05-20.我慢の限界
「全部見ていたんですね」
「うん。それもあるけどね。私もリリスの記憶を引き出せるようになってきたから」
引き出すっていうか、思い出すって言うべきか。これもう私の記憶なんだし。
「これで私は二股じゃなくなりましたね♪」
私とリリスが一人になったから?
「そっか。モニカはもうネメちゃんと別れたんだ」
「ひどい……」
「ちがっ!? 違いますよぉ!?」
あ~あ。な~かした~。
「そもそも付き合ってないじゃないですかぁ!!」
「……」
あかん。ネメちゃんがマジで傷付いてる。
「ネメちゃんも私の一部みたいなものだから」
「そ、それなら三人纏めて恋人ですね!」
よかった。流石のモニカも察してくれた。
「ふふ~♪」
ネメちゃんってチョロいよね。
「聞こえてるよ」
あ! しまった!
「意地悪エコーなんて捨てて我だけのものになりなよ」
「えへへ~♪」
「待てやこらぁ!!」
なんで満更でもなさそうなのさ!! モニカの浮気者!
「エコー様。今後のことを話し合うのだわ。痴話喧嘩はその後にするのだわ」
「今後のこと? 教会に仕返しするの? もう済んだんじゃなかった?」
アドラスティア聖王国の本国にはチクったじゃんさ。
「ネメちゃん様が限界なのだわ。もう一秒だってここには居たくないのだわ。けれどユースティリアとリブラだけを残しては行けないのだわ」
なるへそ。そりゃそうなるか。
「ネメちゃん、だから最近静かだったんだね」
静かにキレてたんだね。……やゔぁ~い。
「……」
あかん。この話題が出ただけで限界迎えそう。
「わかった。話そっか。てことでモニカ。ネメちゃんをよろしくね。責任重大だよ」
なにせこの都市ごとぺちゃんこになりかねないからね。
「任せてください!!」
気合十分だ♪ 信じてるぜ♪ 愛しの恋人様♪
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というわけで、私、ティア(リブラ)、シア、アッシュ、ベルタで別室に移動し、作戦会議を始めた。
議題は私たちの今後についてだ。ネメちゃんが我慢の限界を迎える前に旅立たねばならない。けれど今の教会都市を放って出ていくのは色々と問題がある。その問題を整理して片付けていきたいわけだ。
「おさらいなのだわ。この町は今、ダンジョンと化しているのだわ」
そのせいでゴーレムが出てきたのかと思っちゃったんよ。あれはもっと冷静に動くべきだった。そうさせない為の人質まで使われちゃったわけだけれども。
「ユースティリアとリブラはここを離れられないのだわ。人々の生活を維持するには、ネメちゃん様から力を授かった二人が、ダンジョンの維持に尽力しなければならないのだわ」
そうだね。公爵家に置いてもらえば心配ないかと思っていたけど、あの様子だとそうとも言い切れないよね。私が一人になった途端に襲ってきたくらいだもん。ネメちゃんが離れたと知れば、今度は公爵邸を襲撃するかもしれないよね。
しかも厄介なことに、敵はこっちの状況を殆ど把握しているんだよ。私の身体のことだとかさ。公爵家にスパイを忍び込ませていたみたいだね。その内の一人が元勇者パーティーの『斥候』だったわけだけれども。
もちろん今は遮音結界を張っている。この場の話が外に漏れることはあり得ない。メンバーの中に裏切り者がいる可能性だって無いと言い切れる。
「枢機卿が首謀者って話は聞いたけど、教会も相当アレだよね」
「むしろ枢機卿はマシなのだわ。彼は元々敬虔な女神の信徒だったのだわ。彼がおかしくなったのは魔王と女神の繋がりが露見してからなのだわ。彼は今尚教会に居座る有象無象とは違うのだわ。女神が教会を見限ったと正しく理解しているのだわ。だからこそ凶行に及んだのだわ。最初から相打ち覚悟で女神の勢力を削りに来たのだわ。でなければ人間はいずれ魔族に味方した女神に滅ぼされると信じていたのだわ」
……いったい誰の受け売りだろう。
「……とお父様が言っていたのだわ」
だと思った。シアもいっぱい頑張ってくれているのは知っているけど、教会内部のことって大して知らないもんね。元々ティアが公爵に頼んで遠ざけていたのもあるし。
「これから更に追い詰められるんだよね」
「アドラスティア王家が想定通りに動いてくれたのなら、間違いなく教会の連中は慌てだすのだわ」
そうなったら公爵家を襲撃しようだなんて考えるのもあり得ない未来とは言い切れまい。女神さえ手中に収めてしまえば、最悪聖王国が敵に回っても勝てちゃうんだし。
「たぶんアドラスティア王家は教会本部を取り潰したりはしないんだよね?」
「可能性は低いかと」
ふむ……。やっぱり影響が大きすぎるのか。
教会って、聖王国だけのものじゃないもんね。人類の勢力は皆、ネメシス聖教の影響化なわけだし。聖王国は、単に教会の本部が置かれているってだけなのだ。扱いとしては。
なんなら、いずれは世界中から突かれてしまうかも。教会の堕落は聖王国がちゃんと管理していなかったせいだって。
そう考えると、聖王国としては下手に教会本部を突つき回すわけにはいかないのだ。せいぜい事件の首謀者を断罪して女神様の怒りを鎮めようと動くくらいしか出来はすまい。
「いっそ聖王国の後ろ盾になっちゃうのはどう? その代わりにここの人たちをどっかに受け入れてもらってさ。王家に教会本部の役割を引き継いでもらうの」
町のダンジョン化を解けば私たちも自由に動けるしさ。後は魔王の件だけ片付ければ皆も安心して暮らせるっしょ。
「断られるに決まっているのだわ。今の在り方がアドラスティア王家にとっては最も都合が良いのだわ」
それもそうか~。
今度は自分たちが女神様のご機嫌を伺わないといけなくなるわけだし。
「あとは~……」




