#5 矯正塔
ジンは止まらなかった。
教師に注意されても、親に呼び出されても、
一時的に大人しくなるだけ。
すぐに元通り。
むしろ苛立ちは強くなった。
「全部あいつのせいだ」
矛先はカズトに向いた。
だがカズトは何もしない。
ただ、記録する。
事件
ある夜。
ジンは街の中央市場で問題を起こした。
魔力増幅の違法改造杖を使い、
見せびらかすつもりで放った魔法。
威力は制御不能。
屋台が吹き飛び、
一人が軽傷を負った。
その瞬間、空が鈍く鳴る。
黒い外套をまとった三人が現れた。
王都直轄、未成年魔力犯罪対策機関。
通称――
《矯正塔》
魔力の乱用者、
暴力傾向の強い未成年を収容し、
徹底的に再教育する場所。
刑務所に近い。
だが名目は“矯正”。
抵抗するジンの両腕に、封魔具が嵌められた。
「な、なんで俺が!?」
黒衣の一人が淡々と言う。
「累積記録。魔力暴発。暴行歴。複数証言。
基準値超過。」
基準値。
この世界には見えない“監視”がある。
魔力の使用履歴、
問題行動の報告、
通報の蓄積。
一定ラインを超えると――
回収される。
ジンは連れて行かれた。
取り巻きは青ざめる。
翌日、学校中に噂が広がった。
「矯正塔送り」
それは、この世界の若者にとって
最大級のレッテルだった。
カズトの反応
カズトは静かに手帳を開く。
【ジン、収容。
立ち位置は外部要因で崩壊。】
胸は静かだった。
勝った感覚はない。
ただ理解する。
この世界は、
思ったより冷静だ。
“神の制限”は、魔法だけじゃない。
社会にもある。
そして違和感
その夜。
裂け目が再び開く。
向こうの少年が言う。
「こっちのニュースでさ……
そっちの世界の“魔力異常値急増”って出てる。」
カズトの背筋が冷える。
矯正塔送りの基準値。
それは本当に“人間の判断”か?
それとも――
神が設けた、
世界維持のための自動排除機構?
もしそうなら。
自分の研究も、
限界を超えた瞬間――
回収されるのか?
カズトは遠くを見る。
遠近両用の視界は、
遠くも近くも見える。
だが“未来”はまだぼやけている。
矯正塔。
それは罰か。
それとも――
別の何かの入口か。




