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【完結済】追放された黒魔術師は神に拾われ復讐を果たす 〜 私の無自覚な一目惚れ、憑依系ヒロインが叶えてくれるそうです 〜  作者: こみやし
05.英雄魔女のエピタラミオン

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05-18.権威の失墜


「そんな……エコー様が……」



 公爵邸の一室。そこに集まった者たちは悲しみに包まれていた。


 ……。


 …………。


 ………………。


 ……いや。言う程悲しんでないよね。皆。



 も~ちょっとさ~。何かあってもいいと思わない?


 そりゃあ、リリスとネメちゃんは大丈夫って言うけどさ。


 愛しのエコーちゃんがお化けになっちゃったんだよ?


 というかこの状況で生きてる私はなんなのさ。意識もハッキリしてるし。やっぱり私の本体はネメちゃんが使ってる肉体の方なんだろうね。わかってたけどさ。


 問題は手足が無いどころか、声すら届けられないことだ。


 今の私は、現場で霧散しかけた魂の一部をリリスが回収してくれたものだ。こっちはこっちで大切なものなのだろう。きっとたぶん。



 リリスの内側に潜み、周囲の状況を観察する。


 私の新しい身体はいつ作ってくれるのかな?


 だから言ったのにさ。割れやすい器なんてさっさと変えるべきだって。全部わかってたんだからさ。


 私の声ってリリスに届けられないのかな? リリスが私の中に居る時は聞こえるのに。あれって何か技術が必要なのかな。私ってば、地水火風の魔術なんかは得意なんだけど、それ以外って微妙なんだよね。念話とか転移とか。もちろん人間にもわかるよう、術式として定義されているなら使いこなせるけどさ。白魔術みたいなね。けど、ネメちゃんやリリスが使う一部の術って、そういうんじゃないんだよね。これ私がどうこうって話じゃなくて、術の方がおかしいんじゃなかろうか。


 そうだ。今のうちに練習してみよう。どうせ誰とも話せないし。退屈だし。ついでに自分で身体を作るのもいいかもしれない。ふっふっふ♪ エコーちゃん復活を楽しみにしているがいいさ♪ きっと皆を驚かせてみせるから♪



 とはいえどこから手を付けたものかなぁ。


 先ずはリリスの記憶を覗くところからかな? 前に才能あるって言われてたし♪ リリスは褒めて伸ばす方針だけど、きっとあれは特別に感心してくれていた筈だぜ♪ エコーちゃん頑張っちゃうよ♪ リリスの心を丸裸だ♪



 う~ん……うにょうにょうにょ~……なんか違う……。




----------------------




「戻りました。リリス様」


「首尾は?」


「『斥候』を捕らえました」


「そう。やっぱり彼が」


「またしても洗脳を受けていました。『前勇者』の件にて、公爵家と女神様への憎しみを増幅させられていたようです」


「難儀なものね」


「処分は如何なさいますか?」


「公爵に預けなさい。あなたが手を下すことだけは認めないわ」


「御意」


 ふむふむ。いつの間にかメイドに変装して潜り込んでたんだ。よく気づかれなかったね。本当に優秀なんだね。まさか今回の事件の黒幕である『枢機卿』がわざわざ釈放して使っていただなんて。


 追放された筈の枢機卿は、私と因縁のある盗賊団をも利用し、今回の騒動を引き起こした。


 今のところ教会は知らぬ存ぜぬを通そうとしているけれど、教会騎士たちがあの場に居たのは間違いない。


 その彼らも、暴徒を抑えるために出動しただなんて言い張っているけど、もちろん目的は私の討伐だ。白々しい。真の黒幕が枢機卿だったとしても、教会は間違いなくその計画に加担していたのだ。



 あのゴーレムの中には人間が入っていた。それも『善人』にカテゴライズされる人間だ。なんとびっくり、あの枢機卿本人だ。身体張りすぎでしょ。結果命まで落としちゃうなんて。最初からそこまで含めて計画通りか。完全にしてやられちゃったよ。意味があったのかどうかはともかくとして。


 彼の策略により、私は『悪人』になってしまった。ネメちゃんの敷くシステム上の扱いは。


 とはいえ、その仕組も既に明かされている。ネメちゃんが枢機卿の霊魂を完全に祓ったことで、私の『悪人』としての属性は取り払われている。さすが女神様。


 枢機卿の命すら代償とした作戦は、ネメちゃんがひらりと手を振るっただけで潰えてしまった。私の身体が砕かれたのは困りものだけど、そっちもいずれ変えるつもりの肉体だったわけだしね。



 リリスはずっと考え込んでいる。アッシュを走らせながら、身の回りの危険を取り除き、教会の不正を検めている。


 何かを仕掛けるつもりでこうしているというより、いずれ役立てられるかもしれないから集めているといった感じだ。


 今回ばかりは「許す」だなんて言えないのだろう。むしろすぐに天罰が下らなかったことに驚いたくらいだ。リリスたちが真っ先にネメちゃんを宥めてくれたのもあるけど、ネメちゃん本人が律儀に私との約束を守ってくれている。



 とはいえだ。流石になんらかの報復は行わねばならない。


 その結果、シアやティアは『アドラスティア聖王国』への働きかけを行った。


 教会の信仰は認めぬと、女神様の名の下に神託を下した。


 「女神様自ら信仰を制限する」それこそが教会に対する最大級の神罰だ。



 少し壮大なことを言ってはみたけれど、やったことはただチクっただけだ。別に女神様が直接力を振るったわけじゃない。


 諸々を聖王国の本国側に報告し、女神様が教会の信仰を認めず、今後二度と勇者や聖女を任命することは無いと伝えただけだ。


 それも交渉の余地無く一方的に。


 近い内に本国は教会を問い質そうと動くだろう。彼らはその時になってようやく理解するだろう。本当に女神様は彼らを見捨てたのだと。


 もちろん世界中の人々から信仰を取り上げようって話じゃない。それは現実的に不可能だ。


 あくまで『教会都市リブラ』における『ネメシス聖教本部』を名指しで否定しただけだ。ネメちゃんも別に細かく管理するつもりはない。


 いち早くそこから逃げ出した者たちが、他所の土地にある教会支部で再起しようが止めるつもりはない。私たちには。


 けれど『アドラスティア聖王国』はどう動くだろうか。女神の機嫌を損ねた教会本部の者たちを野放しにしておくだろうか。いいや。そんな筈はあるまい。


 たとえこの地を離れたって、聖王国の中に居場所があるとは到底思えない。もちろん、いずれは人類圏そのものから居場所を失うだろう。ガクブル。



 後は彼らに任せよう。聖王国が公爵の言葉を虚実と断じて放置する可能性も無くはないけれど。


 それよりは教会の腐敗を正して、少しでも女神様の機嫌を取り持とうと動くだろう。そっちの可能性の方が高い筈だ。


 現状、女神との良好な関係を維持している公爵家に責任追求を行って、これ以上に女神様の機嫌を損ねることも無いと信じたいところだ。公爵家はネメちゃんのお気に入りだし。


 そう考えると、聖王国が教会のトップに公爵を据えようと動く可能性もあるのかな。これは都合が良いのか悪いのか。私にはちょっとよくわからない。いずれにせよ、シアとティア(あとついでにベルタ)が今まで以上に忙しくなるのは間違いない。



 リリスが動き続けているのは将来のためだ。教会がまた何か仕掛けてくるかもしれないもんね。リリスは私のために今の居場所を守ろうとしてくれている。何より、リリス自身が彼女たちを大切に想ってくれている。


 ありがとう。リリス。やっぱりあなたは最高の相棒だね♪

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