番外SS2:共鳴者たちと欠番機
・壱号機:伏馬翼
・弐号機:紅觜珊瑚
・三号機:濱田蕪木兎
・四号機:白錫琉稀
・五号機:朝桐護斗
・六号機:交叉貫
・七号機:交叉浅葱
・八号機:天充枸櫞
・九号機:???
・十号機:???
・十一号機:???
・十二号機:???
・十三号機:泉客から海軍へ研究用に譲渡された、共鳴者がいることはまず確定しているようだが、現在不明(美岬嬢でも情報を得られないらしい
「と、こんなところか……」
枸櫞はそれまでにまとまった情報をメモに書き上げ、懐にしまう。
社務所のなかで、浅葱たちがやってきた。
もう四人は誰なのか、いっそ聞いてみるのもありかもしれない。
「あれですよね。
浅葱さんとかが実はすごい巫女パワー的な何か、持ってたりするんです?」
「急に中学生の頃の護斗くんみたいなこと言い始めたね。
ないです」
「そうですかぁ、こう、別に鮫人に関わらないことでいいんですけど、実は占いが得意、とか」
「それができれば苦労はないわね。
つーかそれ、シトラちゃんに振り回されてるあなたに意味あるの?
あの子に予知夢だか明晰夢だか、見せられてるって話じゃない。
私みたいな木っ端ファッション巫女なんかより、きみのほうがよっぽど超常現象してるけど」
「ぐぇ」
特段、イジろうとしてやっていたわけでもないけど、見事にやり返された気がする。話が脱線してしまったけれど、そろそろ、
「貫さん、僕のまだ会っていない適格者について、教えていただけませんか?」
当然に出てくる疑問だった。貫が片眉をあげる。
「あぁ、九号機から先は実働しているところさえ最近は見ないものな」
「そう、なんですか?」
「さて、これはどう話したものか。
あまり、明るい話題ではないよ」
「そう、ですか。覚悟、決めました」
「早いな。まぁ、人形の覚醒を遂げ、二号機の覚醒も見届けたきみには、きちんと話しておくべきなんだろう」
貫は淡々と語り始めた。
「九からさき、十二号機までは現在、泉客地下の遺跡に存在しない」
「は?」
言われて、枸櫞もすぐに思い起こす。
海中遺跡の全貌が、展望室から見えることもまず少ない。
海の荒れる日には、横並びになっている海中遺跡の人形やその待機溝など、はっきり言って全然見えない。そういうものだと割り切っていたし、そもそもじっくり確認しようには、最近までが忙しすぎた。
軟禁されたり、腹噛まれたり、肩抜かれたり――ろくな目に遭ってねぇ。
「それって現存している鮫人で泉客が動かせるの、八体までってことですか」
「そういうことになる。あとはみな、テルクの海原で共鳴者ごと消息を絶ってしまった。死亡の確認がとれたものは、最初から省かれている。
それにさぁ、本当に十三機全部動かして見せ場作るんなら、通年アニメでも尺足りるか微妙じゃない?」
「いつの時代の話ですか……」
最近はもっぱら、キッズアニメでもなければ分割二クール尺が当たり前になった時代だし、通年でロボットアニメが放映されてた時代があったことに軽く驚いている。いや見せ場って、ロボットアニメって。俺たちの体験はべつにアニメじゃないでしょう?
「鮫人自体、過去には記録上、二十体近くが発掘された。
遺跡の発掘そのものは落ち着いたけれど、それでも一度にそれだけ多量のオーパーツが大規模に採掘される、他の地域にはないことだ」
「そんなものを、泉客とあなたたちは、よく世間に隠しおおせているんですね」
「無論、情報統制的な側面もあるけれど――ヤヲ因子とネーレイスの唄、そして遺跡そのものの効果でもある」
――湾内一帯は遺跡に由来する力が、共鳴者と対策をするものを除いて、認識を阻害する。
鮫人にまつわる出来事はすべて、そうやって隠匿されてきた。そのほうが泉客にも政府にも、都合がいいんだろうね。
以前、珊瑚くんがそんなことを言っていたが。
「十四号機以降は、みなネーレイスとの戦闘や何らかの要因で中破ないし大破した欠番機だ。覚醒でもできなければ、ろくに扱えるものじゃない。原型をとどめず、残骸が遺ったものは海軍に譲渡されるか、残る殆どは元あった遺跡の待機溝に廃棄されている。
ちなみにそういうことが起きるたび、泉客では凶事を祓う意も込めて、欠番機ぶんの番号が後続機に適用され、繰り上がる。
翼くんのお父さんは、かつて旧十一号機に乗って死亡したが、その後失踪した現十一号機とはまた別モノだ、といった風に」
「――、色々とあるんですね。
じゃあ、現十一号機は、それこそどんな状況で失踪されたんですか」
美岬の兄、那戯の事件ともまた異なるはずだ。
すると貫は、苦い顔をした。
「『竜宮探査』」
「え」
「かかる四機を用いてな、海軍側からの要請で、テルクへ転移する実験が行われた。
遺跡管轄権の大半を美岬嬢に渡しておきながら、理事長が那戯を喪ったのちの悪あがきとばかりに画策したものだ。
その際、十三号機に人為的な空間跳躍能力が与えられたとされるが、奴らのやっていることは軍事機密でもある、僕らも全容を知らされていないんだ。
交信自体は転移後も一定期間続いたが、テルクの深海、海軍で『竜宮』と名付けたポイントへ到達した際、多量のネーレイスに遭遇し乱戦状態に陥ったうえ、最後、十一号機がいまある発令所に、海中でなんらか青白い発光のあったデータを送信されてから、全員の交信は完全に途絶えている。
これは地元の漁師家系だの、代々から共鳴者として協力してきてくれた人らを多く委縮させてしまったとともに、今日まで美岬嬢の活動の足を引っ張っている」
「生死は定かでないにしても、一度に四人もの犠牲者、ですか……」
「どうだい。きみも怖気づいたかい」
「姉さんはそのこと、知ってました?」
「いいや。そも、勧誘する前に、あの事件だったろう」
「――、姉さんが鮫人に乗るようなことになれば、僕は絶対に反対したでしょうね」
そこまで聞かされて、枸櫞は。
シトラを想い、覚醒した八号機のことを考える。
「ネーレイスとの戦いは、これからも続くんでしょうか」
「そうかもな。
だけれど枸櫞くん、きみが来てからのテルクには、何らかの新しい変化が起こりつつあるようだ」
「――」
「もしかしたら、ひととネーレイスの慣例に、きみこそが風穴を空けてしまうんじゃないか。
俺はそう、期待してしまうのかもな」
「……買い被りすぎですよ」
自分はそんな大した人間ではない。姉を救えず、琉稀も助けられていない。
「先輩。アーウィヅォウトを見つけたら、倒すのに協力してくれますか」
「当たり前だ。きみ以上に、僕らが白錫の同期だってこと、忘れちゃいないな?」
「です、ね」
「情報ならいくらでもやる。
ここからは競争だ、誰がいち早く、あのネーレイスを倒せるか、な」
「そりゃぁ……がぜん、負けられませんね」
枸櫞は顔をあげた。貫も頷く。
「やってやろう。テルクになにも、奪わせてはやらない」
心強い、先達の言葉だった。




