03-16.ヘタレ
リリスは再びティアの心に移動した。
暫くは心に直接寄り添って手を加えるつもりのようだ。
ちょっと寂しいけど我慢我慢。
にしても可愛いよね。ティアってさ。力に飲み込まれて傲慢になった結果が、ただの反抗期な優等生だなんて。勇者はあんなだったのに。やっぱり根っからの聖女様なのかもね。
「それでは会議もこの辺りと致しましょう♪」
モニカが近づいてきた。私の足を開かせて、その間に割り込んできた。
「大胆なのだわ」
シアもずっと私の腕抱き締めてるじゃん。貴族のお嬢様なんだし、もう少しおしとやかにしとかない?
「どうぞ♪」
ティアが離れて空いていた方の手をモニカに掴まれた。そのまま自らの胸へと誘導した。もちろん抵抗なんぞ出来る筈もなかった。腕力差が開きすぎてしまった。普通に怖い。
「きゃっ♪ なのだわ♪」
シアも興味津々だ。
まったく。貴族のお嬢様になんてもん見せつけてんだか。
「……ダメ」
「遠慮なさらずに♪ ……て? あれ? 何か硬いものが」
「えぇ……!? それってまさか!? なのだわ!?」
何を想像したんだか。
「なんですかこれ。手のひらの」
私は自身の手のひらの内に小さな結界を産み出した。「ホーリー・ヴェール」のちっちゃい版だ。それが私の手とモニカの胸の間で接触を遮ったのだ。
「今、詠唱どころか魔術名すら唱えていませんでしたよね」
うん。できちゃった。
「「「「「……」」」」」
またそういう顔するぅ~……。
「歴史上誰も成し得なかったとんでも技量を用いてすることがこれなのだわ。モニカ様嫌われすぎなのだわ」
「そんなぁ!?」
「ちがっ!!」
衝動的に動いた私は、拘束が緩んだ腕でモニカを抱き締めた。
「……違う」
「エコーさん……」
「……恥ずかし……だけ」
「はい♪」
よかった。誤解は解けたようだ。
「余計なことを言ったのだわ。謝罪するのだわ」
「いいんですよ♪ お陰で抱き締めてもらえましたから♪」
まったくもう。
「今回は正妻様に譲るのだわ。わたくしは大人しく引き下がるのだわ」
シアは宣言通りに私の腕を放し、少し離れたベルタの隣に腰を降ろした。
「ご立派です。シア様」
何故ベルタは涙ぐんでいるのだろうか。
「正妻~♪ えへへ~♪ 私が~♪」
モニカは浮かれポンチだ。いつも通りだ。……私が抱き締めてるのに。なんかちょっと癪だ。もっと照れるとかすればいいのに。ぷんすか。
……にしてもやわやわだ。
なにこれ。
本当にこれ私のなの? 好きにしちゃっていいの? 何しちゃってもいいの? ……ぐふふ♪
「見るのだわ、ベルタ。エコー様がスケベな顔をしているのだわ」
「はい。今すぐ揉みしだいてやりたいと目が語っています」
くっ……。また余計な事を……。
「エコーさん♪」
しないから。何もしないから。
皆見てるし。アッシュとベルタは恋人でもないんだし。
「どうぞ私のことはお気になさらず。私はエコー様とリリス様、あとついでにシア様の所有物です。置物とでもお考えください」
このメイドさんはさぁ……。
アッシュも何故か部屋の隅っこで背中を向けて小さくなってるし。いいから。そんな遠慮のしかたしなくて。逆にこっちも気になるから。気を遣うから。特にアッシュの前でなんて出来る筈がないんだから。
「……どいて」
やっぱ今はやめておこう。これくらいでもアッシュのトラウマを刺激しちゃうだろうから。
「……話。ある」
「はい。エコーさん」
モニカは素直に従ってくれた。
「……」
さて。どうしたものか。
リリスがいないと話をするのって大変だ。
けどあるって言っちゃったし。本当にあるっちゃあるんだけどね。ただちょっと……いや。頑張ろう。
「……みんな」
……あかん。言葉が続かない。
「……ありがと」
くぅ……。ハズい……。
「……」
「「「「「……」」」」」
「……」
「「「「「……」」」」」
「……」
「「「「「……え? 終わり?」」」」」
……違くてぇ~。
「ふふ♪ エコーさんはきっとこう言いたかったのですね♪ 『私と出会ってくれてありがとう』と♪ 『家族になってくれてありがとう』と♪」
「(こくり)」
はい……だいたいそんな感じです。ありがとう、モニカ。代弁してくれて。
今まで私ボッチだったからさ。本当に嬉しいんだよ。友達が……家族が出来たことがさ。
だからありがとう。これからもよろしくね。皆。




