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追放された黒魔術師は神に拾われ復讐を果たす 〜 私の無自覚な一目惚れ、憑依系ヒロインが叶えてくれるそうです 〜  作者: こみやし
01.復讐のダンジョンマスター

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01-02.復讐


「……はっ!?」



 少女なダンジョンボスが目を覚ました。


 名付けと契約が済んだ直後から、彼女は今の今まで……半日近く眠り続けていた。私はその間もボス部屋に閉じ込められたままだった。


 お腹の傷も綺麗さっぱり癒えたみたいだ。きっと契約のお陰なのだろう。この子には私の力が流れ込んでいる。


 どうやらリリスは、本来弱点である筈の神の力にも順応したらしい。その身体は神の力を纏っている。私と同じだ。びっくり仰天。



「おはよう♪ マスター♪」


 朗らかだ。



「……おはよ」


「ふふ♪ 声が小さいわよ♪ マスター♪」


 頑張ったんよ。私にしては。


 にしても挨拶までするんだね。魔物なのに。ダンジョンボスなのに。



「ふひひ♪」


 変な笑い方だ。思い出し笑い? 今の状況が嬉しくて堪らないらしい。なんかそんな感じがする。



「膝枕してくれたのね♪」


 ……床硬いし。……仕方なく。


 ……この子、そういうのも知ってるんだ。もしかして人間と暮らしていたことがあるの? 挑戦者を生け捕りにして一緒に暮らしていたとか? ここなんも無いもんね。今までも退屈していたのかもしれない。



「リリス♪」


 うん。それがあなたの名前だよ。



「ふひひ♪」


 嬉しそうだ。



「……出たい」


 ダンジョンのボス部屋は、ボスか挑戦者の命が尽きない限り、決してその扉が開くことはない。


 とはいえダンジョンボス本人なら話は別だろう。そう思いたいところだ。……開けられるよね?



「え……」


 少女は絶望に突き落とされたような表情で固まった。



「……嫌よ」


 なんて?



「嫌よ! マスターもここで一緒に暮らすの! 外になんて出さないわ!」


 なんでさ。



「……困る。……復讐する」


 なんとなく私の役目はわかっている。


 女神様はあの勇者を罰してほしいのだ。女神様自身にはそれができないのだ。だから私を蘇らせ、使徒としたのだ。


 私には理由がある。私には権利がある。私は女神様に選ばれた。この復讐は天命だ。必ず成し遂げなければならない。女神様の忠実なる信徒として。何より私自身のために。だって悔しいもん。



 今ならまだ、勇者たちもダンジョン内に居る筈だ。ダンジョンから出られると面倒だ。世界中追っかけ回すなんて御免だ。ここに居る間に始末をつけたいところだ。



「復讐? 誰に? ……私に?」


 それならとっくに殺してる。


 この子には利用価値がある。私を殺したことは許してあげよう。この子は自らを臣下として差し出してきたのだ。だからリリスはもう私の部下だ。生まれて初めて出来た仲間だ。そう簡単に手放しはしない。



「……勇者」


「勇者? 何故? あなたは神の使徒でしょう?」


 女神様にも色々と事情があるんだよ。たぶんね。



「……まあいいわ。ところで勇者ってこれよね? とても強い神の力を感じるわ」


 リリスが何かを差し出してきた。


 なにこれ? 真珠? 大きい。手の平いっぱいだ。


 あれ? 何か映ってる? ……あ。これ勇者だ。


 そっか。ここにはこのダンジョン内の光景が映されているんだ。凄いね。便利だね。



「……?」


「これはコアよ♪ このダンジョンのね♪」


 ダンジョンの? コア? もしかして操れるの?



「使い方を知りたい? どう説明しようかしら。……そうだわ♪ 【同化】を試してみましょう♪」


 同化? え? なに?


 黒い霧に変化したリリスが、私の胸の中に吸い込まれていった。



『ばっちりね♪ 上手くいったわ♪』


 リリスの喜びが直接心の中に染み渡っていく。


『あら♪ センスあるわね♪ こういうのって受け手側の才能も重要なのよ♪』


 もしかして私のも?


