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マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-  作者: 琉璃宿命
4.共鳴者殺し

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第17話 テラス

 海を支配したあの力は――覚醒した人形の異能、なんだろうか。

 使っていくうちにわかるかもしれないが、あれを使い続けることには、小なりの抵抗がある。

 そも、鮫人、八号機に僕は乗り続けていていいのか。


 ――ネーレイスと同じ、バケモノだ。


 そう言った、翼の言葉。

 ……傍から見れば、そういうものかもな。


「おそらく一人は、朝桐くんなんだろう。

 隠そうとするでもない」


 共鳴者殺エコーズキラーし。

 彼が真っ先に僕のところへやってきたのは、美岬の状況を案じたというのもあろうが、鮫人で不測の事態を起こしうる存在だと、僕をみなしたからだろう。


「なにが?」「琉稀さん」


 地元の喫茶店でテラスにいたら、向こうが僕を見つけたらしい。

 共鳴者殺しの話を、同じ共鳴者の聞かれるのもいい気はしないな。

 可愛い人じゃ、あるんけど。


「僕の歓迎会がどう、と聞いたんですよ」

「はぁ、そういえば。

 すると美岬嬢が仕掛け人だな。

 私も枸櫞くんのお祝いしないとだね」

「えっと――」


 隠し事をしてしまった。


「学園生だけでやるのはいいかもだけど、おねえさんだってお祝いなら混ざりたいなぁ、なんて。ダメかな?」

「いや、祝っていただけるなら、その、誰にだって……先輩がやってくれるなら、よりうれしいというか」

「今度、わたしの同期も誘うよ。

 社務所のほうなら、浅葱たちも喜んで貸してくれるとおもうから」

「――、いえ、やっぱり気持ちだけ受け取っておきます」

「どうして?」

「琉稀さん、伏馬先輩まで誘ってきそうですから」

「え……翼くんとなにか、ございました?」


 苦手なくせに、案の定誘う気でいたんだな。

 優しすぎるというか、無神経というか。そのくせ、突き放したいときは僕をどこまでも突き放す。……ほんのたまにでいいから、僕がほんとうは何を求めているか、ちったぁ慮っちゃくださらないか。

 腹部に残った噛み傷は止血こそできているものの、動くたびにまだ疼いている。

 おかげで、死にかかったようなものだ。


「美岬嬢に訊いてください。

 僕は客観的じゃないようですから」

「そう、なんだ。

 彼、まじめで融通はきかないかもだけど」

「……琉稀さんが尊敬する人を、悪い人だなんて思いませんよ」


 今度こそは、嘘をついた。

 悪い人だと思わない?


(あいつは、シトラを泣かせた)


 僕はシトラを泣かせたあの男を、赦せないんだろう。

 シトラを泣かせた――ネーレイスを泣かせることが、いいか悪いかじゃない。僕だって、シトラを姉さんの紛い物だと蔑んで、もしかしたらあの子をもっと酷い目に遭わせるかもしれないのに?

 ダメだ。頭が翳んで、眠たくなってくる。


「枸櫞くん、大丈夫、顔が白いけど」

「今日ははやめに帰って寝ることにします。

 この前の戦闘で、ケガしちゃって」

「大変じゃん。お大事に」

「えぇ、ありがとうございました」


 まぁ勝手に焦がれて、勝手に幻滅している僕のが、正直どうかしているんだろうけど。


*


 あとで電話口の美岬に怒られた。


『面倒なことを押し付けてくれたね。

 白錫先輩が、あのひとを好きだって知ってるくせに』

「うん。だけど僕からはあまりにも忍びなかった」

『ま、同情はするよ。

 にしても、枸櫞くんのタイプがああいうひとだとは。

 《《お姉さんを感じちゃった》》?』

「――」

『なんか、ごめん』


 今日の無神経女パート2か?

 勘弁してほしい。いや、琉稀さんへの弁明を押し付けた僕のせいじゃあろうけど。


「どうでもいい。

 琉稀さんと姉さんは違うし、シトラと姉さんだって違うんだ」

『?』

「違って然る。

 ただ……どうしちまったんだろうな、僕は。

 下手したら、軽蔑すらしていたかもしれないのに。

 シトラがあんな風に、泣かされて――それがどうしようもなく、腹立たしい。きっと一生、赦せない気がする。

 ネーレイスに肩入れするなんて、どうかしてるんじゃないのか」

『そう、なのかな。

 私はそれは、人として当たり前に抱いていいものだと思う、けど』

「……やさしいんだな、美岬さんは。

 それで、あの子はどうしている?」

『いま、きみの部屋の前に連れてきてるけど』

「マ?」


 どうやらマジだ。


『急すぎたかな。話したいことがあって』

「そう。今開けるよ」


 そしてどうも、電話口で済まない内容らしかった。

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