03-15.精神強度EX
「女神は何故力の返還を求めるの?」
それってつまり、女神様は魔王亡き後の魔王領の殲滅には乗り気じゃないってことだよね。
やっぱり今の力関係は女神様が意図的に敷いているものなのかしら。
「勇者が殺戮の誘惑に堕ちぬためです。圧倒的強者である魔王を相手取るならばともかく、魔物や魔族を相手に過剰な力は必要ないと考えておられるのです」
……まあわからんくもないけれども。
魔王没後も前線で戦い続けて、それも圧倒的な弱者を淡々と殲滅し続けるだなんて、下手をすれば精神に異常をきたしかねないもんね。わかるよ。うん。
「そう。だからエコーなのね」
今度は何の話だろう。
「エコーは類まれなる精神性の持ち主よ」
なんでさ。
「エコーが北の最前線でなんと呼ばれているか知っているかしら?」
「あ! あれですね! 『黒魔女』!」
「そうよ♪ 良い子ね♪ モニカ♪ よく覚えていたわ♪」
「でっへっへ~♪」
……盗賊の時か。
「エコーは元々黒魔だけど、緑魔術も扱えるの」
今は白魔も含めて三色コンプしたけどね。
「……それは本当ですか?」
「三色使いなんて歴史上でもエコー様だけなのだわ」
本来黒魔と白魔が両立出来ないからね。なんで私が使えるかは知らないけど。
「驚きました……」
そんなに?
「二つ名は見た目のせいなのだけれど、二つ名が付くほどの冒険者という時点でその実力は推して知るべしよね」
なんだか大げさな言い方だね。あっちはゴロゴロいたよ。二つ名持ちなんて。
「何故エコーさん本人がピンときていないんですか?」
「……おおげさ」
「そんなわけないでしょう!?」
うわっ!? びっくりした!
急に大声出さないでほしい。特にモニカは。
「エコーは何年も続けてきたの。最前線でひたすら魔物たちを狩り続けてきた。殆ど休むこともなく。ただひたすら魔術を放ち続けてきた」
「「「「「……」」」」」
なんなのさ……。その顔は……。
「エコーさんって私より年下ですよね?」
「ええ。十になる前からそんな生活を送ってきたのよ」
「「「「「……」」」」」
だからその顔や~め~て~よ~ぉ~。
「けれどエコーの精神は驚く程に落ち着いているわ」
そりゃどうも。
「女神はエコーの素質を見抜いたのでしょうね。勇者と接したことで。ようやくその存在を認識したのよ」
何の素質さ。
「エコーが力に飲み込まれることは決して在り得ないわ」
ああ。慣れてるからって話ね。弱い者いじめ。
「力の返還が必要ない使徒。これって貴重よね。きっと女神はエコーを手放し難いと思う筈よ」
それって……まさか寿命を伸ばして永遠に……とか?
「ユースティリア。あなた、力に飲まれていたのだわ」
シア?
「聖女として育てられながら、我を通した理由はきっとそれなのだわ」
「私が……」
「女神がティアから手を引いたのは、そこに何か関係があるのかもしれないわね。例えば言葉と一緒に余計な力まで流し込んでしまうだとか。ね」
「……」
なるほど。……流石リリス。それにシアも。よく考えるものだ。
「心当たりはありそうね。少し私に調律させてもらえないかしら?」
今度はティアの心に潜るつもりだ。リリスったら。
流石に止めないけどさ。ぐぬぅ……。
「……カーム・マインド」
「「「「!?」」」」
あ、ごめん。驚かせちゃった。
「エコー。それでは意味が無いわ」
そうなんだ。ごめんちゃい。
「……いえ。効果はあったようです」
ティアが少しだけ青い顔をしている。なんか間違えた?
「悪いけど今すぐ診させてもらうわね」
少し慌てた様子でリリスがティアの中に消えていった。
やっぱりマズかったみたいだ……ごめんなさい……。
「大丈夫です。エコー。そんな顔をしないでください」
ティアが微笑みかけてくれた。……私のせいなのに。気を遣わせてしまった。
『……これは……仕方ないわね。予定変更よ。ティアも眷属に加えましょう』
リリスが再び現れた。一度私の身体に入り直し、私の指先を切ってティアに咥えさせた。
『……あら?』
なに? またトラブル? ティアは大丈夫?
『……ええ。少しだけ手こずってしまったの。大丈夫よ。契約は結ばれたわ。……五分五分だけど』
えっと……それって?
『いつもの隷属契約は完全に私たち有利なものなの。けれど今回は違うわ。ほぼ完全に対等な契約よ』
流石は聖女様……ってこと?
『女神が特別に目をかけていた子でもあるのかも』
だから疎遠になっても力は取り上げなかったのかな。
けどよかったね。五分で結べて。最悪トラップで撃退されてたよね。それって。
『ほんとよね~♪』




