03-04.一人ぼっちのお留守番
「これって? もしかして?」
ダンジョンだ……。
森の中を探索していたら、洞穴型ダンジョンを発見してしまった。まるで熊の巣のような入口が、少し盛り上がった地面にポッカリ空いている。
『コアが欲しいわ♪ 潜りましょう♪』
リリスのご要望とあらば。
「前衛はお任せください♪」
「崩落にお気をつけくださいまし」
モニカとシアには修行の成果を見せてもらおっか。
「私は地上に残ります」
ベルタはお留守番だね。お迎えの馬車に気が付けないと困るからね。責任重大だぜ♪ 後は任せた♪
「いいえ。残るのは私よ」
なんですと!?
『ベルタ一人では不安でしょ。それにエコーはとっても目立つもの』
リリスは行くんでしょ!? コア回収するんでしょ!?
『ええ。だからシアを使うわ』
浮気!?
『違うわ♪ 特別授業よ♪ 私が中から魔術を教えてあげればすぐだもの♪ 良い子で待っていなさい♪』
そんなぁ!?
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おかしいですね。やはりつけられていますか。
知らない気配です。それは間違いない筈です。
しかし妙ですね。何やら覚えのある視線です。
……これはどこで感じたものだったでしょうか。そう遠い昔のことではなかった筈です。
……思い出しました。亡き勇者の仲間ですね。オレンジ髪の緑魔術師。あの少女のものとよく似ています。ですが気配は別物ですね。それに彼女は行方不明とお聞きしました。
……少し探ってみましょう。
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主様。気付かれました。
『あら。不覚を取ってしまったのね。アッシュ』
申し訳ございません。
『ふふ♪ いいわ♪ むしろナイスタイミングよ♪ 流石はアッシュね♪ こちらにお連れして頂戴♪』
……はい。仰せのままに。
主様は何かしらの準備を終えられたようね。まさか一度はやり過ごした聖女を自ら招待なさるなんて。
やはり私程度が主様の思惑を推し量ろうなんて、千年早いのね。
「あなたは何者ですか」
私の背後を取った聖女が短剣を突き付けてきた。
「聖女が刃物とは。よほど信仰心に自信が無いのだな」
「術を解いて質問に答えなさい。シトラ」
意外ね。まさか聖女が私の名前を覚えていたなんて。しかも正体バレてるし。おかしいわね。身に纏う力も容姿も以前とは別物なのだけど。流石は聖女といったところかしら。
「っ!?」
魔術の霧を全身から噴き出して視界を塞ぎつつ、今度は私が聖女の背後に回り込んだ。
「主様がお待ちだ。ご同行願おう」
「今のは……いえ……その力は……」
そうよ。私の持つこれも神たる主様から授かったものよ。
「お前が真に聖女であると言うなら、主様の御下へ参じるべきだ」
「……本当なのですか?」
「その目で見たものが真実だ」
私の力を見て取れないあなたではないでしょう?
「……従います」
「結構。慈悲深き主様は探し人と共にお待ちだ」
「オルテシアが!?」
「ゆくぞ」
どうか彼女にも救済を。今聖女をお連れします。主様。
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ひまだぁ~……。
皆遅いなぁ~……。
そりゃあさ。ダンジョンってさ。デカけりゃ一週間とか普通に掛かるけどさ。まさか本当に何日も戻ってこないなんて思わなかったよ。
なんだかんだと日帰りで行ける程度のところまで探索したら、こっちの様子も見に戻ってきてくれるものとばかり。
けど実際はこうだ。私のことなんか忘れて皆だけでよろしくやってるんだ。ぐすん。リリスの浮気者。あっさりシアにも取り憑いちゃってさ。あんなに好き好き言ってくれたくせにさ。モニカだってそうだよ。恋人だなんだ言いながら、最近は私のことより剣のことばっかり考えてるじゃんさ。そんなに好きなら聖剣と結婚すればいいじゃん。私と別れて。
……なにさ。別れてって。別に付き合ってないし。恋人だって言ってたのはリリスとモニカだもん。私じゃないもん。
……ぐすん。
……どうしてこんなに寂しいんだろう。少し前まで一人で生きてきたのに。それが当たり前だったのに。
きっとリリスのせいだ。リリスが私を変えてしまったんだよ。ちゃんと責任取ってもらわないと困るよ。彼女放っといたらダメなんだよ。モニカだってさ。もっと私のこと構ってよ。剣の修行ばっかりじゃなくてさ。私の手より剣握ってる時間の方が長くなっちゃダメなんだよ。絶対に。
帰ってきたらガツンと言ってやらなきゃ。ふんすっ!
「主様」
へ……?
「聖女をお連れしました」
……なんで?
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やばい。意味わかんない。
近づいてくる馬に気が付かなかったのもそうだけど。なにこの綺麗な白馬。馬を引くのはこれまた真っ白なローブの少女だ……少女? ……少女だよね。聖女って言ったし。
そんなことよりもだ。なんでアッシュがここにいるのさ。しかも聖女まで連れて。リリスが私のために手配したの? 寂しがってると思って? 普通に伝わってた?
だからってこの人選は意味がわからない。それも私が呼んだことになってるし。
だいたい迎えの馬車はどうしたのさ。計画を変更するなら伝えておいてもらわないと困るよ。私にアドリブなんか期待されたって応えられるわけないじゃん。
「これはどういうことですか」
こっわ……なんでこの聖女怒ってんの……。
「……」
「主よ! 新たな勇者を選定されたのですか!!」
なんか頭上に向かって叫びだした。
どうやら私に対して怒っているわけでもないっぽい。
というか私を勇者と勘違いしてる? 聖剣持ってるから? 女神様から貰った力を纏ってるから?
違うんだよ。聖剣はモニカから預かってるだけで。……違った。ギルドからだった。どっちでもいいけど。
あかん……リリスがいないと会話が何も進まない……そもそも私まだ一言も喋ってないし。聖女は聖女で空に向かってキレてるだけだし。アッシュはいつの間にか消えてるし。
え? マジで置いてくの? 帰っちゃったの? 私にこの聖女を預けて? 町まで連れて行ってくれないの?
マジ意味わかんない……。
リリスぅ……早く帰ってきてぇ……。




