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マァメイドォル・チェインドライヴ -姫肴喰らいの首輪使い-【7/31 本編完結】  作者: 琉璃宿命
20.

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第100話 勤勉?

 気づけば、那戯が目の前にいる。


「お前――」


 よりにも、こいつ本人と交信してしまったと?

 那戯も嘆息している。


「何をしたいんだ、君らは」

「お前が踏み躙ったものを、返してもらう」

「ふん……手遅れだと思うけど?

 主に四号機は」

「なにを知っている!

 すでにスクラップだったものを、ネーレイスに括りつけて!」


 那戯は冷めた目で枸櫞を視るが、正直お互い様だ。

 この会話は結局、平行線にしか至れない。


「どうしてこんなことに、琉稀さんを!」

「それが本音か、流石に抱いた女には拘るよね。

 きみへの《《人質》》の意味合いもあった、現に神社姫シュラインノーブルを取り戻したきみは、こうして反抗しているわけだし。

 抵抗されるのを防げずとも、せいぜいきみのやり甲斐を削げるかなと。

 白錫琉稀は、四号機と我々の想像する以上に深く結びつきつつある。

 こっちの時間軸では、覚醒すらできずじまいだったが、影響を利用することはできなくもない。そう、きみが諦めなければ、そこで白錫琉稀が復活する望みも絶たれるはず、だったさ。

 四号機の残骸を利用したのは認めるが、この暴走はなんと言うかね、興味深い」

「お前の意図したものでないと?」


 存在が霞のようなものらしく、この場所での攻撃は意味をなさない。


「そりゃね。美岬には四号機を介して仮死状態の水子を動かすよう調整を施しただけだ、そこに白錫琉稀の残留したなにがしの思念が逆流するようには造っていない。切っ掛けは、壱号機の奪還とメロウ級の出現が重なったことだろう」

「――」

「まぁ、美岬の役割はここまでだったということだ。

 ボクはすでに儀式を始めている、君たちには止められない」


 その是非について、今更言っても仕方ない。


「そうまでして、セドナへこだわったのは何故なんだ」

「難しい話じゃあるまい。ボクとセドナの目的が、同じ方向を向いていた」

「?」

「最高位のネーレイスともなると、流石に力だけでなく、その意思と指向性を無視することはできない。

 北の果てで用意した祭壇と、白夜に包まれて――この世界は、一度完結する。人の世を呑み込んで」

「なにが白夜だ……くだらない」


 枸櫞が吐き捨てると、那戯の眉がぴくりと揺れる。


「お互い、価値の重きを置くところが違うらしい。

 残念だ、きみのことは嫌いじゃないんだが」

「いい迷惑してるよ、こちとら」


 その点、那戯もこちらの態度に呆れていたらしい。


「結局きみは来るんだろう?

 すべてが終わった後、白號びゃくごうで終わらせてあげよう」

「果たして、思い通りに行くものかな。

 お前はてっきり、セドナを道具として扱うものだとばかり」

「セドナの伝承は、知っているか」

「――、父親に海へ捨てられ、指を斬られる」

「そうだ。

 斬られた指から動物が生まれたという逸話が、そのままテルクの幻界へ反映されたのだろう、実際に彼女は多くのネーレイスの祖となった。

 そしてそんな彼女が求めたのは、父親への復讐だ」

「!」

「この地の果てへたどり着いたとき、ボクが最初に観たものは深く蒼い、水底の森だった。そこから切り出した枝と粘土で捏ねたら、美岬になった。

 肝心のセドナ本体ではなかったけれど、その森はセドナのからまった髪の一部であり、人の罪と穢れの形容でもある。

 彼女がああも利己的で身勝手に育つのは、必然だったさ。

 ところで白錫琉稀は、アーウィズォウトに心臓を喰われたんだろう?

 概念上で言えば、死に限りなく近い場所を行き来している。

 水子の死骸と組ませちゃったことで、面白いものを引き出してくれるかもしれないね。我々にとっての未知――」

「そのために、美岬の自我がどうなってもいいってのか」

「ボクはあれを、そのように造ったんだし。

 そもきみがなにを問題としているのか、わからないが」


 ずっと、この調子の会話が続くのは、枸櫞からすれば、流石にうんざりだった。


「そうだな。

 あんたほど、殴って張り合いのないやつもそうそういないよ、魔性。

 ……ひとつ言っておいてやる」

『?』

「お前は美岬という人間を自らの手で生み出したことを、もっと誇らしくすべきなんだ。

 あの子を手塩にかけて、愛して育てていれば、お前はきっと、世界や人を滅ぼす間でもなく、満たされていただろうに――」

『だとしても、届きうるところへ手を伸ばす。それこそがボクにとっての勤勉だ』

「勤勉、な……。

 なおのこと、残念でならないよ。

 お前を変えるだけの言葉を、俺はもう持っていないんだから」




 那戯が消えて、枸櫞は空間にひとり取り残されていた。


「機体《朱桃》の再構築に、時間がかかり過ぎてる。

 メロウ級が出張ってこなければ、話はまだ別だったが……こんなんで那戯を止められるのか?」


 シトラと檸檬も眠っているようで、この空間に出てくる様子はない。

 枸櫞はうずくまった。


 ――マダ、アナタノミチ、ノコッテイル


「……誰?」


 ふいに、知らない声が聞こえてきた。

 100話到達、ありがとうございました。

 ぶっちゃけ当初はこの辺でweb版完結させるつもりだった(※やってるうち、どうしてもキャラクター描写の加筆や事後の補完が追いつかなくなるので)んですけど、地味にグダグダ続いております。もう少しで、ほんと終わらせるので、頑張らせていただきたいです……。

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