05-19.一心同体
リリス~。リリスや~い。聞こえませんか~?
……ダメだ。相変わらず意思の疎通は図れない。
これはマズイ状況だ。リリスの心の中で日増しに不安が大きくなっている。私と話すことも出来ない現状に恐怖すら感じ始めている。
リリスは強い。それにネメちゃんを信頼している。だからこれまで私を失っただなんて考えずにいてくれた。
けれどそれも最初の内だけだった。段々と孤独が広がり始めていった。ネメちゃんやモニカだけでは埋められない妙な孤独感だ。これはもしかしたらフィリアス特有のものなのかもしれない。
リリスは相変わらず明るく振る舞ってみせているのに、心からそう思えているのに、どうしようもない孤独感が膨れ上がっていくのだ。
リリス。私はここだよ。わかってるでしょ。自分で私の魂を掻き集めてくれたんだから。もっと意識を向けて。私一人では届けられないから。お願いリリス。あなたのその不安を私は放っておけないの。だからこっちを向いて。私はここだよ。優しいリリス。私のリリス。愛してるよリリス。
……届け。届け。届け。
リリスが泣いてしまう前に。
どうか。お願い。
力を貸して。ネメちゃん。
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「エコー」
「え? エコーが何か? もしかして声でも聞こえたの?」
ネメちゃんたら急にどうしたのかしら。話したくなってしまったのかしら。正直気持ちはよくわかるわ。大丈夫だって頭ではわかっていてもね。こればかりはね。
「……リリス。エコーの身体になるつもりはない?」
「やるわ」
「意味わかってる?」
「迷う理由の方が理解できないわね」
「神獣……半神じゃないけどいっか」
「ありがとう。ネメちゃん。エコーのために妥協してくれるのね」
「諦めたわけじゃないよ。ルートを変えるだけ」
「それでも嬉しいわ」
「これからやるのは魂の融合だよ」
「ネメちゃんが持っている分を私にくれるのね」
「そう。そっちに完全に移す。それで魂を混ぜ合わせる。リリスの身体はエコーと共有してもらう」
「本望よ」
「なら早速やろっか」
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ヤバい。二人が何か始めちゃった。
妙なこと話してた。私とリリスの魂を完全に融合させて一つにするって。それでリリスの肉体を共有させるって。
そんなことして本当に大丈夫? なんで二人はたったあれだけの会話で納得出来ちゃうの? 決断早くない?
ティアたちも全員呼ばれたけど、誰も止めるつもりはないようだ。なんか覚悟を決めた顔で見守り始めちゃった。ティアたちが呼ばれたのは万が一にも邪魔が入らないようにするためっぽい。この作業にはネメちゃんですら高い集中力を必要とするようだ。
早速ベッドに寝かされたリリス。ネメちゃんはその隣に立ち、自身の胸から何かを引き出した。
あれ私の魂だ。元の身体に残っていたもう半分。
先ずはあれを使って、リリスの中に収まっている私の魂を全部纏め上げるんだそうだ。たぶんこの説明は私にしてくれているんだと思う。ネメちゃんが私に意識があるのわかってたんだね。ならもっと話しかけてほしかったぜい。
あ……吸い上げられて……。
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「エコー」
「……おはよ」
「調子はどう? エコーのまま? リリスに負けてない?」
「そうだリリス!!」
『大丈夫よ。心配は要らないわ』
良かったぁ~……。
『ふひひ♪ 嬉しいわ♪ エコー♪ いっぱい心配してくれていたのね♪』
「エコーは生意気だよ。心配される立場のくせに」
だって仕方ないじゃん。他に出来ることもなかったんだもん。
『修行も頑張っていたじゃない♪』
見られちゃったか。
『それは少し違うわね。あなたの過去は私のものとなったのよ♪』
それが『融合』なの?
「そういうこと」
「あれ? ネメちゃんも私の心が読めるの?」
「パスと受信機も弄っといた」
なるほど。抜け目ない。
「リリスはもう出てこれないの?」
「この身体は私のものでもあるのよ♪」
いつものやつだ。私の口……と認識している部分からリリスの言葉が出てきた。
「ありがとう、リリス。大切に使わせてもらうね」
『ええ♪』
リリスの喜びが心の中を駆け巡った。
なるほど。これが融合か。以前のものとは確かに違う。
隣り合ったリリスの心から影響を受けるんじゃなくて、私の心そのものが動いてるんだ。リリスが私の心まで動かした……では語弊がある。私とリリスは一つの心を共有しているんだもんね。思考の領域は違うみたいだけど。興味深い。
『ふふ♪ 早速気になっているわね♪ 私もよ♪ 色々試してみましょうね♪』
うん♪ 面白そうだね♪ やろうやろう♪
「エコー。リリスと盛り上がるのは後にして」
ネメちゃんが抱きついてきた。
私の身体はいつの間にかいつもの身体に変化している。リリスが再現してくれたのかもしれない。
私はネメちゃんを抱き締め返した。続いて、モニカ、ティア、シアも抱きついてきた。ネメちゃんは皆を振りほどいたりすることもなく、額を押し当て続けていた。




