03
「まずは王太子よね!」
そうと決まれば!
まずは一番上を狙わねばとキャスリーンは考えた。
自分と主人公は同じところも幾つかある。
まず男爵令嬢というところ。
そしてキャスリーンも主人公に負けないくらい可愛らしい。ここ大事。可愛い、大事!
髪はぎりぎり光にあたると金色ぽい茶色だけど、瞳はカラコンを入れなくてもきれいな青色だ。確か主人公も青色だったはず。
色も許容範囲。鏡を割ったときにも瞳や顔立ちに関しては不満はなかったと思い出す。
これはいけるのではないかしら。
主人公はかつて幼い頃。貴族の仲間入りしたばかりの頃に。
王城で行われた園遊会で迷子になり、そこで王太子と出会った――が、ゲームのプロローグだ。いやOP前に流れる説明でもあったかしら。世界観の説明とともに。
それは記憶を取り戻す前、幼いキャスリーンも参加していた。
王太子殿下が八歳となったお披露目で、国中の貴族が呼ばれた催しで、王太子と同世代となる貴族の子供たちは将来の「王」となる彼の顔を覚えるために連れてこられたのだ。
未来の自分たちの頂点。それすら知らないようではいけない、と。
なのでキャスリーンも兄と姉と参加していた。二人は優しくて幼い自分を放っておくこともなく、よく面倒をみてくれていた。
主人公は兄に放っておかれて迷子になった――はず。
でも主人公が原作ルートを外れる気なら。
その思い出をもらっても構わないだろう。
出会いのきっかけは意外とそこかしこに。
この王太子は普段はどんな相手にも友好的であるとあり。王族として、国の誰をも大切にしているからだ。
それ故に博愛で――これと決めた相手だけは懐深く入れる。
そうして恋人になれたらものすごい溺愛をみせてくれるのだ。
博愛で誰にも等しくだから。そうしたところが攻略が難しい相手なのだが。
王太子には案外すんなりと逢えた。
食事が終わった昼休み、それとなくすれ違いざまに困ったふりをして話しかけた。
「あ、あの、すみません。今ちょっと迷子になってしまいまして……」
「あらら、大変。どちらまで行きたいの?」
「実は思い入れのあるリボンを学園内で無くしてしまいまして……」
「うんうん、それも大変だね」
なんてフレンドリー。
警護とか大丈夫かと逆に心配になってしまった。
三歩後ろの貴方たち大丈夫なの。
「先ほど先輩の方に事務に話しておいたら拾った人が届けてくれたときに連絡をもらえるから、と……」
「そうだね。確かに落としものは事務に届けてもらえるて学園案内にもあるね」
いきなり話しかけたのに王太子はキャスリーンの制服のリボンが同じ一年だからかうなずいてくれた。ちなみに無くしたのは髪を結ぶリボンで。ひっそり自分で校舎裏の木に引っかけた。なんと風に飛ばされそんなところに、だ。
「それで、その事務がどちらにあるのか、その忘れて……迷ってしまいました……」
なんて駄目な子な私。
でも話しかけたならばもう引き返せない。
事務は実はわかりやすく職員室の横にあったりするのだけど。訪問客などに対応もしやすくあるために。
けれども学園に来たばかりの生徒には職員室ばかりが目にはいる――なんて無理な話で通すことになっていた。
キャスリーンも「ふつう事務室なんてわかるでしょ」と内心で突っ込んでいるのだけど。
王太子はあっさりと「それなら」と後ろにいた騎士の一人に「案内してあげて」と。
これもシナリオのうちだ。
主人公が落としものをして、王太子にこうして「見つからなかったら事務に届けられているかもしれない」と、教えてもらえるのだ。
さすがに王太子が自ら迷子を道案内はしない。まだ、この時点では主人公もこの程度の関係――まだ!
――ここからだ!
「あ、ありがとうございます! あの、もしかしたら昔もこうして道を教えていただいたことが……あの、園遊会で」
これが目的!
イベント改変、自分が主人公になるために!
本当は迷子になっていない。兄たちはそんな無責任じゃなくて、末の妹を一人にはしなかったし。
でも、自分の幸せのためにあとで口裏を合わせてもらう。王太子妃なんてすごいことになれたら、きっと兄姉たちも喜んでくれるだろうから――!
「……あ!」
王太子も何か思い出したと。
そうそう、主人公は迷子になったのをたまたま王太子に――。
「あの時トイレ探して迷子になっていた!? 間に合った?」
「違います。人違いでした」
思わず、否定した。
主人公、あんた何したのさ!?
――王太子ルートは難しい、かもしれない。
主人公何してるんだてツッコミと、他人さまのおふんどしをとっちゃいけませんねっていうまっとうなツッコミがVS。
お時間ありましたら。良かったらこちらも読んでやってくださいまし。
「こりゃあきまへんわ。現実みよ」
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