04-12.黒幕女神の盤上遊戯
「なんでネメちゃん、教会と仲悪いの?」
「エコーを虐めたからに決まってるじゃん!」
言うと思った。
「違うでしょ。それは後付けでしょ。ちゃんと説明して」
元々仲悪かったじゃん。明らかに教会の人たちは私たちの目論見を察して阻止しに動いていたじゃん。もしかしてネメちゃんが地上に降りてきたのって初めてじゃないのかな?
「エコー様。その件はわたくしからお話するのだわ」
シアが?
「ネメちゃんもそれでいい?」
「いいよ。手間が省けるし」
堂々としたものだ。この子が悪びれることってあるのだろうか。
「教会は知っていたのだわ。魔王を産み出したのが女神自身であることを」
……うん? 魔王?
「どゆこと? 自作自演だったの?」
「そうだよ♪ あれもフィリアスなの♪」
フィリアス?
『私と同じ種族のことよ。吸血鬼の上位種と思って頂戴』
なるほど。魔物の一種なのね。
「え? 魔族じゃなくて魔物なの?」
「うん。だってあれダンジョンだもん」
……あれ?
「魔王城のことなのだわ。魔王が何度でも蘇るのは、そもそも魔王の居城がまるごと一つのダンジョンだからなのだわ。そしてダンジョンを産み出したのが他ならぬ女神なのだわ」
えぇ……。
「何故そんなことを?」
「言ったでしょ。真似るためだよ」
「……ネメちゃんのママさんを?」
「うん♪ ママも守護神なの♪ すっごい神様なの♪」
守護神? また知らない単語だ。
『世界を守護する神のことよ。世界ってここ以外にも沢山あるの。一つ一つに管理者である神が存在するの』
他の世界を守護する神様がネメちゃんのママさんで、そのママさんも同じようなことをしているんだね。
『そういう意味でしょうね』
「その目的は? ママさんは何故魔王を生み出すの?」
「うん? ううん。ママは魔王なんて生み出さないよ?」
真似してるって言ったじゃんさ。
「ママの世界にも魔王がいたの」
……ああ。それを無理やり再現したのね。
やっぱりこの子、やり方が極端で大雑把なんだよ……。
「魔王はね。簡単には死なないの。完全に倒し切るには勇者と聖女だけじゃ足りないの。もう一人必要なの」
「それが私?」
「うん♪ 本当は違うんだけどね♪ でもいいの♪ 我の特別はエコーだから♪」
本当は違うってどういうことだろう……。
「エコーは神のお気に入り♪ 我の大切♪ 我の伴侶♪ エコーにはまだまだ強くなってもらうの♪ 我と一緒にこの世界を守り続けるの♪ それが我のびくとりー♪」
なんだか壮大な野望をお考えのようだ。
「女神ネメシスは人類に興味などないのだわ。その女神が固執するのは世界の存続と誰かの真似事だけなのだわ。それ以外本当にどうでもいいのだわ。この世界の人類がどれだけ苦しもうとも気にもしないのだわ」
シアはそれを一足先に知ってしまったと。
だとすると公爵はそれでも利用できると考えたのかな。
教会の人たちがネメちゃんの降臨を阻止しようとしたのは、これ以上好き勝手させないためなのかな。だとすると、とっくにネメちゃんの考えは把握されていたのかな。
「なんで教会はネメちゃんを奉り続けていたの?」
「我は神だもん♪ 当然じゃん♪」
「女神の力なくして魔王は倒せないのだわ」
なるほど……。それで女神の力や勇者と聖女の存在は切り離せなかったのか……。酷い自作自演だ。まるでこの世界はネメちゃんのゲーム盤だ。まるでも何も、実際その通りなのだろう。
「……もしかしてあの勇者が選ばれたのって意図的なの?」
「その通りなのだわ。魔王は女性なのだわ。彼には討伐ではなく、籠絡が期待されていたのだわ」
……苦肉の策ってやつなのだろうか。教会の人たちもネメちゃんの裏をかこうと頑張っていたのだろうか。
「あはは♪ 意味ないのにね♪ フィリアスは女の子しか好きにならないんだもん♪」
……そうなの?
『ええ。間違いないわね』
……なんとなく見えてきたような。余計わけわからんくなったような……。
「その情報は初出なのだわ」
あらま。
「次はもう無いけどね♪」
ネメちゃんが私を見出したからってことね。
「だから言ったっしょ♪ 教会都市はもう要らないの♪ これ以上我の邪魔をしないなら放っておいてあげるよ♪ エコーとティアがどうしてもって言うからね♪」
これは寛大と言うより、無関心故の言葉なんだね。私たちのこと以外は、本当にどうでもいいんだね。
逆に言うなら、この子は興味さえ抱けばちゃんと寛大にもなれるんだよね。
「私が人間を好きになってってお願いしたら?」
「え~めんどくさ~い」
そっかぁ……。




