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最弱もんすたあ・ケムシーノっ!  作者: 大石次郎


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VSチワワ その12

 柱時計の上から、俺はなるべく軽薄に聞こえるように注意して話し始めた。

「よぉ、ポン助。お前とは長い付き合いの友達のような気分だぜ」

 様子を伺っていたポン助は大したことは話さないと判断したのか、動き出す素振りを見せた。ここだ!

「ところで」

 俺が声のトーンを落として続けると、ヤツはピクッと動きを止めた。そうだ、それでいい。お前は何も考えずにさっさとぶちのめすのが最良の策とまだ気付いてない。

「知ってたか? 『検索』するだけじゃわからないだろう? ここはバッドピクシーの処刑部屋なんだぜ?」

 ヤツはこちらを見ている。意味の無い問い掛けに困惑したようでもある。

「どうした? お前話せるんだろ? ここではたくさんの人間達が文字通り処刑された。お前も」

「チッ」

 ヤツは舌打ちして俺を見るのを止め、柱時計に飛び掛かり易いポイントを探ってトラップだらけの床の安全な位置の上を軽いフットワークで跳ね回り始めた。ヤツは一時、無駄な会話に付き合った自分に舌打ちしたんだろう。だが確かに舌打ちした。4つの呪言トラップの発動キーの一つ目は処刑部屋内でここが処刑部屋であると告げられ、それに対して理解し『言語』を持って応答すること。舌打ちも『言語』の範囲とカウントされる。この部屋は基本、クソ仕様だからな! 後は24時間以内に、この部屋の中で残り3つのキーを踏ませればトラップは発動する。誤作動防止とバッドピクシー達の『言葉遊び趣味』のせいでめんどくせぇ発動ルールだ。勿論俺には24時間も時間は無い。

 俺は片方の触手を吊り下がったフックの一つに掛け柱時計の上から跳び上がり、同時に空になったアルコールの瓶を床のトラップ発動ポイントに投げ付けて割り、斧のトラップを出現させてヤツを襲わせた。ヤツは軽くかわしたが、かわしている間に俺の柱時計からの離脱を見送る形になった。光り玉が炸裂してから50数秒は経った。いける!

「バッドピクシーのヤバさをお前は知らないんだ。ヤツらは基本イカれてる」

 俺はまた簑虫のようにぶら下がりながら例のジト目で見上げるヤツに話し掛け続けた。

「バッドピクシーは動きが素早く魔法を使い、小せぇくせに物理でも結構強い。そのバッドピクシー達が作ったこの処刑部屋にお前はいる」

 ヤツはまた床を跳ね回るように動き出した。俺も合わせて別のフックに移動しながら体を預けない手近なトラップ発動フックを触手で引いて床に出現した射出口から頭上に無数の針が撃ち出されるトラップを発動させた。ヤツは移動は一瞬妨げられ、益々苛立った顔をした。当てにいくなら発動させられる位置に他にいくつか適当なトラップはあったが、派手に撃ち上げるこのトラップの方がより『ムカつく』だろ?

「バッドピクシーのトラップのヤバさ、わかったろ? 何しろバッドピクシーは」

「クダラナイ虫ドモッ」

 ヤツは信じられない程カン高い声で確かに、初めて! ボソりと喋った。呪言発動キーの二つ目、『バッドピクシー族を侮辱ないし、否定する』をヤツは踏んだ。横目でチラッと見ると、『口』の絵がモゾモゾ蠢き始めていた。あんまり騒ぐなよ? バレるぜっ!

 俺は一旦会話を止め、程々にトラップ発動フックを引きながら、フックからフックへ移動を始めた。発動させたトラップを簡単に捌きながらヤツは追ってくる。意味無く移動を始めた訳じゃない。ヤツが案外『口』の絵に近い所にいたのと、時間をもう少し稼ぎたかった。逃げ回り続け、横目で柱時計を見る。光り玉が炸裂してちょうど1分と30秒経った。最初の『時間』の問題、クリア! と、内心安堵しているとその隙を突いてポン助野郎は結構な距離から飛び掛かってきた!

「ガルっラァアッ!!」

 身をよじったが脇腹を浅く爪で裂かれた。慌てて別のフックに跳び移りながらヤツの着地点を狙ってトラップフックを引いて襲わせ、ヤツの追い打ちだけはなんとか阻止した。危ねぇ、あの距離で当ててくるのかよっ?!

「短気なヤツだなぁ」

 本当は心臓がバクバクしていたが俺はなるべく呑気そうに再び話し掛け始めた。

「婆ちゃんが言ってたぞ? 短気は損気って」

 ヤツは構わず、床を跳ね回りながら間合いを計り出す。俺もトラップを発動させながらフックからフックへ移動する。大丈夫だ、落ち着け、俺。ヤツはもう『無言を通す』スタンスを崩している。いけるはずだ!

「例えばコーンスープだよ? 勿論ローリエを使ったヤツな。お前、どう思う? ただ煮て火が通ったら食えると、そんな風に」

 言い終わらない内にヤツはまた遠距離から俺に飛び掛かってきた。今度は問題無く身をよじってかわし、別のフックに移動してやった。わかっていればどってことない。ついでにトラップフックを素早く二つ引いて、ヤツの着地点目掛け、二つのトラップ発動させてやった。ヤツは一つは体を独楽のように回して回避したが、もう一つの三又の鞭のトラップはかわしきれず左の頬を浅く切られた。おっ、初めて当たった。ヤツは床の安全ポイントに移動すると、キッとフックにいる俺を睨んできた。後一押し。

「婆ちゃん曰く、コーンは3回煮直して初めて本当になるんだとさ。そしたらコーンがトロッとしてさぁ、そいつをカリッと焼いたパンと一緒に食べるんだよ。付け合わせのサラダは」

「黙レッ!!」

 ヤツは怒気を込めて叫んだ。発動キー3つ目、『相手に沈黙を求める言葉を口にする』をヤツは踏んだ。よしっ! もう一つで発動する。だが、先に呪言トラップを発動させると、『その後』のヤツの行動で他のトラップが殆どダメにされる。『順番』を守らないとな。

「気が変わった」

 俺は呟いてフックから床の安全ポイントに降りた。会話の成立の可否を別にすれば、俺達のアイディアの中で、この件の難度が一番高い。

「ポン助、直接やってやるよ、検索だかなんだか知らねぇが、わかっててもかわしきれないってのは、今、学習できたよなぁ?」

 俺は少し伸ばした触手の片方で、これ見よがしに床をパシンっと叩いてやった。

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