03-07.聖女の悩み
「主のお声が聞こえぬのです」
聖女……ティアのお悩み相談が始まった。相談するのはティアの方だ。私が聞く方。あべこべだね。けどいいよ。懺悔があるなら聞いてあげましょう。
聖女なのに女神様の声が聞こえない。それが彼女の悩みなのだという。
私が聖女がどんな存在なのか詳しくは知らない。だからティアの不安を正確に推し量れるわけじゃない。それでも話を聞くくらいはしてあげられる。友達として。
普通の聖女は結構気軽に女神様の言葉を受け取れるそうだ。実際ティアも以前は度々貰っていた。けれど今のティアにはそれが出来ない。女神様が口を閉ざしてしまったのか、なにか力を失ってしまったからなのか。それすらわからないそうだ。
彼女は「自分は聖女に相応しくないのでは」と疑念を抱いている。先程天に向かって叫んでいた彼女は、何も怒っていたわけではなかったのだ。
あれは焦りの現れだ。女神様が自分を見限ったから声を届けてくださらぬのだと、彼女にとってはそれが一番怖いのだ。
「私は勇者を否定しました。あの者は勇者足り得ぬと判断しました。主の決定に異を唱えたのです。以来……主は一言も返してはくださらぬのです」
……真面目ちゃんだ。とんでもなく不器用だ。まさか聖女が女神様の意思に抗うなんて。
それに女神様も大人げない。まさかまさかだ。タイミング的には私が力を貰うより随分前の話だろう。そこは少し安心してしまった。つい。
「あなたが……エコーが勇者でないと言うのなら……」
つまり私は新しい聖女に選ばれたと。ティアはそんな心配をしているわけか。だからこの子も私が勇者だと思い込もうとしたのか。
「……似てる」
「誰とですか?」
「……シア」
「……そうですか」
ちょっと嬉しそう。
「彼女とも親しいのですね」
「……仲間」
「友ではないのですか?」
どうだろう……。そもそも友達と仲間ってどう違うんだろう。今までボッチだったから知らないんだよね。
私が自分で作った友達はティアが初めてだ。それは間違いない。誘ってくれたのはティアの方からだけども。それでもだ。
リリス? リリスは相棒とか家族とかだから。友達っていうのも少し違うかなって。
「……むずかし」
「どうかあの子とも友達になってあげてください」
「……うん」
「ありがとうございます」
……。
…………。
………………。
----------------------
「これはどういうことなのだわ!?」
「あの綺麗な人は誰ですか!? 浮気ですか!? エコーさむがっ……!?」
「お静かに。もう少し様子を伺うべきです。モニカ様」
エコーったら♪ あんなに楽しそうにしちゃって♪
ふひひ♪ やるじゃない♪ 想像以上だわ♪
『呑気に笑っている場合じゃないのだわ』
大丈夫大丈夫♪ 聖女は味方よ♪
『リリス様が呼び寄せたんですの?』
そうよ♪ あの子、シアを探しに近くまで来ていたの♪ きっと誤解があったのよ♪
『そういうことだったのですわね』
ふふ♪ 全てエコーに任せておきなさい♪
『がってん。なのだわ』
もう少し様子を見守りましょう♪
ふひひ♪ その調子よ♪ エコー♪
----------------------
「見られています」
「……ほっとこ」
まだまだ話足りないし。
リリスの考えそうなことだ。好きなだけ見物させておけばいいよ。
「名残惜しいですが」
あぁ……。
お仕事モードに入っちゃった。やっぱティアは真面目ちゃんだなぁ~。
「オルテシア!」
ティアが呼びかけると、シアは渋々といった様子で森から出てきた。ついでにモニカも飛び出してきた。一直線に私に向かってきている。これはマズイ。
「っ……!? 何故!? 何故避けるんですか!?」
サバ折りは御免だし。
「やっぱり! 何かやましいことがあるんですね!!」
何を言ってるんだろう。この子は。
「エコーさん! ハッキリ答えてください! その人は誰ですか!? 私というものがありながら! いったいどういう関係なんですか!?」
まさか浮気を疑われているとは……。
「(ぷいっ)」
「なっ!?」
散々私を放っておいたくせに。モニカのことなんて知らないもん。
「ユースティリア! 全て話すのだわ! 事と次第によっては承知しないのだわ!!」
あっちもあっちで、何故かバチバチし始めた。
『本当になんでかしらね~』
あ、リリス。
『ただいま♪ エコー♪ よく頑張ったわね♪』
ちゃんと説明して。
『いいけど、その前にこの状況を収めるのが先ではないかしら?』
「エコーさん!!」
ひょいっ。
「あぁ!! また避けたぁ!!」




