第三十二話 サイト442~覚醒~
くっそ、早い。壁を抜けた先は廊下だった。すかさずベレンは逃げるように反対の壁へ吸い込まれていく。俺もそれに続くように全く同じ道をたどっていった。
突然ベレンが止まった。そこは、体育館くらいの大きなコンクリート造りの部屋の中だった。
しかし、部屋の中は窓もなければ扉もない。あるのはいくつかの換気口のような小さな穴だけだった。
「ここは……?」
「俺と君だけが入れる幻の空間だよ。見ての通りあるのは換気口だけだから、テレポーテーション以外に入る方法はないからね。」
「んで、鍵のない棺桶に二人きりで何するつもり?」
「俺だって君と戦いたくはないさ、なんて言ったって言っただろ?最強の組み合わせを見つけたって、そんなもんを君に組み込んだんだ。最強とは戦いたくないだろ?まあ、そんなこと、君が覚えているかは知らんがな。」
「ならなんでいきなり俺の仲間を襲ったりした?例の消えるロボットだって、お前の指示だろ?」
「馬鹿だな。俺は戦いたくはないといったが戦わないとは言っていない。君たちがこの案件に首を突っ込む以上、こちらは君たちを排除しなくてはならない。悪いことは言わない。とっととここから出ていけ。君のお仲間は外に出たようだよ?」
「いや、行かねーよ。軍には義務ってもんもある。知ってるんだ。ここの真上、俺たちの家だろ?」
方向感覚はそんなによくないほうだが、換気口から聞こえてくる音でわかる。ヘリが離着陸する音や、戦闘機のタッチ&ゴーの音は、基地でしか聞くことができない。まして、この戦況じゃ、基地の周りは爆音だらけで、目の前の人との会話すら聞こえない状況だからだ。
「なんでか話してもらおうか。わざわざ長いトンネルを掘って、俺たちの家の真下まで通路を作ったのか。」
「悪いがそれは言えないな。まあせいぜいお仲間さんの心配しながら天命を待つんだな。君が立ち去らないなら仕方のないことだ。」
「時期にお義父さんたちも来るぞ。みんなここの部屋の場所は知っているからな。」
「忘れたか?ここに出入口はないんだ。どうあがいてもたどり着けないさ。」
「教えてやるよ。なかったら作るんだよ!」
「やれるもんならやってみな。」
そういうと、ベレンの目が赤く光りだした。
俺はすかさず、ポケットから、最後の一発であるパチンコ玉を取り出し、思いっきり打ち出した。
「馬鹿だな、鬼に金棒差し出してどうするんだよ。」
しまった。当たり前だがパチンコ玉は金属製、ベレンは金属を操るとか言ってたからそれこそ鬼に金棒だ。
「くっ」
その瞬間、俺の肩に激痛が走った。見ると、血が噴き出るように出ていた。
「肩を貫通した。痛いだろ。まあ、自業自得だろ。」
「てめぇ…」
その時、一瞬意識が揺れた。
すぐに意識は戻ってきたが、おかしい。頭の中ですっと警告音というかアラートというかが鳴り響いてる。
肩の傷はすでに血が止まっていた。
「絶対に奴は倒す。」
かつてないほどの怒りや憎しみによって、俺はかつてないほどの力を操る身になった。