『ええ♪ ばっちり伝わっているわ♪ こうして会話ができるくらいにね♪』


 それは……まいっか。楽だし。


『あなた、意外と賑やかなのね。心の中は』


 そうかな? 普通だと思うけど。


『口数の少なさが普通じゃないと思うのだけど。お陰でコミュニケーションが難しかったもの』


 ……ごめん。


『いいわ♪ 普段はこうやって過ごしましょう♪』


 ……うん。そうだね。魔物を町中にまで連れ歩くわけにもいかないし。


『あら♪ 私をただの魔物と侮るべきではなくてよ♪』


 そんなつもりはないけどさ。私冒険者だから。魔物を討つのが生業だから。


『同業者にみつかるって話ね♪ ふふ♪ 心配御無用よ♪』


 まあそうだね。リリスも女神様の力を纏っているもんね。


『そゆこと♪ そうだわ♪ マスターの名前も教えなさい♪』


 名前? エコーだよ。


『よろしくね♪ エコー♪』


 マスター呼びはやめるの?


『状況次第ね♪』


 なにか拘りがあるようだ。


『そゆこと♪』


 まあいいや。好きにして。


『ありがと♪ それでね♪ もう一つお願いがあるの♪』


 うん?


『ここまでの経緯を思い浮かべてみて。思い浮かべようとするだけで構わないわ。後は私が掘り起こすから』


 経緯って? 勇者たちの?


『そうよ。今の私たちは心と心で繋がっているわ。言葉で説明し合うより簡単でしょ♪』


 えっと……。


『……はいはい。だいたいわかったわ』


 早っ!?


『ね♪ 簡単だったでしょ♪』


 便利だね。


『でっしょ~♪』


 じゃあ話を進めようか。


『そうね。先ずはこれを観てみて』


 私の手が独りでに持ち上がり、リリスと一緒に消えた筈のコアが現れた。リリスは私の身体まで操れるんだね。別にいいけど。


 ダンジョンコアには相変わらず勇者一行が映っている。彼らは楽しげに笑いながら帰路を歩いている。呑気なものだ。



『何を笑っているのかしら。エコーを傷つけておいて』


 今度はリリスの怒りが伝わってきた。



『早速仕掛けてみましょう』


 勇者たち一行の背後に、突如魔物たちが現れた。魔物たちはあっという間に勇者たちに撃退されてしまった。


『……あら?』


 リリスの当てが外れたようだ。


『腐っても勇者ね』


 流石に一筋縄ではいかないみたいだね。


『まだまだこれからよ♪』


 勇者たち四人の足下が突然光を放った。咄嗟に抜け出せたのは勇者と斥候だけだ。魔術師と僧侶は光に飲まれて姿を消した。


『転移トラップよ♪ これで引き返すしかないでしょう♪ あの勇者だって、仲間たちを置いては行けないわよね♪』


 それはどうかな。


『……なんか言い争ってるわね。もう少し音量上げてみましょう』


 リリスが再びコアを操作すると、勇者と斥候の声が聞こえたきた。



『ナルキス! 今のは転移トラップだ! 二人はまだ生きてるよ!』


『わかっている! そんなことは言われなくてもな!』


『だったら!』


『この広大なダンジョンから二人だけで見つけ出せるわけがないだろう!』


『ギルドに応援を!』


『何を言ってるんだ!? 勇者が助けを求めるだと!? そんなことが出来るものか!』


 最低だぁ……。保身優先だぁ……。



『じゃあどうするって言うんだ!』


『簡単だ。あの女が裏切ったことにすればいい』


 はい?



『汚らわしい黒魔術師だ。誰が信じるものか』


『二人はどうするの!? 置き去りになんかしたら!』


『魔術師と僧侶だけで生きて出られるわけがないだろ!』


 なんて勇者なんだ……。女神様はどうしてこんなの選んじゃったんだろう……。



『聞くに耐えないわ』


 リリスは再び音量を下げてしまった。正直助かる。あんまり声も聞きたくないし。



 まあいい。気を取り直して。


 取り敢えず魔物たちをぶつけてみてよ。可能なら誘導してどこかに閉じ込めて。


『がってん♪』


 合点? 承知したって意味ね。


 もう二人は? どこへ送ったの?


