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チャームワールド  作者: 恋塚隆之


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12/16

#12 初の戦闘

旅立ちまで、あと数週間。


工房はいつも通りだった。


研磨機の音。

魔力を流す振動。

クリスタルの淡い光。


カズトは作業台で結晶を磨いていた。


手元に魔力を流す。


微細な傷を消す。


職人の親父――工房長が言う。


「手つき良くなったな」


カズトは少し笑う。


「毎日やってますから」


親父は鼻で笑う。


「そりゃそうだ」


その時。


棚の奥の箱が震えた。


カズトが顔を上げる。


「……今の」


親父が振り向く。


箱の中。


そこには新しい試作品があった。


魔力増幅結晶。


まだ調整中の魔石。


突然。


結晶が強く光る。


オラクルが警告する。


「異常魔力反応」


「周囲の魔力濃度上昇」


親父が顔をしかめる。


「まずい」


次の瞬間。


工房の外から声がした。


ガラスが割れる音。


金属が倒れる音。


そして――


唸り声。


カズトの背筋が冷える。


扉の隙間から影が見えた。


毛むくじゃらの体。


赤い目。


牙。


親父が低く言う。


「魔物だ」


オラクルが分析する。


「魔力増幅結晶が魔物を誘引しています」


つまり。


この試作品。


魔物を引き寄せる。


親父は棚を開ける。


一本の剣を取り出す。


鞘付きの鉄剣。


それをカズトに投げた。


カズトは反射的に受け取る。


「……え?」


親父が言う。


低い声で。


だが迷いはない。


「お前の肩幅見りゃ分かってた」


カズトは固まる。


親父は続ける。


「ただの職人の体じゃねえ」


外からガラスが砕ける。


魔物の爪。


扉が軋む。


親父が言う。


「逃げる時間はない」


そして短く言った。


「戦え」



扉が破られる。


魔物が三匹。


狼型。


赤い目。


魔力の匂いに興奮している。


カズトは剣を握る。


手が震える。


本物の剣。


本物の魔物。


木刀じゃない。


練習じゃない。


オラクルが言う。


「心拍数上昇」


「戦闘補助開始」


カズトは息を吸う。


時計を見る。


秒針。


カチ。


カチ。


そして。


言う。


「コンセントレーションワン」


一分


魔力が爆発する。


体が軽い。


世界が遅くなる。


魔物が飛びかかる。


カズトは横に動く。


剣を振る。


鋭い音。


一匹の肩を切る。


魔物が転がる。


残り二匹。


同時に飛び込む。


カズトは後ろに跳ぶ。


剣を構える。


「30秒」


オラクルが言う。


カズトは踏み込む。


一匹の牙を避ける。


腹を斬る。


血が飛ぶ。


残り一匹。


魔物が吠える。


突進。


カズトは剣を振る。


真っ直ぐ。


強く。


魔物が倒れる。


「終了」


魔力が切れる。


体が重くなる。


カズトは息を吐く。


膝が少し震える。


だが。


立っている。


静けさ


工房の前。


魔物が三匹倒れている。


親父が口笛を吹く。


「……初戦にしちゃ上出来だ」


カズトは剣を見る。


血がついている。


本当に戦った。


オラクルが言う。


「戦闘記録保存」


カズトはゆっくり息を吐く。


そして小さく笑った。


「……俺、戦えるんだな」


親父が言う。


「最初から言ってる」


そして。


カズトの肩を軽く叩く。


「旅に出るんだろ?」


カズトは驚く。


「……なんで」


親父は笑う。


「手帳見りゃ分かる」


カズトは固まる。


親父は工房の奥に戻る。


振り返らずに言う。


「その剣、持ってけ」


カズトは剣を見る。


「え?」


親父が言う。


「給料の前借りだ」


少し間を置く。


「旅の初装備だ」


カズトは剣を握る。


重い。


でも。


心が熱くなる。


夕日が沈む。


カズトは空を見上げる。


旅まで。


あと少し。


そして今。


初めて分かった。


自分は――


戦える。

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