03-06.初めての友達
「私にその資格はありません」
断られてしまった。
しかもこの聖女様、増々私に興味を持ったようだ。そんな気配を感じる。あかん……。どうしてこうなった……。
「……謙遜」
運搬役くらいは務まるでしょ。凄い力を持ってるんだし。
「それはエコー。あなたの方です」
誤解なんだってば。
「……興味ない」
「だからこそ、主はあなたを選ばれたのでしょう」
もうちょっと世界平和とか望む人に与えてあげてほしい。
私だってさ。使徒であることまで否定してるんじゃないんだよ。女神様には感謝してるしさ。百歩譲って勇者の手伝いくらいなら……まあ仕方ないかって。
けどさ。勇者やれってのは違うよね。女神様に救われた命だから断る権利が無いっていうのもわからなくはないけど。
けどそもそもだ。女神様があの勇者を選んだせいで私は命を落としたのだ。だからプラマイゼロってことで。ダメ?
「エコー。あなたのことを教えてください」
さっきもそれ言われたんだけど。
「あなたはどこから来たのですか?」
なるほど。女神様の使徒として働く同僚としてではなく、私個人のことを聞きたいわけね。えぇ……。
「……北」
「もしや最前線から?」
「……そう」
「こちらには争いを避けるために?」
「……」
「失礼。踏み込み過ぎたようですね」
まあ、最前線が息苦しかったのは事実だよ。あそこブラックだし。毎日毎日休む暇も無かったし。
けど結局冒険者やってるんだよね。他に出来ることも無かったし。
こっちならノルマも無いから環境は別物だけどさ。
向こうに比べたらこっちは天国だ。毎日ベッドで眠れる生活のどれだけありがたいことか。
「……逃げたい?」
「私がですか? いえ。考えたこともありませんでした」
真面目ちゃんめ。
「……逃げていい」
「何故そのようなことを?」
聖女って忙しそうだし。たまには休むことも必要だよ。でないと人間は保たないものなんだよ。
「……代わりいる……いくらでも」
私が居なくなったって前線ラインが変わるわけでもない。あれだけ毎日あくせく働いたって所詮その程度。なんかもう馬鹿らしくなっちゃうよね。覚えあるでしょ。あなたも。
「いませんよ。我々の代わりなど」
そんなことはないよ。私は実際に見てきたもん。
モニカは女神様に選ばれてもいないのに、最強の勇者を目指せるだけの素質を持っている。
勇者を殺したのだって私じゃない。ただの斥候だ。勇者パーティーの一員だったとはいえ、何か特別な力を振るったわけでもない。ただ的確に勇者の弱点を突いただけだ。
「……勘違い」
「あなたは主を信じてはおられぬのですか?」
ユースティリアこそ。教会が信じられないから一人でこんなところまで来ちゃったんでしょ。ならきっと女神様のことだって。実際さっき怒鳴りつけてたじゃん。
「……淀んでる」
ストレスがたっぷり溜まってるでしょ。どんな真面目ちゃんだって、環境が悪ければ最高のパフォーマンスは発揮できないものだよ。ちゃんと自覚しなきゃダメだよ。でないと壊れちゃうからさ。メンテナンスが必要なんだよ。
「淀み……」
聖女ちゃんは黙り込んだ。何やら思い当たる節があったようだ。
「……エコー。どうか私に力を貸してください」
「……聖女の?」
それとも女神様の使徒として?
「私……『ユースティリア』の友となって頂きたいのです」
……真剣な様子だ。何か友達にしか話せないことでもあるのかもしれない。
私も、今となってはこの子がシアを売ったとは思えない。この子はずっとシアを気にしていた。話をしたがっていた。女神様はともかく、教会都市への不信感も抱いている。
きっとリリスはこの子を喜んで迎え入れるだろう。
仕方ない。やっぱりよくわかんないけど、これもリリスのためだ。そしてリリスのやることは私のためだ。巡り巡ってこの少女は私の益となる筈だ。少しくらい優しくしてあげよう。なんだか他人の気がしないし。女神様の人の好みってだいたい似たようなものなのかもしれない。
「……いいよ……友達」
「感謝します。エコー。どうかティアとお呼びください」
「……ティア」
「はい。エコー」
凄いぞ私♪ 初めて自分で友達作っちゃった♪




