03-10.vsダンジョンボス
勇者と聖女。それぞれ順調にダンジョン攻略を進めた。
ダンジョンボスの部屋を訪れたのはほぼ同時だった。
ボス部屋で待ち構えていたのは少女たちだ。
というかリリスたちだ。たちって何やねん。なんでリリスがあっちにもこっちにもいるのさ。微妙に色も違うし。
『分身よ♪』
べんり~。
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最初に仕掛けたのはモニカだった。
僅かに驚きで固まったシアを放置して、一人で真正面から突っ込んでいくモニカ。
こういうところはまだまだだ。下手に個としての能力が高いから、連携が下手っぴだ。いや、上手い下手以前に、そもそも頭に無いのだろう。
案の定、モニカの攻撃はあっさりと避けられた。
これもしかして、フェイントや牽制は教えてないの?
『そこは課題よね~』
なるほど。モニカの性格的に向いていないのか。
速く動いて叩き切る。モニカの戦術はシンプルだ。折角飛ぶ斬撃なんて便利なものがあるのに、遠距離から様子見の牽制を放つこともしないのだ。なんたる宝の持ち腐れ。
『たぶんエコーもそんなに人のこと言えないと思うわよ。その件に関しては』
……下手に火力あるとね。駆け引きって忘れるよね。
『エコーにも修行を付けてあげるわ♪』
お願いします。
『よしよし♪ 偉いわ♪ 素直に教えを請うのってとっても立派なことよ♪』
あまあまだぁ~。
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「モニカ様! 一旦下がるのだわ!! そのままでは勝ち目なんて無いのだわ!」
「まだまだぁ!!」
ダメなのだわ。全然聞こえていないのだわ。猪突猛進が過ぎるのだわ。あれではリリス様には勝てないのだわ。
「♪」
幸いリリス様は待ってくれているのだわ。モニカ様の成長を信じているのだわ。このままでもきっといずれは突破させてもらえるのだわ。リリス様は褒めて伸ばす方針なのだわ。成功体験の積み重ねこそが人を成長させると考えているのだわ。だから間違いないのだわ。けれどそれでは困るのだわ。
わたくしは勝ちたいのだわ。
あの子に。ユースティリアに。なんとしても。
作戦を考えるのだわ。連携の取れないモニカ様を上手く誘導するのだわ。モニカ様の攻撃が当たるように隙を生むのだわ。モニカ様が何も気にせず戦えるよう、道を作るのだわ。
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「あなたの"眼"には覚えがあります」
「……?」
眼の前で首を傾げる少女。間違いありません。彼女がエコーの中に潜む者の正体です。正確にはその一部でしょうか。
分身……精神体……いえ。実体はあるのです。何か別の依代に精神の一部だけを植え付けたのでしょうか。そのような真似が出来る魔物などそうはいません。
『エルダー・リッチ』、或いは『レイス・ロード』。考えられるとしたらその辺りでしょうか。しかしどちらの特徴とも一致しませんね。
いずれにせよ、エコーはその身に魔物を宿しているのですね。それも主のお力を取り込んだ、極めて特殊な個体です。本来魔物にとって猛毒であるその力に順応したのです。リッチやレイスにそれが出来る筈はありません。強固な肉体を持たぬ者ではその前に崩れ去るでしょう。
眼の前の魔物からも主のお力を感じます。とても信じ難い光景です。しかし主はお選びになられた。エコーの清き心を信じ、力をお与えになられた。
エコーは魔物使いの一族なのでしょうか。
聞いたことがあります。北の境界にはそのような一族が存在するのだと。魔王軍の魔物たちを奪い、ぶつけ合わせることで、その力を大きく削り取るのだと。
ダンジョンを制御する技術も一族の秘伝なのでしょうか。
大変に興味深いものではありますが、そろそろ目の前の現実に集中すべきでしょう。
幸い彼女は待ってくれています。楽しげに微笑みながら、私から挑んでくるのを期待しています。
ならばお見せしましょう。それが我が友『エコー』の望みであると言うのなら。
そして私もまた、見極めさせて頂きましょう。これが主の決定であると言うのなら。




