04-09.脱獄
結局牢屋に戻された。
揉めに揉めた教会のご老人たちは、結局私の処遇を決めあぐねたようだ。即刻処刑すべきと騒ぐ老人は他の老人たちに止められたものの、私が釈放されることにはならなかった。
そうして彼らは、何故か抵抗も反論もしない私を不気味がりながらも、再び牢屋の中へと放り込んだ。
『もういいでしょ! 満足したでしょ!』
まあそうね。よくわかんないけど、話が通じそうにはないもんね。
けどここってなんか落ち着くんだよね。自分の部屋にしたいくらい。
『おかしいよぉ!?』
ドン引きされてしまった。
仕方ない。そろそろ動くか。
いいかげんモニカがお腹を空かせているだろうし。
どうやら手錠には、魔術や神聖術を阻害する機能が備わっているようだ。
私は先ず、炎の魔力を練り上げた。続けて神聖力と混ぜ合わせ、手首に纏わせて手錠を溶かし、焼き切った。
私を無力化したいなら、術への干渉ではなく、魔力と神聖力を霧散させるような仕組みが必要だったね。ふふん♪
同じように扉を炎で形作った剣で切り抜いた。
扉にも何やら細工が仕掛けてあったようだが、鉄をも溶かす高温の炎には耐性が無かったようだ。もっと火に強い素材で作られていた方が面倒だったかもしれない。
『ふふん♪ 流石は我のエコーだね♪』
「ネメちゃん。皆の居場所を教えて」
『うん♪』
ネメちゃんの指示に従って鋼鉄の扉を焼いていく。
もちろんモニカとティアも無事だった。心配はしていなかったけれど。どちらもお腹を空かせていたようなので、異空間に隠し持っていた水と食料を分け与えた。
「エコぉ~~~!」
はいはい。リリスもね♪ 久しぶり♪
「復活!!」
「感謝します。エコー」
よしよし。じゃあ外に出てシアたちを探そうか。
『その前に!』
『なっ!? 誰よあなた!?』
あら。遂にネメちゃんとリリスがかち合っちゃった。ネメちゃんは声だけだけど。
『浮気ぃ!?』
よく聞いて。リリスもよく知ってる子だよ。
『まさか……!? ネメシス!?』
流石リリス♪ よくわかったね♪
ネメちゃんのことは、いつも通り私の記憶から掘り起こしてもらうとして。
『先に我を!』
う~ん……そっちの方が手っ取り早いかなぁ。
シアとベルタはお貴族様のお屋敷に居るんだもんね。正面から押し入ったら色々問題になるもんね。今更かもだけど。
「……そうだ」
モニカに預かっていた魔剣を返しておこう。聖剣は教会に渡しちゃったけど、こっちは予め異空間に隠しておいたもんね。今更魔剣がどうとか気にしてる場合じゃないだろうし。
「ありがとうございます♪ エコーさん♪」
ふふ♪ やっぱりモニカはそうでないとね♪
「行きましょう」
「……ティア。神像」
「はい。ご案内します」
ティアは何も聞かずに走り出した。
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「奴らが逃げたぞぉ!!!!」
すぐに追手が迫ってきた。
適当に炎を撒いて足止めしつつ、あんまり相手をしすぎないように駆け抜けていく。
「何故だ!? 何故魔術が扱える!?」
どうやらここには結界が張られているらしい。だから術の阻害じゃなくて魔力の拡散を……て、私黒魔だから関係ないじゃん。残念だったな♪ ガハハ♪
「この先は袋小路です!」
「問題ないわ! そのまま突っ切って!」
いつの間にやらリリスとネメちゃんの間で話が付いていたようだ。私の口をついてリリスの言葉が飛び出した。この感覚もちょっと久しぶりだ♪
「やはり狙いは!! なんとしても近づけさせるな!!」
騎士たちの必死な怒鳴り声やらなんやらが近づいてくる。
こちらに殺意がないことは見破られてしまっているので、炎の壁を張っても平然と突っ込んでくるようになってしまったのだ。多少火傷を負ったところで死にはしない。むしろ迫れば迫る程、私が高威力の攻撃を放てなくなる。そう踏んでいるのだろう。御名答だぜ。
「あれです!」
神像が見えてきた。礼拝堂の最奥だ。その前には騎士たちが壁を成している。どうやら目的に気付かれていたらしい。挟み撃ちにされてしまった。どうしようこれ。
『もっと近づいて!!』
「絶対に近づかせるなぁ!!!」
騎士たちは死に物狂いで突っ込んでくる。
『任せて!!』
私の身体ごと黒い霧へと変化させたリリスが、騎士たちの頭上を飛び越えてネメシスの神像へと纏わりついた。




