03-01.呑気な迷い子
「せいやぁっ!! はっ! ふっ! とりゃぁ!!」
今日も今日とて揺れている。バルンバルンと揺れている。
『でた♪ おやじエコー♪』
跳ねてるものって目で追っちゃうよね。
仕方ないよ。うん。仕方ない。
『それで言うと、あの髪型もよね♪ エコーもイメチェンしてみてはどうかしら♪』
結構です。私はこれが落ち着くから。ポニーテールなんて自分に自信がないと出来ないよ。
『多分に偏見の入り混じった見解ね』
本当はフードだって被っていたいのに。
『それはダメよ♪ 折角可愛い顔しているんだもの♪ 見せつけてあげないと♪』
だいぶ慣れてはきたけどさ。お陰様で。
『良い兆候ね♪』
「中々筋は悪くないのだわ」
そうかなぁ。シアったら、モニカに甘すぎない?
「何より体力が尋常ではありませんね」
それはそう。休憩中はずっと素振りしてるし。休憩とは?
「モニカ~! 少しは休みなさ~い!」
「は~い♪」
良いお返事。
「どうでしたか♪ エコーさん♪」
キラキラしてるなぁ。これが青春ってやつ?
「剣より槌や斧の方が似合いそう」
「なっ……!? そういうこと言いますぅ~!?」
確か古の種族にドワーフってのが……そんな感じだったよね。
「いっそ二刀流にしてみるのだわ♪」
まあ、その方がモニカのパワーを活かせそうではあるけども。なにせ横倒しになった馬の亡骸付き馬車を動かせる程だ。化物じゃねえか。おっと失敬。そんなこと思っていませんわ。
「やってみます!」
「今度町に寄ってからね。聖剣は没収」
「振りませんから! 背負っておくだけですから!」
お守りでもあるまいに。
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「次の町までどれくらいかしら?」
「「「さあ?」」」
おいマジか。
「そもそも道は合っているのよね?」
「「「……」」」
ちょっとぉ?
「この辺りは来たことが無くてですね……」
モニカはそもそも町から出たことが無かったでしょうに。予習はどうしたのさ。自信満々だったじゃんさ。
「歩いて旅をしたことなんてなかったのだわ」
その割にはよく歩けているよね。「ヒール」掛けながらって言ってもさ。リリスの眷属になった影響かしら? ……へぇ~。本当にそうなんだ。そっか。便利だね。
「ですから馬車に乗るべきだと進言したのです」
ベルタってメイドらしくないよね。色々と。
「大丈夫ですよ♪ 街道はまだまだ続いていますから♪」
モニカは前向きだね。けどだから心配になってるんだよ。予定だと町が見えてきてもおかしくない筈なんだもん。
「旅にトラブルは付き物ですわ♪」
シアの旅はまさしくトラブルだらけだったもんね。説得力が違うよね。あとトラブルって認めちゃったね。どうしよ。
「いっそこのままフケてしまうのは如何でしょう」
私はベルタを誤解していたようだ。もしかしたらベルタとは一番気が合うのかもしれない。
『ダメに決まってるでしょ♪ 聖剣の持ち逃げなんて、それこそどんな天罰が下るかわからないわ♪』
リリスって意地悪言う時、生き生きするよね。
『エコーと言葉を交わすだけで幸せなのよ♪』
はいはい。私も私も。
「引き返すべきかしら」
「この先の町で計画を立て直すのでも問題無いのでは?」
「モニカ様の言う通りなのだわ。どのみちまだまだ遠いのだわ。だいたいの方角は合っているのだから問題無いのだわ」
「引き返して北に向かいましょう。そのまま国境を越えるのです」
二対二……もとい。二対一対一で、このまま進むということで。
「このまま進みましょう。一応、途中で誰かと会ったら聞いてみましょう」
「「さんせ~♪」」
「……仰せのままに」
よし。良い子。
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「……そうですか。彼女は引き返しましたか」
エコー……聞いたことがありませんね。いったい何者でしょう。北の冒険者でしょうか。
彼女が引き返す決断を下したということは、聖剣の護送を請け負った冒険者なのやもしれません。冒険者ギルドの職員も同行していたという話です。加えてグラディス家の護衛たちを一方的に殺戮する程の賊を捕らえた実力者です。まず間違い無いでしょう。何よりあの子が半端に職務を放棄する筈もありませんから。明確な根拠も無しに引き返すことはあり得ません。
腕利きの冒険者に拾われたことは幸いでした。しかしその正体がわからぬ現状では安心も出来ません。一刻も早く後を追わねば。勇者が没した以上、再び公爵も動くでしょう。事態は想定以上に深刻なのかもしれません。
どうか無事でいてください。オルテシア。




