04-02.無自覚教師は向いてない
次は力の種類についてだ。
黒魔術に使われる『体内魔力』。
緑魔術に使われる『自然魔力』
白魔術に使われる『神聖力』
世界にはこの三つの力が存在している。
ただし神聖力は魔力ではない。似ているけれど別物だ。
先ず魔力よりずっと密度が濃い。
そして属性が存在しない。
そもそも自然界に存在しない。
大きく違うのはこの三点だ。
魔力と違ってそのまま身に纏うだけでも強固な防御力を得られたりもするけれど、それは単に力の密度が濃いからだ。魔力だって集めて固めれば似たようなことは出来る筈だ。効率悪いから誰もやらないだろうけれど。
他にも、馴染みのない者には知覚出来ないという特徴もあるが、魔力だって最初は認識出来ないものだ。その感覚は訓練で身につけるしかないのだ。特段おかしなこともない。
「……出来てる?」
「バッチリなのだわ!」
「「(こくり)」」
三人とも神聖力を認識している。そもそも全員関係者だからね。今更な質問だった。次に行こう。
「……制御は?」
「少しなのだわ!」
シアが手の平に神聖力の球体を浮かべた。
同じく、アッシュとベルタも難なくこなした。皆優秀だ。
一先ず最低限のスタート地点には立てたと言えるだろう。
「……これ」
私の手の平の上で、炎の柱が勢いよく燃え上がった。
「「「っ……!?!?」」」
驚きすぎぃ~。
「これは!? 自然魔力と神聖力を混ぜ合わせたのだわ!」
正解。けどそれだと少し足りない。
「……属性付与」
属性を与えた魔力を神聖力と混ぜ合わせることで、その性質を変化・増幅させることが出来るんだよ。
神聖力はエネルギーの塊だ。魔力の何万倍にも圧縮された固形燃料だ。何にでも反応する万能の助燃剤でもある。火の魔力と混ぜ合わせればそれだけで発火現象を引き起こせるし、水と合わせればより多くの水を生み出すことも出来る。ちゃんと制御すれば魔術の威力を高めてくれる代物だ。
ただ今は、この場の自然魔力に属性が付いてないし、体内魔力もそのままじゃ属性が無いから、やるなら自分で付与してあげないといけないんだよ。回りくどいけど。神聖力にもそのまま属性の付与が出来たらよかったのに。けどそれやっちゃうと最悪発火人間になりかねないし、この回りくどさも必要なものなのかもしれない。知らんけど。
「……覚えて」
「無茶苦茶なのだわ!!」
なんでさ。そりゃ今は出来ないだろうけど。
「そもそもどうやって属性を付与したのだわ!? 魔力と神聖力を混ぜるだなんて聞いたことがないのだわ!」
なんだ。ちゃんと視えてるじゃん。流石シア。
けどやり方わかんない? ベルタとアッシュも?
困ったなぁ~。そっからかぁ~。
自然魔力の属性付与くらいは出来るものかと思っていたのに。
「……自然魔力」
「「「!?!?!?!」」」
また驚かせてしまった。ちょっと四属性の魔力をそれぞれ固めて手の平の上で操って見せただけなのに。
「おかしいのだわ! 人間業じゃないのだわ!!」
そこまで言う? 私出来てるよ? 人間だよ?
そもそも実戦レベルの黒魔にとっては当たり前の技能の筈だ。体内魔力には属性がついてないんだもん。自然魔力と同じように扱いたいなら、属性の付与は基礎中の基礎だ。無属性の魔力で扱う魔術は安定こそしているものの、威力が特化型の自然魔術程にはなり得ないのだから。
「……やって」
「脳が焼き切れるのだわ!!」
なんで私が怒られてんのぉ……。私先生なのにぃ……。
「エコー様。我々は人間です」
知ってるよぉ……。
「主様のお言いつけとあらば、我が命、賭けましょう」
そんな決死の覚悟で臨まれても……。
「……むり?」
一属性でもいいからさ。
「やれと言われて出来ることではないのだわ」
やる前から諦めちゃう程なの?
「……困った」
「せめて段階を踏むのだわ。スタート地点が神業では困るのだわ」
「……初歩」
「「「……」」」
なんだね、チミたち。その目は。
「……リリスぅ」
『その子たちの言う事が正しいわ。少しは加減しなさい』
なん……だと……。
「それぞれの課題はリリス様が出してくださったのだわ。エコー様にはアドバイスを頂きたいのだわ」
「「(こくこく)」」
あ、はい……。そすか……。
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今日の分の修行が終わり、私、ティア、リリスの教師陣で反省会を始めた。
「……足りない」
「気持ちはわかります。少々甘く見すぎていると言わざるを得ないでしょう」
だよね。こんなんじゃ魔王になんて勝てる筈ないもんね。
『二人が特別なのよ。あの子たちだって十分上澄みよ』
リリスは褒めて伸ばすタイプだもんね。
「人間の上澄み程度では足りぬのです」
『だから「パーティー」が必要なのよ。あなたたちの求める強さは、個人で魔王に匹敵する強さよ。そんなものは女神ですら求めてないわ』
けどそんな考えじゃさ。
「……犠牲が出る」
『出さずに勝とうと思っている方がおかしいの。少なくとも人間たちの常識としてはね』
「……それは……その通りですね」
無理。
「……ダメ」
絶対認めない。犠牲者なんて。
わかった。なら私もっと強くなるよ。皆が戦う必要が無いくらい。強く。




