#10 秒針
旅立ちまで、残り二ヶ月。
カズトは市場を歩いていた。
武器屋ではない。
魔道具屋でもない。
小さな雑貨屋。
棚の端に並ぶ金属の輪。
時計。
この世界でも時間を測る道具はある。
だが高価な魔法時計が主流だ。
その中で、ひとつだけ安い物があった。
シンプルな丸い時計。
革ベルト。
そして――
秒針。
カチ、カチ、カチ。
一定のリズムで動いている。
カズトはそれをじっと見つめた。
三分。
180秒。
自分の限界。
その時間が、頭の中に浮かぶ。
「……これください」
秒針の音
家に帰る。
机の上。
カズトは時計を置く。
秒針が進む。
カチ。
カチ。
カチ。
オラクルが言う。
「時間計測装置」
「戦術補助に有用です」
カズトは時計を腕にはめた。
そして目を閉じる。
実験
夜の空き地。
カズトは木刀を握る。
深く呼吸する。
オラクルの声。
「魔力圧縮開始」
カズトは言う。
「今日は違う」
オラクルが反応する。
「?」
カズトは時計を見る。
秒針。
一周が60秒。
そして。
静かに言う。
「コンセントレーションワン」
魔力を解放。
体が軽くなる。
強化状態。
だが――
一分で止める。
オラクルが言う。
「60秒経過」
カズトは魔力を切る。
身体が元に戻る。
呼吸は荒いが、まだ動ける。
「……いける」
分割
カズトは考える。
三分は強い。
だが長い。
そして危険。
体に負担が大きい。
なら。
分ければいい。
三分を。
三発に。
カズトは手帳を開く。
書く。
コンセントレーションタイム
最大 180秒
新戦術
・コンセントレーションワン
60秒強化
使用回数
最大3回
カズトは呟く。
「三回の切り札」
オラクルが分析する。
「利点」
・体力消耗軽減
・戦術選択増加
・緊急回避可能
「欠点」
・最大出力時間短縮
カズトは笑う。
「いいんだよ」
木刀を肩に担ぐ。
「俺は長期戦向きじゃない」
弱い魔力。
弱い体。
なら。
短い爆発を作ればいい。




