03-08.vs聖女
「ここに二つのダンジョンを用意したわ♪」
リリスぅ……。
「私こと、『エコー』争奪戦♪ 開幕よ♪」
どうしてそうなるのか。
必要なのはシアとティアの仲直りでしょ? 今回私関係なくない?
「ダンジョンを? 産み出した?」
ティアがおっかない顔してるぅ……。
「そもそもあなたは誰ですか? エコーではありません」
断言されちゃったぜぃ♪
『良かったわね♪』
「二重人格と思って頂戴♪」
「えぇ!?」
なんでモニカが驚くのさ。前に私の違いに気付いてくれてたじゃん。
「二組に別れて最深部を目指して頂戴♪ 先にお宝を回収してきた方が勝者よ♪」
宝箱でも設置したのかな?
「話はわかったのだわ! わたくしはモニカ様と組むのだわ!」
「シア様ぁ……」
ベルタが泣きそう。可哀想。
「そんな事をしている暇はありません」
「あら? 聖女ともあろう者が、負けるのが怖いのだわ♪」
「オルテシア。どうか話を聞いてください。我々はすぐに戻らねばなりません」
「わたくしに勝ったら聞いてあげるのだわ♪」
「オルテシア! 遊んでいる場合ではないのです!」
「遊びじゃないのだわ! これは決闘なのだわ! 本気で受け止められないのなら、もうあなたはわたくしの親友ではないのだわ!!」
「っ……!?」
「先に出発するのだわ」
シアは一人でダンジョンに入っていった。
「待ってください!」
モニカも慌てて後を追う。
「モニカ♪ これを持って行きなさい♪」
私が聖剣の封印を解いて放り投げた。……え? そんな簡単に解けるの? 今のゴリ押しだったよ?
「これは♪ ありがとうございます! エコーさん!」
モニカは素晴らしい身のこなしで聖剣をキャッチして、一礼してからシアの後を追って行った。
「あなたはいったい……」
私もよくわからなくなってきちゃった。
「聖女様。お付き合い致します」
ベルタも腹をくくったようだ。
「……やむを得ませんか」
聖女は渋々とダンジョンに潜っていった。
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「せいっ! はっ! たぁっ!! やっ!!」
モニカは慣れた様子でゴブリンたちを斬り伏せていく。早くも一端の冒険者だ。そんな貫禄すら身についている。
右手で聖剣を抜き身のまま肩に担ぎ、左の逆手で鞘を持っている。これは彼女なりの二刀流スタイルのようだ。いつの間にそんなスタイルまで身に付けたのだろうか。
同行者の誰かが知っていたとも思えないし、ダンジョン攻略中で出会った、剣を使う魔物たちとの戦いで覚えたのかもしれない。
『御名答♪ 最深部に籠もっていくつか魔物を出してあげたの♪ モニカったら凄いのよ♪ どんどん吸収しちゃうんだから♪ 後は方向音痴さえ治れば完璧ね♪』
あかん……早速道を外れかけてる……気付いて、シア。
『大丈夫よ♪』
前を行くシアは、モニカを見てもいないのに声を掛けた。探知系の術を使っているのだろう。或いは元々あった才能が開花したのだろうか。あの子やたら目が良かったもんね。目で見るまでもなく察知しているみたいだけど。
それはそうと魔術の腕も随分と成長したようだ。もちろん探知だけじゃない。シアも負けじと魔物たちを蹴散らしている。
二人は競うように魔物たちを撃破しながら進み続けた。
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『さて♪ こちらはどうかしら♪』
聖女とメイド。
ティアとベルタも順調に歩みを進めている。こちらは特に競うこともなく、全てティアが対処している。流石は聖女様だ。魔物たちは近づく間もなく蒸発していく。勇者パーティーにいた僧侶とは雲泥の差だ。
どうにもティアは視線を察知する能力がずば抜けているようだ。たぶんシアと同じだ。特別な感知能力を持っているんだ。索敵に余計な力を使わずとも、相手が行動する前に光線が飛んでいく。
魔物たちは何が起こったのかすらわかるまい。真っ白な何かを目にした瞬間、その脳髄は思考を止めているのだから。
『流石は聖女ね♪』
私よりずっと精度が高いよね。それに戦い慣れしてるね。これ普通に勝てないかも。
『ふふん♪ 大丈夫よ♪ 私に秘策があるわ♪』
もしかしてそのために今回の策を?
『あの二人には代わりに勝ってもらいましょう♪』
いくらでも不正出来そうな気がするけど。
『あの聖女は素直に認めるわ。エコーとシアを信頼しているもの♪』
そういう……なんだかなぁ……。
『ふひひ♪ 努力家で良い子よね♪ あの聖女♪』
ただ教会に籠もって、祈りを捧げ続けていたわけじゃないんだね。
『色々苦労しているみたいね』
そうだね。だから友達になれたんだと思う。
『境遇が似ているものね♪ あなたたちって♪』
リリス、何か知ってるの?
『シアから色々引き出しておいたわ♪』
おっかない。
『ちゃんと説明したわよ♪ 安心なさい♪』
ならいいけどさ。……本当に?
『気にしない気にしない♪』
……これどっちが勝つかな。今のところモニカたちが先に進んでいるけど。
『どうかしらね。経験値が違いすぎるもの。正直想像以上だわ。あの聖女の経験と比べてしまうと、付け焼き刃としか言えないわね』
そうだ。なんですぐ帰ってきてくれなかったのさ。修行するにしたって、一言掛けてくれたらよかったじゃん。
『ふふ♪ ごめんなさい♪』
ティアをどうするつもり?
『あら♪ ふふ♪ お友達が心配なのね♪』
からかわないで。
『もちろん恋人にするわ♪ エコーのお気に入りだもの♪』
私にはモニカがいるじゃん。ダメだよそういうの。
『まあまあ♪ 後は上手くやってみせるから♪ 楽しみに待っていなさいな♪』
リリス。
『あら。本気?』
人間は不誠実を嫌うものだよ。
『ちゃんと責任は取るわ』
本当にその言葉の意味を理解しているの?
『そのつもりだけど。間違っていたら直せばいいじゃない』
私嫌だよ。ティアに軽蔑されるなんて。
『軽率な真似はしないわ』
軽薄なことをやめてほしいんだけど。
『そう受け取られないよう手を尽くすわ』
……ダンジョンの魔物とは違うんだよ。倒されてもまた次が生まれてくるわけじゃないんだよ。失敗してももう一度挑めばいいなんて考えちゃダメだよ。
『酷いことを言うのね』
もう言わせないで。私はリリスとも喧嘩なんてしたくないんだよ。
『私もよ♪ いつまでも仲良しでいましょう♪ エコー♪』




