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マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-  作者: 琉璃宿命
6.歓待、魔性

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第28話 予後

 負傷した共鳴者たちを、一番傷の浅かった枸櫞が担いで、同じ病室へ連れてきた。


「みっちゃん……そっか僕、二号機で……やらかした?」

「うん、まぁ。

 船舶を壊さなくてよかったな、補填が面倒にならなくて」


 二時間ほどして目が覚めた彼に、枸櫞は素直に頷いた。

 隠しきることはできないだろう。


「みっちゃんが、止めてくれた。ごめん、一緒に戦いたかった……みっちゃんにいいとこ、見せようと思ってたのに」

「けど、凄いじゃないか。二号機で覚醒するだなんて」

「でもみっちゃんの時と違って、僕は――わかってる、港湾に跳んだところまでは、力が暴走して――いや、全部自分の意思。

 増長って、いうのかな、ああいうのは」


(流石に現状を理解しているな、だてに長いこと控えていない。初戦で軟禁されて凹んでた僕とは、大違いってことか)


「珊瑚くんを止められなかったのは、僕の落ち度だよ。

 八号機とは異なる覚醒が起きるって、どういうものか、まるでわかっていなかった」

「それはみっちゃんのせいじゃ、グループの誰だってわかんなかったって」

「きみに首輪を掛けた時、それで押さえたつもりになっていた、油断したよ」

「ほんと、ごめん。美岬さんたちに伝えて欲しい、処分は甘んじて受けるって」

「……わかった、僕はもう行く。報告してこないと。

 今日はゆっくり、休んでいて」


 そこへ、護斗が入ってきた。


「いやお前も寝てなきゃダメな身の上だからな!?」

「ちょっと――ちょっと出てくれ、頼む、必要なことだから」


 なんとか病棟の廊下に連れ出して、話し始める。


「三号機のひとは腕、珊瑚君は左の足首だ。

 腹部を貫通した切創は、反映されなかった」

濱田はまだ先輩な、三号機は。

 珊瑚と人形との同期が、そのタイミングで切られたんだろう。人形は極限値では共鳴者の生存を維持するほうへ、機能を振るようだから」

「?」


 枸櫞は自分を指さす。

 八号機に乗るたび、わりと酷い怪我負ってるんだが……。

 今回だって、両手足に未だ生々しい痣が刻まれている。


「俺にやられた時は、人形関係なかったろ。

 予期できる範囲なら、致命傷を避けられるかもしれない、程度の願掛けに考えておけ」

「融通利かねぇんだな、毎度痛い目に遭ってんのに」

「ところで、お嬢が不思議がっていた。

 シトラときみが、なにを察したのかって」

「――、あとで本人に話すよ。

 大丈夫、逃げないから」

「なにか、あるんだな?

 ……いいよ、深くは聞かん。

 全員生きてて、よかった」

「あぁ、本当だな」


 戦うたび、実感する。いままで命を拾ってきたのは、ただ運が良かっただけだ。なのに僕は、美岬嬢にとんでもない責任、重荷を背負わせてしまったんじゃないのか。

 その重荷が、彼女を潰してしまう前に、僕は――その意味と、向き合わなければいけないんだ。


*


 テルクの海原――あれを見たとき、あの場に連れ込んでさえしまえば、人ひとり消すなんて造作もない確信が得られてしまったんだ。だから、姉さんの復讐は、いつでもできる。

 僕の望む復讐のちっぽけさに較べて、美岬嬢のバイタリティや行動力には、ちと驚かされる。姉さんがそうであったように、ある種の天才型なんだろう。泉客のニューホープとは伊達ではなく、時々地方紙でも名前が取り上げられる少女だ。


「おはよう、美岬さん」

「おはよう」


 正門前で挨拶すると、なんでか周囲の生徒が色めき立つ。


「まさに美男美女って感じよねぇ」

「名字じゃなく、下のほうで呼んでる。

 あっという間に距離詰めてくよなあのプレイボーイ……」


(なんだと思われてるんだろうな、僕?)


「きみはもっと、自分の顔の良さを自覚――いやちょっと違うな、あんまり過小評価しないほうがいいとおもうよ。

 きみの顔で優しいこと言われたら、女子は本気にしちゃう」

「それを一番、本気にしてない人に言われてもなぁ」


 琉稀さんひとり口説くのだって、悪戦苦闘してんのに、ちょっと優しくしただけで、ころっと寄ってくるものでもないだろう。

 姉さんに似てるって意味での美形って評価は受け付けるけれど、それは僕を通して姉さんを見たいパブリック的なもので、僕自身を見ているわけではない。


「ずっと、聞きたかったことがあるんだけど」

「?」


 人気の薄いうち、校舎の廊下で口を開く。


「今頃姉さんさえ生きていれば、きみは鮫人にあのひとを乗せたのかな」

「それは……」

「それとも、忙しいあのひとの身代わりだから、僕をやっぱり選んだのか」

「――、」


 彼女が口を開こうとしたところへ、教員が駆け寄ってきた。


「天充くん、いったい何日休む気かとおもったぞ!

 出席足りなくなったって、補習なんぞ組んでやらないんだからな!」

「あぁ、先生。いま激しく邪魔です」

「泉客さんを口説くとは、ほんとに畏れ知らずだな」

「そういうんじゃないですって……」


 本当におり悪く、話の邪魔が入ってきた。

 あとで、聞き直せるんだろうか?

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