05-13.ドキドキ初デート・後編
「次は的当てで勝負だ♪」
「望む所だよ♪」
ネメちゃんは早速小さな弓矢を受け取って構えた。
狙うはクマさんのぬいぐるみ。あれが一番大きな景品だ。
「よ~く狙ってね~♪」
今回もチャンスは三回だ。倒せば景品が手に入る。
「……」
相変わらずネメちゃんは息一つ漏らさない。一瞬の内に三本の矢が解き放たれていた。
「あらら。残念だった……ね……え?」
三本の矢は全てぬいぐるみの眉間を貫通していた。
全て鏃なんて付いていない。先端はコルク製の柔らかいものだ。景品を射抜くなんて出来る筈が無い。
「これで良いの?」
「……弓矢は上手いんだね」
輪投げはノーコンだったのに。
というか矢はどこ行っちゃったのかしら?
『後の建物も貫通してるわね……』
誰か怪我人とか……。
「ちょっと困るよ! お客さん!!」
あかん。
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結局、矢は三軒先の建物の壁で止まっていた。幸い怪我人はいなかった。ネメちゃんがパパっと術で壁を直し、何故か砕け散ることなく無傷の状態で回収できた矢は、店主さんにお返しした。
代わりに受け取った穴の空いたぬいぐるみはいつの間にか姿を消していた。ネメちゃんが異空間に収納したのだろう。便利な術だ。私も自力で使えるようになりたいものだ。
「これで我の勝ちだね♪」
む~。散々手間かけさせてくれたくせに~。
「三本勝負だよ! 次は『型抜き』で勝負!」
『こすいわね。絶対ネメちゃんの苦手分野でしょうに』
勝てばよかろうなのだ!!
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「ふっふ~ん♪ 我の勝ち~♪」
「負けた~~!!!」
なんでよ! 絶対勝てると思ったのに!!
『ネメちゃんも不器用だけど、それ以上にエコーが不器用だったわね』
変だよ! ネメちゃんの方は台に穴まで空いてるのに!
『地面に穴を空けなかった辺りに進歩が見られるわね』
けどぉ!
『一撃で粉々に砕いちゃったらダメに決まってるじゃない』
ちょっと失敗しただけなのにぃ!
「もう一回! もう一回だよ! ネメちゃん! 先に三勝した方が勝ちだよ!!」
「え~♪ 往生際が悪いな~♪ ふふ♪ けどいいよ♪ 相手してあげる♪」
『もうやめときなさいよ。皆の迷惑になるわ』
後一回! 後一回だから!
『ならエコーの負けは確定じゃない』
もう! リリスはどっちの味方なの!?
『もちろんエコーの味方よ。折角回復した信頼を損なってはエコーが困るもの』
ありがとう!
『どういたしまして。わかったなら後一回で勝負は終わりにして頂戴。代わりに演劇か服を見に行きましょう♪』
お~!
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「まだ勝負決まんないの?」
「もうちょい~」
確実に勝てるやつを選ばないと……何かないかな?
『あまりこちらに進むのはオススメしないわよ』
なんで?
『教会よ。この先にあるのは』
あ、そっか。流石にネメちゃんの正体もバレちゃうか。
今のネメちゃんはいつもの女神様らしい服装じゃなくて、バッチリ決めた都会のお姉さんスタイルだから、今のところ誰も気付いてないっぽいけど。
「ねえ、エコー」
「え? ネメちゃん? そっち行くの? 教会だよ?」
「わかってる」
ネメちゃんに手を引かれて教会前の広場までやってきた。
「さあ! 挑戦者はおられぬか!! この『聖剣』を引き抜きし者には『勇者』の栄誉が与えられるのだ!! 我こそはというものは名乗り出るがいい!!」
教会騎士が声を張り上げている。
広場の中央に設置された岩には、懐かしの聖剣が突き立てられている。
まさか聖剣がこんな客寄せ興行に利用されるだなんて。
『いえ。本気で勇者を探しているみたいよ』
そういえば魔王の件は別に片付いたわけじゃなかったんだね。少なくとも世間一般的には。
『私たちの中ではとっくに問題ではなくなっていたものね』
ネメちゃんが魔王を回収しに行けば済んじゃうし。
というかなんで行かないの? ネメちゃんだけなら転移ですぐでしょ?
『エコーの側を離れたくないからに決まってるじゃない♪』
ふふふ♪ 愛されてるぜ♪
「エコー。あれ抜いてきて」
「私からでいいの?」
「うん。持ってきたらエコーの勝ちにしてあげる」
「やった♪ 行ってくる♪」
楽勝だね♪ 聖剣の特性はわかってるし♪
『ちゃんとわかってるの?』
何が~?
『ネメちゃんはエコーを勇者に……というか、世界に認めさせたいのよ。英雄として』
……だから魔王を放置してるのかな?
『かもしれないわね。ネメちゃんはあれで色々と考えているもの』
ふふ♪ なら期待に応えないとね♪
『本来の目的は忘れてないわね?』
うん。大丈夫。忘れてない。
『そう♪ なら派手にやりましょう♪』
うん♪ やっちゃおう♪




