EP.6 狂剣姫リサ
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「リンカちゃんちょっとお時間貰えるかしら?」
チヨが役場の受付カウンターで書類に目を通しており、チヨが受付嬢のリンカに話しかけるとリンカは顔を上げた。
「あらチヨちゃんじゃない!依頼していた加熱結晶の納品かしら?」
「それなら出来ているわ…よいしょっと、数も品質も問題は無いと思うけれど検品はしっかりとお願いね」
チヨとリンカは出会った日から随分と打ち解けており、お互いちゃん付けで呼び合っていた。
「あら?後ろの子はチヨちゃんのお友達かしら?」
チヨの後ろに立っていたリサに気が付いたリンカにそう問われた。傍から見ればリサはチヨよりも年上に見える外見なので当然そう見えるだろう。
「ええと…紹介するわね、この子は孫のリサちゃん。今日から私の家に住む事になったから手続きをお願い出来るかしら?」
「あらそうだったの、それなら…ってお孫さん!?」
リンカは意外にもスルーするかと思いきや違和感に気付いて驚きの声を上げる。
「ちょっとおばあちゃん!?本当の事言っちゃうの!?てっきり誤魔化すかと思ってたのに…」
「おばあちゃん!?」
二人してしっかりとお互いの関係を明かしてしまい誤魔化しようも無くなってしまった。
「えーっと…色々と複雑な事情がありまして…今日からおばあちゃんの家に住む事になりましたリサです。あ、後活動拠点もラマスからこちらに変更するつもりなのでその手続きもお願いします」
「ラマスから…って貴女はもしかして狂剣姫リサ!?」
「ヴッ…」
リンカの口から謎のワード『狂剣姫リサ』と言う単語が出たと思うとリサは低いうめき声を出して顔を伏せてしまった。
「あら?リンカちゃん、リサちゃんの事知っていたの?でもその狂剣姫って何かしら…?」
「知ってるに決まってるわよ!今ラマスに拠点を構えていて『バーサーカー』のリンクスキルを持っている金髪の女冒険者の事を通称『狂剣姫リサ』と呼んでいてその鬼神が如き活躍っぷりはギルドでも話題になっているのよ!」
『バーサーカー』とは『格闘』と『剣士』を極めると習得できるリンクスキルでリサは過去、チヨとプレイしていた時に唯一極めていたスキルだったのだが、チヨと同じようにそれらを引き継いだ状態でこちらの世界に来ていたようだ。
「アルタ村まで離れていたら誰もその事を知らないと思っていたのに…」
「ラマスの街は周辺にあるダンジョンの旨味がそこまで無いので冒険者は集まりにくいのですが、地上での依頼は難しい物が多くて未達成の依頼が溜まりがちなんです。そんな依頼をどこからともなく現れて解決し、その戦いぶりから狂剣姫と呼ばれているリサさんなんです!」
『バーサーカー』はとにかく戦闘が派手で攻撃特化のリンクスキルなので総じて戦闘力が低いこの世界で目立つのは無理も無い。
「リサちゃん、ここに来るまでに随分大暴れしてきたみたいねぇ」
「僕にはこのスキルしか取り柄が無いんだから仕方ないじゃん…おばあちゃんだって知ってるのにいじわるだ…」
悪戯っぽく茶化すチヨにリサはむくれ顔でそっぽを向く。
「それにしても噂の狂剣姫がチヨちゃんのお孫さんなんて驚きだけど、まぁこんなご時世だし色々とあるわよね」
リンカは話しながらもテキパキと書類をかき集めてテーブルの上でトントンとまとめる。
「リサさんの活動拠点の変更と居住地の手続きはこちらでやっておきますね。でもリサさんほどの冒険者向けの依頼はこの村では滅多に発生しないですよ?」
「それなら大丈夫です!ラマスを離れる時に残っていた他の冒険者が難しそうな依頼は全部終わらせてますし、ラマスのギルドマスターには必死に引き止められましたけど、走っていけば行けない距離でも無いのでどうしても僕に頼みたい依頼がある時はアルタ村の役場伝いで知らせてもらう事になっていますから」
「この距離を走ってですか、ははは…流石ですね…。よし、はいチヨちゃん、これが加熱結晶の報酬ね。頼まれていた食材は裏手にあるから帰りに持って行ってね、チヨちゃんの新作のお菓子期待してるわね!」
チヨとリサは要件を済ませリンカに別れを告げてから役場の裏手に向かい、そこに置かれていた荷車にかけられていた布をチヨが捲ると、そこには様々な食材や調味料と思われる物が積まれていた。
「こんなに沢山の食材どうするのおばあちゃん?」
「お店に出す新しいメニューを作る為に色々と試しているのよ。錬金術を使えば簡単だけれど、ある程度は自分でお料理しないとねぇ」
荷車の食材は見慣れた物もあれば、味の予想もつかない様な物まで様々だ。
「そういえば、まだお昼を食べて無かったわよね?何か食べたい物はあるかしら?」
「それなら久しぶりにおばあちゃんの煮物が食べたい!」
「渋い子だねぇ…調味料は錬金術で再現出来ているから煮物なら作れるかしら?帰りにお肉屋さんで鶏肉を買っていきましょうか」
チヨは荷車の食材をストレージに収納するとリサの手を繋いで帰路に就いたのだった。
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