『この部屋の前よ♪』


 あら。すぐ近くだ。しかも実質袋小路。耐えかねてこの部屋に入ってきたらどんな風に迎え入れてあげようか。


『ここはゴブリンでいいわよね♪ コスパいいし♪ こちら側に追い込みましょう♪』


 そうだね。二人だけならすぐに音を上げることになるね。


 魔術師は数に強いけれど、それは前衛あっての話だ。そもそも数が過剰なら簡単に押し切れる。大群を相手にした場合の継戦能力と突破力は前衛職より遥かに低い。集中力を乱されても、魔力を使い切っても、何も出来なくなってしまう。それは魔力の出どころが身体の内外どちらであろうと変わらない。



 好きにやっていいけど、殺しちゃだめだよ。特に魔女ちゃんと斥候は。あの二人少し妙なの。あまり傷つけないであげてね。勇者と僧侶は雑に扱って構わないから。


『がってん♪』


 それから簡単に扉を開けてもダメ。私がまだ粘っていると思わせるの。閉ざされた扉の前で絶望させてあげないとね。


『ふふ♪ エコーも調子が出てきたわね♪』



 誰かが攻略中のボス部屋には入れない。扉が開かなければ彼女たちは勘違いするだろう。私がまだ生きていて、ボスと戦い続けているのだと。とっくに戦いが終わっているだなんて気付きもしないだろう。


 私をこの部屋に放り込んだことを後悔するといい。


『その調子その調子♪ あ♪ 勇者たちも閉じ込めたわ♪』


 え? もう?


『ええ♪ ばっちりよ♪』


 あら本当だ。凄いね。リリス。


『ふひひ♪』




----------------------




「なんでこんなところに!?」


「落ち着きなさい! たかがゴブリンよ! ファイヤ!」


 炎に包まれて、子鬼たちが燃え尽きた。



「ほら! こんなのどうってことないわ!」


「そう……だよね」


「勇者が待ってるわ! 早く戻るわよ!」


「……勇者様……本当に」


「なによ! ウジウジしないで! あんたの力も必要よ! シャキッとしなさい!」


「う、うん! 頑張るね!」


「行くわよ! てっ!? またぁ!?」


「主よ……我らに護りの祝福を……ホーリー・ヴェール!」


 光の壁が新たに現れたゴブリンの一団を押し留めた。



「やるじゃない♪ アイシクル・アロー!!」


 氷の矢が次々とゴブリンたちの胸を撃ち抜いていく。



「ちょっと! まだ来るの!?」


「ひっ!?」


 ゴブリンたちは次々と現れる。


 仲間の亡骸をものともせず、躊躇なく踏み込んでくる。


 その勢いは留まるところを知らず、またたく間に通路を埋め尽くしてしまった。



「なっ!? なによこれ!? いったいどこから!?」


 倒しても倒してもキリがない。魔力なんて到底足りる筈もない。



「いやっ! いやっ! いやぁぁぁあああ!!!」


「待って! そっちは!?」


 錯乱した僧侶の少女はボス部屋の扉に手をかけた。



「なんで!? なんで開かないの!?」


「なんですって!?」


「いやいやいや!! やだ! 開けて! 開けてよぉ!!」


「まさか!? まだ生きてるの!?」


「っ!? 死んでぇ!! 早く死んでよ!! なんで!? 何で生きてるのぉ!? やだやだやだ! ゴブリンは嫌! ゴブリンだけは嫌なのぉ!! 開けてぇぇぇぇえええ!!」


「きゃぁっ!? 放せ! 放して! 嫌! 嫌嫌嫌!! なんで!? 待って! ダメぇ!! その子に近づくな!! この!! 放せ!! ファイヤ! ファイヤファイヤファイヤ!! 放せ放せ放せ!! ファイヤぁぁぁあああ!!!」

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