01-04.ダンジョン攻略
「……本気?」
「ああ。僕らの実力ならば問題は無いよ」
言うだけのことはあったようだ。勇者パーティーはさくさくと高難度ダンジョンの攻略を進めていった。
「ちょっと! あんたも働きなさいよ!」
この魔女っ子はセオリーを知らないらしい。
「ダメだよ。黒魔術師は極力温存するものだよ。彼女は何かあった時の切り札だ。そういうものなんだよ」
斥候は詳しいようだ。本当に黒魔術師に対する嫌悪感もないらしい。珍しいね。誰か知り合いにでもいるのかな。
「なによそれ!?」
「ダンジョンには魔力が一切存在しない部屋なんていうのもあってね」
「今まで見たことないじゃない!!」
「それはそうだよ。ボクが皆をそんな部屋に連れて行くわけがないじゃないか」
「だったらいらないじゃない! こんなやつ!!」
それはそう。
「……じゃあ」
「危ないよ♪」
斥候に回り込まれてしまった。
「ちょっと! 何持ち場離れてんのよ!? あんたもあんたよ! 余計な手間かけさせんじゃないわよ!! 何もしないならせめて大人しくしてなさいよ!!」
理不尽。
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「ファイア!! 行ったわよ!」
「主よ……我らに護りの祝福を……ホーリー・ヴェール!」
「ふっ!!」
「はぁ!!」
「グォォォオオオオオ!!!」
中々のコンビネーションだ。私が関わらなければ普通に仲良いよね、このパーティー。
「やったわ♪ 勇者♪」
「やったね♪ 勇者様♪」
「やったよ♪ 勇者君♪」
「ああ。皆もよく頑張ってくれた」
……いや。普通じゃないわ。仲が良すぎるくらいだ。
事ある毎にベタベタしてるんだよ……。ボス倒す度に抱き合う程度ならまだしも、チッスまで交わし合ってるし。
「あんた空気読みなさいよ!」
どういうこと? 私もハグに混ざれと?
いや流石にそれはないよね。後ろを向けって話だよね。
「ちっがうわよ! 何で離れてくのよ!?」
理不尽。
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「あんた!」
まただ。
「ちょっと協調性無さすぎるんじゃない?」
ちょっと意味がわからない。
「あんた本当にパーティーに入りたいわけ?」
入りたかったら身体を売れと?
「……興味ない」
「はぁ!?」
「……ギルドの指示」
「何を強がってんのよ!!」
えぇ……。割かしハッキリ答えたのにぃ……。
「もっと素直になりなさい!!」
……案外と良い子なんだろうか。言葉が強いだけで。
これは彼女なりの気遣いなのかもしれない。
「……わかった」
「それでいいのよ!」
「……ソロ専」
「あんた!!!」
ダメだこりゃ。
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「……」
僧侶の子がやたらと見てくる。なんだか警戒されているようだ。たぶん私を敵視している。チャンスがあれば首を掻っ切っられそうだ。聖職者のくせして随分とわかりやすい敵意を向けてくる子だ。正直鬱陶しい。心配しなくても愛しの勇者様を盗ったりしないってば。興味無いから。本当に。
「そろそろ君の力も見せてもらおうかな」
最深部も目前に迫った中ボス階層で、突然勇者がそんなことを言い出した。
ここで? だいぶ深くまで潜ってきたよ?
……あり得ない。油断しているのかな。それとも。
「次のボスは一人で倒してみせなさい! そうしたら認めてあげるわ!!」
結構です。無茶苦茶言わないでください。ここどこだと思ってるんですか。高難度ダンジョンのラスボス一歩手前のボス部屋です。流石に黒魔一人は無理です。死にます。
「大丈夫。危なくなったら助けに入るよ」
……本当に? 信じられるの?
「……」
肝心の防壁要員が私のこと睨んでるよ? 私が勇者に話しかけられることが心底気に入らないようだ。なんなら勇者以外でもだ。魔女っ子や斥候と話している時でさえ敵意を向けられるのだ。随分と独占欲の強いタイプらしい。
「ほら! 行きなさい!!」
……ちくしょう。
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「凄いな。本当に倒せるとは」
……相性が良かっただけ。というかそう思うなら無茶苦茶さないでよ。
「……もう無理。今日は」
今日はもう進まないだろうけど。ボスを倒した後のボス部屋って一定時間安全地帯になるものだし。魔力回復に専念出来てちょうど良い。
「十分さ。君は価値を示してくれた」
価値ねぇ……。
「仕方ないわね! 私も認めてあげるわ!」
それは困る。魔女っ子にはツンケンしてもらわないと。
「凄いね♪ ここまでやれる黒魔術師は初めて見たよ♪」
そりゃどうも。
「……」
相変わらず殺気が漏れてるよ。僧侶さん。
「おいで」
勇者が僧侶を招き寄せた。
不機嫌さを察したのかな……はぁ?
「あ……勇者様ぁ♪」
は? え? なにしてんの?
なんで脱がして……ここどこだと思ってるの? ボス部屋だよ? 今日はもう魔物は出てこないだろうけど……だからって……。
「勇者君♪ 今日もお疲れ様♪」
えぇ……。斥候は多少まともだと思ってたのに……。
「ほら。あんたも」
魔女っ子が手を伸ばしてきた。私は咄嗟に飛び退いた。
「ちょっと。何よその態度」
「遠慮することはない。君もこちらにおいで」
「(フルフル)」
「来るんだ」
「(ぶんぶん!)」
「来い。エコー」
……マズい。逃げ場がない。
ここはボス部屋だ。密室だ。
そして既にダンジョンも最深部に近い。しかも私は消耗した直後だ。
ここから一人では帰れない。ここまで来るのに三日も掛かっている。私一人じゃ生きてダンジョンからは出られない。
迂闊だった。まさかこんな奴らだったなんて。
私は馬鹿だ。こいつらなんかに会わず逃げてしまえばよかった。
「まあいいわ♪ 放っておきましょう♪」
服を脱ぎ捨てた四人は、私の眼の前で絡み合い始めた。
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結局一睡も出来なかった。
逃げ出すことも出来なかった。
これ以上関わりたくはないけど、死にたいわけでもない。一人で帰れば間違いなく生き残れない。そもそも逃げ切れる筈もない。身体能力は彼らの方が遥かに上だ。
昨晩見逃されたのは彼らの気まぐれだ。チャンスはいくらでもある。睡眠不足で弱った私を襲うつもりなのだろう。卑劣で用心深い連中だ。
「おい。開けろ」
え? 私が?
「「「……」」」
ここって……。そう……。結局こうなるのか……。




