ら志願できるのとなら、どっちがいいかよくわからないけど……)


 テルクはそんな、大人の事情なんてお構いなしにやってくる。

 それを彼らがどう考えているか、できるんだろうか、木っ端な僕に確かめるなんてことが。

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