04-11.新たな肉体
ネメちゃんは巨大水晶が安置された部屋にやってきた。
今にも炸裂しそうな程の眩すぎる光に手を翳すと、光は急速に収まっていった。
そのまま水晶に近づいて手を触れるネメちゃん。水晶は段々と形を変えて、一人の女性の姿を形作った。
マッパな上にツルッパゲだ。これってもしかして私? 状況的にそうだよね。顔全然違うっぽいけど。ちょっと年上すぎない? あと明らかに胸が大きいと思……いや。こんなもんだった。間違いない。
「リリス。やるべきことはわかるでしょ。生かしてあげたんだからさっさと果たしなさい」
リリスはネメちゃんの冷たい言葉に気を悪くすることもなく、私の意識を連れて新たな肉体へと移動した。
「やっぱり便利ね。フィリアスって」
ふぃりあす? なんだろう。
……おや? 耳が聞こえてる?
「……あ、あ~……テステス。よし。こんなものかしら。エコー。試しに喋ってみて。『……うん』……ばっちりね♪」
まだ返事しただけなんだけど。まいっか。
「エコー!」
ネメちゃんが飛びついてきた。私の裸の胸に顔を埋めて、力いっぱい抱き締めてきた。うぇっぷ。
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暫くネメちゃんをあやした後、リリスが魔力で形作った服を纏わせてくれた。髪はいつの間にか生え揃っていた。なんだか少し茶色っぽい。元の黒髪とは違うようだ。
「これではエコーさんではありません」
モニカから見ても別人らしい。そりゃそうだ。似ても似つかないよね。
「主よ。どうか手直しを」
ティアまで言い出した。
「仕方ないじゃん! これは前々から仕込んでたやつなんだから!」
ネメちゃん的にも妥協の自覚があるようだ。
「ネメちゃんがこっちにすればいいのに」
「無理なの! 割れちゃうの!」
……え? 私って……ガクブル……。
「エコー……今のはあなたが」
『そうなのよ。ネメシス相手なら普通に話せるみたい』
「浮気ですか!!」
声デカぁ~い~。
「いずれもっと良い身体作ってあげるから。我慢して」
まじかぁ……。
『任せて♪』
私の身体が変化した。たぶん元の私の姿だ。幻術の類だとは思うけど。ありがとうリリス。
「やるじゃん♪」
ネメちゃんは再び抱きついてきた。
ネメちゃんのリリスへの好感度が少し上がった。
「結局これはどういう状況なのですか?」
そうだよ。一から説明してあげないとじゃん。
モニカとティアには何も話してないんだし。
『任せて♪』
リリスが出てきた。ティアとモニカにそれぞれ乗り移って、直接心に必要な情報を送り込んでくれた。
「本当に便利だよね♪ 我も自分の拾いに行こっと♪」
自分の? どういうこと?
「ネメちゃん。ちゃんと全部説明して」
「ここじゃ殺風景だよ」
しゃあない。移動しよう。のらりくらりと躱されている気もしなくはないけれど。
「付いて来て♪」
ネメちゃんは私の手を引いて駆け出した。
今更だけどなんか脳がバグりそう。
ネメちゃんの見た目ってさ。大人のお姉さんなんだよ。すっごく綺麗な美人さん。けど言動がおこちゃまなんよ。その温度差が凄いというかさ。元の大仰な話し方は、素の自分を隠すためだったんだね。どうしよう。指摘すべきだろうか。今の無邪気な様子って、私に心を開いてくれたからこそなんだろうし。敢えて直してもらう必要は無いのだろうか。
『いいんじゃないかしら。放っておいて』
そっか。リリスがそう言うならそうしよう。
『ふふ♪ なんだか戻ってきた感じがするわね♪ 相棒♪』
そうだね。相棒♪
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ネメちゃんが向かったのは、グラディス公爵家だった。シアの実家だ。既にアッシュも合流してくれていた。
「どうぞ女神様。こちらをお使いください」
公爵はネメちゃんの味方っぽい。
しかし、シアには何か思うところがあるようだ。一応隠しているけれど、ネメちゃんを警戒しているのが見て取れる。むしろこれは警戒というより敵意なのかもしれない。
「それで? 何から話すの?」
ネメちゃんは他人事のように私に振ってきた。
本人は私の腕を抱いて寄りかかり、完全にリラックスモードだ。
事情は後で説明するって言ってたけど、忘れてしまったのだろうか。
『女神って気まぐれなのね』
そういう問題かなぁ。
『取り敢えず質問してみましょう。また惚けるつもりかもしれないけれど、もしかしたら答えてくれるかもしれないわ』
それもそうだね。ダメ元だね。




