04-05.夢幻の逢瀬
「エコー」
あ、女神様。……ということはここは夢の中なんだね。
「汝の魂の歩みは未だこの停滞の地に留まり続けるというのですか? 定められし運命の緒を手繰り、未知なる地平へとその身を投じるべき『刻』は、疾に満ちているというのに。いつまでまどろみの檻に身をやつし、偉大なる変革の第一歩を拒み続けるつもりなのです」
……ごめん。何言ってるかわからない。
「……まだ旅立たぬのですか?」
……あれ? 女神様ひょっとして……。
「不敬です。万物の運命を俯瞰するこの我が、一介の人間がもたらす孤独感に苛まれ、幼子のごとき精神的停滞に陥るなど……論理的にあり得ぬ事象です。我が眼前に漂うこの『沈黙』を不快に感じているのは、あくまで調和を重んじる神としての美学。……断じて、汝に構ってもらいたいなどという卑俗な欲求ではありません」
……つまり?
「いじけてなどおりません」
……あ、はい。
……なにこれ。めっちゃ可愛い。
「なっ!??」
真っ赤になっちゃった。
「なってません!!」
可愛い。
「エコー!!」
ごめんて。
「迎えに来てくださると仰ったではないですかぁ!!」
あらま。
「いつまで待たせるつもりですか! 疾く出発しなさい!」
いやそれ、女神様が無茶したせい……。
「し、仕方ないではありませんか! あの子は泣いていたのです!」
それも女神様のせいじゃん。
「くっ……!」
ごめんて。そんな顔しないでよ。ちゃんと迎えに行くからさ。……つまり教会に行けば会ってくれるってことだよね?
「お待ちしております!!」
は~い♪
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……あれ? 今日もまた何か夢を見たような?
……まいっか。
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「エコー!!」
ごめんて。
仕方ないじゃんさ。リリスがティアに掛かりきりなんだから。
というか神様のくせに一日二日待てないの?
「あなたのせいではありませんかぁ……」
今度は落ち込んじゃった。
……ぎゅう。
「……」
抱き締めたら抱き締め返してくれた。すっごい良い匂い。
「……女神様も大変なんだね」
きっと色々苦労しているのだろう。この子からはティアと同じ気配がするもん。まるで仕事に疲れた受付嬢みたいだ。モニカと正反対の概念。
「……ネメシスです」
「ネメシス。私とお話しようよ。迎えに行けるまでまだちょっとかかるからさ。せめて夢の中だけでもさ」
「……もう少し器を広げれば受信機を埋め込めます」
「じゅしんき? よくわかんないけど良いよ。それでも」
「……信じますよ。エコー」
「うん♪ 頑張るね♪」
私が頑張ったらネメシスが家族になってくれるって約束だもんね♪
あれ? そういえば何を頑張るって明言してないかも?
まいっか。
……どうして私はネメシスと普通に話せているんだろう。
ここが夢の中だからかな?
それとも何か特別な理由があったりして♪ ふふ♪
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「準備が整いました」
結構掛かったね。じゅしんき? がどうとか言いだしてから一週間くらいだね。こうして夢の中で会うのもさ。
毎日増えてく私の力に皆驚いてたよ。最初の内は。段々気にしなくなっていったけど。
「覚悟は良いですか。後戻りは出来ませんよ」
それ聞いてないんだけど。
「ダメですか?」
いいけどさ。ネメシスの好きにしていいよ。私たちは家族だからね♪ どんなことでも力になってあげるよ♪
「……それだけですか?」
だけって何さ。要求があるなら教えてよ。なんでも叶えてあげるから。
「……今話しても忘れるかもしれません」
そっか。じゃあ夢の外で教えてね。
「はい。約束です」
「うん♪ 約束♪」
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『エコー。聞こえますか。エコー』
っ……!? 何!? 誰!? 女神様!?
『……やはり覚えていないのですか』
えぇ!? 何が!?
『……結構です』
なんか期待を裏切っちゃった!? ごめんね! 女神様!
『……ネメシスです』
え? 知ってるよ?
『そうじゃなくて!! ネメシスって呼んでってばぁ!!』
えぇ!?




