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最弱もんすたあ・ケムシーノっ!  作者: 大石次郎


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VSチワワ その11

 呪言トラップは問題無し。あとは実戦で4段階の『言葉』のやり取りを成立させるだけ。まだ一度もヤツと会話は成立してないけどな!

「ヤバい準備、ホントに終わっちまう」

 俺は呟いて風呂敷に触手を入れ、借りたケムリンが根性で口でくわえて1本だけ屋上から逃げる時に回収していたダーツが確かに入っているのを確認。さらに臭い玉と交換した強化光り玉のピンをカチっと一段階だけ外す。俺は『口』の絵のボタンを操作し、5ヶ所ある火災事緊急脱出用の出入り口が全て自動で開くよう設定を改めた。そして、一度気持ちを落ち着けてからもう一段操作した。ガチリ、重い音がして、玄関脇にある小さな隠し扉の鍵が開いた。後は待つだけだ。たぶん、ヤツはもう来て外か屋根の上で様子を伺っている。あるいは近くで仮眠を取って体力と魔力を回復させている。

 処刑部屋の柱時計を見る。ケム彦と別れてから30分程度経った。ロールの効果は後、3時間半。ヤツが仮眠を取っている場合、3時間以上眠られると相当キツい。眠ることに関しても、ヤツが性急であることを俺は祈った。

「時間は大事に使えよ、犬っころ」

 俺は言って、じっとその場で待ち始めた。10分、20分、40分! 何も起こらない。素直にケムリンと二人で下水の隠し通路に直行していればよかったんじゃないか? そもそもこのやり方で合ってるのか? 俺はこんな所で何をやってるんだ? なんのつもりでムキになっている? なんの得にもならない、なんであんな犬に絡まれなきゃならねぇ? 腹立つっ! クソッ! 俺は段々プレッシャーと『時間』に押し潰されそうになる。眠い、もうひたすら眠くなってきた。

「いい加減にしろよ」

 俺は力無く言い、消耗しながら待ち始めておよそ1時間と10分が経った。頭の中で婆ちゃんにこれまでしでかしてきた悪さを並べて懺悔していると、ズンッ! 処刑屋敷全体に重い振動が響いた。いくつか作動基準の甘いトラップが反応してガチャガチャと発動して空打ちし、そのまま収納口に収まる。屋上の時と同じドゥーモだ。やはり、おそらく屋根の上にいた。仮眠も取って魔力も全開だな、上等だぜ! 俺は構え、横目でチラリといくつかあるナイフ棚を確認する。移動しながら使うのは難度が高いからできれば使いたくない等と思う。

 と、もう一度、今度はさっきより軽く床を伝うように振動が響いた。トラップの空打ちも殆んど起こらない。隠し扉前にいるな。突入前の確認、何度かハメられて慎重になってやがる。どう来る? どう入ってくる? 普通に考えたら中に入ったら事前に『検索』した通り床のトラップを避けて跳び跳ねながら、俺が触手で発動させる手近なトラップを想定しつつジグザグに間合いを詰めてくるのがセオリーだろう。だが、賭けてもいい。ヤツは、ポン助チワワ野郎はそうしない。例えば、

「ガルゥッゴルゥラァアアアッ!!!」

 ヤツは隠し扉をぶち破って中に突っ込み、全ての床トラップを無視し、臭気ガスにも怯まず『直線』で俺まで突進してきた。来た来た来た来た来たぁッ!! 絶対そうくると思った! ヤツの速さに作動が間に合わない、あるいは『検索』で把握済みのトラップを軽くかわし、構造が脆いトラップは『噛み付き』または『肉球パンチ』でぶっ壊して爆進してくる。俺は冷静に風呂敷の中に触手を入れ、もう一段カチっと光り玉のピンを外し、片方の触手を絡めもう片方の触手を風呂敷から出して素早く吊り下がったフックの一つに伸ばす。

「ガルゥっシャアッ!」

 鎌のトラップを殴り壊しながらヤツは飛び掛かってきた。俺は光り玉を自分のいた場所に転がしてフックに掛けた触手を引いて飛び離れた。勿論アルコールの瓶の回収も忘れない。バシュッ! 炸裂し閃光を放つ光り玉。

「キャウンッ?! ジィーンっ」

 意外な火力に軽く吹っ飛ばされつつ、ヤツは目を閉じて通常出力で音波探知を行う。吹っ飛ばされた先で次々トラップが発動したが、ヤツは目を閉じたまま回避に専念し、耐える。

「さて、と」

 俺はケムシーノならぬ簑虫のようにフックにブラ下がりながら、時折ジィーンを唱え治しながらトラップ連鎖に必死で対応するヤツを尻目に柱時計を見た。光り玉が炸裂してから7秒しか経ってない。思ったより持ちそうにないな。俺は反動を付けて柱時計の上に飛び乗った。片方の触手にはアルコールの瓶をキープしているがもう片方の触手はこれで開いた。開いた触手で絵の裏のボタンを操作してヤツが破った隠し扉に格子を落とし、それから触手をナイフ棚に伸ばし、跳ね返されてヤブ蛇にならないようヤツの移動するポイントや、先読みでトラップを作動させる為だけにナイフを断続的に投げ付け始めた。

「ガルっ! ガルっ! ジィーンっ、ジィーンっ!」

 ヤツは回避し、移動し、探知探知。追い込み過ぎに気を付けてペース配分はしているが、ヤツを回避に専念させ、トラップ連鎖に一先ず縫い付けることには成功した。さっき時計を見てから10数秒経った。視力が回復してもいい頃だ、ここからが、肝だぜ! ヤツがあくまで会話に乗ってこない場合、本当にうんざりだが、部屋の仕掛けを設定し直してヤツとここで心中するしかない。冗談じゃねぇ、頼むぜポン助っ!

 回避しながら、ヤツは左目を開け始めた。ジィーンを唱えるのを止め、『見て』判断して回避し始めた。ついでに柱時計の上の俺をチラチラ見始める。相当据わった目だ。もう、ナイフは無意味か。俺は棚のナイフを投げるのを止め、代わりに瓶の蓋を開け、中身をまだ生きてる床下の発火装置と適当にバラしてはあるが、引火可能な床の上にしてられた発火装置のちょうど中間辺りにぶち撒けた。ヤツは片目でそれを確かに認め、床下に発火装置のあるポイントも一瞬確認した。

「ガルっ」

 ヤツは小さく面倒そうに声を出して覆い被さってきた頭の皮を剥くタイプの拷問トラップを殴り壊し、身を翻して把握済みのトラップの無い位置の床に降り立った。右の目もゆっくりと開け、時計の上の俺を静かに見てくる。よし、クールダウンしたな、いい子だ。

 光り玉炸裂から30秒程経った。ここから仕事が多いぜっ!!

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