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追放された黒魔術師は神に拾われ復讐を果たす 〜 私の無自覚な一目惚れ、憑依系ヒロインが叶えてくれるそうです 〜  作者: こみやし
05.英雄魔女のエピタラミオン

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05-02.壊れゆく都市


 『教会都市リブラ』は地獄と化していた。



 何もかもが強制的に浄化されたことで、予想外の問題が次々に現れた。


 シアも警告した通り、食料品を始めとした一部の生産業や、日常生活に必要な魔導具、果ては魔物たちにまで、その影響は広がっていった。


 中でも最も深刻なのは、多くの植物たちが枯れ始めたことだ。神聖な水と土だけでは植物は育たない。浄化魔術が汚物と切って捨てた中には、植物たちにとって必要不可欠なものまでもが含まれていたのだ。


 難しい話をしだすなら、植物たちが土から栄養素を得るには、その栄養素を分解して取り込みやすくする存在が必要なのだそうだ。小さな小さな、目に見えない程小さな生物が存在しているのだという。これもシアが教えてくれたことだ。


 食用・観賞用問わず、植物の枯れた『教会都市リブラ』からは、急激に色が失われていった。本当に見た目からして地獄のような光景だ。


 まさか、こうして滅びを迎える直前の光景を目の当たりにすることになろうとは。……どころか、それを自ら引き起こしてしまうとは。




----------------------




「皆の者ぉ!! 今こそ目を覚ますのだ! あの使徒は! 我々『無辜なる民』の! 平穏なる日常を破壊する悪魔の化身だ! 我々人間の街に! 神の怪物は必要ない! 今すぐあの使徒を! 力ずくでこの街から追い出すのだ!!!」


 今日も今日とて、見覚えのある老人……枢機卿の一人が自ら人々を集めて訴えかけている。私と女神ネメちゃんを排斥しようと人々の心に訴えかけている。


 もちろん教会が女神との敵対を決断したわけじゃない。少し遅れて教会騎士たちが集まってきた。いつも通り集会は中断された。


 そんな光景も日常のものとなってきた今日この頃。



「毎日毎日飽きもせずによくやるもんだね」


「ダメですよ。ネメちゃん。悪いのは我々なのですから」


「むぅ~」


 我儘ネメちゃんもモニカママの言葉には割と従順だ。ここ数日で随分と手懐けられたものだ。流石モニカ♪ 私の恋人様は凄いんだぜ♪ むっふっふ♪



「エコーさん。どうするおつもりですか?」


 そりゃあね。責任は感じているんだよ。だから作戦は考えてみたんだ。



「ダンジョンに町を移すのはどうかな?」


 ダンジョン内なら十分なスペースもあるし、浄化の影響で死んでしまった土地の側にだって設置できて、尚且つ完全に領域を切り離すことができるのだ。どやぁ♪



「名案なのだわ。けれど問題はどうやって皆を説得するのかなのだわ」


 それはそう。



「畑とかだけでも移してみる?」


『無理よ。そういう使い方は出来ないわ』


「なんで?」


『リソースが尽きるからよ。ダンジョンから一方的に資源を取り出し続けることは出来ないの。畑が作りたいなら多くの人間をダンジョン内に住まわせる必要があるわ』


「なるほど。人々が排出する様々なものをエネルギーに変換して取り込むのですね。生物は生きているだけで魔力を生成し、垂れ流していますから」


「う~んと。つまり、最低でもプラマイゼロを維持しないといけないんだね」


『そういうことよ♪』


 はてさて。どうやってこの方針を提示しよう。



「人類と魔物は基本的に敵対関係なのだわ。ダンジョンに住まうだなんて、教会都市の敬虔な信徒たちが受け入れられる選択ではないのだわ」


 だよね~。


 魔王が女神ネメちゃんの産み出した存在だなんて話は、流石に一般的なものではないのだろうし。あくまで知っているのは、教会の上層部だけなのだろう。あの枢機卿だって流石に民の前では口にしてなかったし。時間の問題かもだけど。


 逆に教会上層部は上手く話を通せば納得してくれる可能性もあるのかもしれない。あるのかもしれないけれど、彼らが一般信徒たちを説得出来るとは限らない。そもそもあの枢機卿を説得できるとも思えない。



「仮に全ての問題を乗り越えてダンジョン都市が成立した場合、今度はギルドとの関係性が問題になるかもしれません」


 あ~……。ダンジョンはギルドの管轄だもんね。


 いくら女神が絡んでいるからって、好き勝手ダンジョンの資源を扱えるようになったなんて話になれば、今度は冒険者ギルドが物申してくるかもしれないね。


 なんなら商業ギルドとかだって……いや。もうその程度の問題じゃないのか。パワーバランスが大きく崩れてしまうかも。女神が人間の都合で使われ始めたら、それこそ際限無く要求してくるだろうし。行き着く先は教会の権威の失墜か。


 そこまで行く前に戦争でも起きるかもしれないね。人間対、魔族&女神の戦争を回避するどころか、人間同士で戦争始めちゃうかも。ダンジョン掌握ってとんでもなく危険な技術だったんだね。



「ダンジョンに都市を移すとしても、ナイショでやらないとなのかもね」


「実際可能なのですか?」


『う~ん……不可能ではないかもだけど……』


 都市を丸ごと、気付かれない内にダンジョン内に取り込む必要があるよね。閉鎖型ダンジョンじゃなくて、開放型ダンジョンで。



『私の知識では足りないわね。ネメちゃんはどうかしら? ダンジョンの扱いについては造詣が深いのでしょう? 私たちに知恵を貸して頂けるかしら? あなただけが頼りなの。どうか至らない私の代わりにエコーを助けてくださいな♪』


「仕方ないなぁ♪」


 リリスもリリスで、モニカに負けず劣らずネメちゃんの扱いが巧みなものだ。ふふふ♪ 流石は我が相棒♪



「ネメちゃん。まだ実行してはダメですよ。先に出来るかどうかだけ教えてください。ネメちゃんがまた嫌われてしまったら私は悲しいです」


「もちろんわかってるよ!」


 モニカが冷静だ。お母さんモードのモニカは普段と打って変わって落ち着いている。めっちゃ頼りになるぜ♪



「可能か不可能かで言うなら可能だよ。けどエネルギー効率が悪くなるの。だから何か他の要素が必要だね。例えば魔王には我が力を与えて補強してるし。魔王のダンジョンは別に開放型ってわけじゃないけど、その代わりに配下たちに力を分け与える仕組みがあるから持ち出しが多いんだよ。そもそも城だって例えコアが破壊されても消えないように、予め建てておいたものに被せてあるんだけどね。その辺りはそんなに難しくないよ。我に任せてくれていいよ。あとは……」


 ネメちゃんのダンジョン談義は暫く続いた。


 ネメちゃんは意外と凝り性なのかもしれない。何でもかんでも大雑把にやっちゃう子なのかと思っていたけれど、実は色々考えた末に大雑把な力技になる子なのだと、なんとな~く理解した。

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