第49話 ある時はエビの監視員、ある時は臭いチェッカーの男性利用者、ついに変態疑惑まで浮上した話
お久しぶりです!
東雲明です。
最近すっかりAIイラスト遊びに夢中になっておりました。
いや、だって楽しいんですよ。
龍夜はかっこよくなるし、ミユウは神々しくなるし、背景は勝手に映画のワンシーンみたいになるし、作者の語彙力が「うおおおお!」で止まるくらいには楽しいんですよ。
その結果。
エッセイも本編も、アクセスが一桁代に落ち込みました。
やばい。
これはやばい。
AIイラストで遊んでいる場合ではない。
いや遊びたい。
めちゃくちゃ遊びたい。
でもこのままでは、書籍化どころか、
「夢だけはでっかく語る、ただのweb作家」
として一生が終わってしまう。
なんかもう肩書きだけ見ると、かなりしんどい人です。
しかも本人は本気で「いつか受賞のお知らせLINEを彼氏に送りたい」と思っているので、救いようがありません。
読者さんも、最近東雲さんからの笑いと感動の供給が少ないと思っている――かどうかは分かりません。
もしかしたら普通に忘れられているだけかもしれません。
やめろ。
自分で言ってて心に刺さる。
というわけで、ここはひとつ原点回帰。
AIイラストに頼らず、己の職場ネタで勝負することにしました。
そう。
今日は、わたしの職場にいる、ちょっと変わった男性利用者さんのお話です。
もちろんプライバシー保護のため、名前やイニシャルなどは伏せます。
というか、この人の場合、名前を伏せても肩書きだけで強すぎる。
ある時は、エビの監視員。
そしてある時は、臭いチェッカー。
もうこの時点で情報量が多い。
エビの監視員って何?
臭いチェッカーって何?
職業欄に書いたら、役所の人が三度見するやつでは?
我が社では現在、「とてもくさい臭いを徹底的に除去する強力洗剤」を作って販売するお仕事をしています。
見かけたら買ってね。
いや、さらっと宣伝を挟みましたが、これがなかなかすごいんです。
わたしは最初、この「とてもくさい臭いを徹底的に除去する強力洗剤」というキャッチコピーを見た時、正直こう思っていました。
またまたぁ。
大げさな宣伝文句でしょ?
「驚きの洗浄力!」とか、
「今まで落ちなかった汚れが!」とか、
「主婦もびっくり!」とか、
そういうテンションのやつでしょ?
実際は普通なんでしょ?
ところが、臭いチェッカーの彼は違いました。
完成した洗剤を前に、彼はとても真剣な顔で一言。
「洗剤もとても臭いですよ」
待って。
それ、商品として大丈夫?
臭いを消す洗剤が、まず本人から臭いを放っている。
なんという自己矛盾。
なんという前衛芸術。
敵を倒すために、自分も敵になるタイプの洗剤ですか?
毒をもって毒を制す、みたいな。
臭いをもって臭いを制す、みたいな。
いや、制せてるのかそれ。
しかもそれを冷静に指摘する彼。
さすが臭いチェッカー。
この人の鼻は信用できる。
少なくとも、わたしよりは確実に職人です。
エビの様子を見守り、
洗剤の臭いを判定し、
会社の平和を陰から支える男。
何者なんですか、あなたは。
もはや職場の人というより、地味に世界観を背負ったサブキャラです。
主人公の横にいると、妙なタイミングで核心を突くタイプ。
「この洗剤……臭いですね」
その一言で会議室の空気が止まる。
いや、会議してないけど。
そんな彼が、また今日もやってくれました。
事件は、今日起きました。
本日の仕事は、ワンピースを畳む作業。
ワンピース。
それは女性にとって至高の宝。
かわいい。
ひらひら。
ふわふわ。
一枚で決まる。
着るだけで気分が上がる。
なお作者は、着こなしより先に原稿の締切で息切れするタイプです。
そんなワンピースを、みんなで畳んでいた時のこと。
彼が、じっとワンピースを見つめました。
その目は、いつものエビ監視の目でもあり、臭いチェックの目でもありました。
職人の目。
プロの目。
いや、何のプロかは知らない。
そして彼は、ぽつりと言いました。
「……着てみたい」
その瞬間。
職員、爆笑。
会社、爆発。
わたし、エッセイのネタをゲット。
いやもう、早かったです。
笑いが発生する速度がすごかった。
たぶん空気中に火薬でも混ざってました。
誰かが笑った瞬間、職場全体がドカンです。
しかも本人が妙に真顔なのがまたずるい。
冗談なの?
本気なの?
ファッションへの興味なの?
ただの好奇心なの?
それとも、エビの監視員として新たなステージへ進もうとしているの?
分からない。
何ひとつ分からない。
ただひとつ確かなのは、彼の一言でその場の空気が完全に持っていかれたということです。
強い。
強すぎる。
普通、職場でワンピースを畳んでいて「着てみたい」はなかなか出てこない。
わたしだったら、せいぜい「かわいいですね」くらいです。
いや、それすら言うか怪しい。
心の中で「このワンピース、ミユウに着せたら似合いそう」とか思って、また創作に持ち帰るだけです。
でも彼は違う。
声に出す。
しかも真顔で。
これはもう、エッセイ作家としては拍手するしかありません。
ネタの神様が、作業台の上にワンピースを置いて、さらにそこへ彼を配置してくださった。
ありがとうございます。
今日の原稿、いただきました。
しかし考えてみると、我が社は本当にネタの宝庫です。
以前のわたしは、正直ちょっと思っていました。
毎日同じような作業で、地味だなぁ。
何か面白いこと起きないかなぁ。
ところがエッセイを書き始めてから、見える景色が変わりました。
エビを監視する人がいる。
洗剤の臭いを真剣に判定する人がいる。
ワンピースを見て「着てみたい」と呟く人がいる。
あれ?
ここ、普通の職場じゃなくて、ネタの直売所では?
しかもすごいのは、みんながなんとなく分かってくれているところです。
「あ、東雲さん、今ネタ拾ったな」
みたいな空気がある。
やめて。
バレてる。
わたしはちゃんと仕事をしています。
していますが、心の中では同時にメモ帳を開いています。
今の一言、使える。
今の空気、いける。
今の爆笑、エッセイになる。
もはや職場に出勤しているのか、取材に行っているのか、たまに自分でも分からなくなります。
でもありがたいことです。
ネタみたいな人で溢れている。
ネタを探して歩いている作家がいる。
そして、それをなんとなくみんなが知って、笑ってくれる。
なんて素敵な会社なんでしょう。
仕事は地味でも、日常は地味じゃない。
むしろ濃い。
濃すぎる。
エビ、洗剤、ワンピース。
この三つだけ並べても、何の話か分からない。
でも実際にあった話なんです。
世の中、創作より現実の方が強い時があります。
今日の彼は、エビの監視員でもあり、臭いチェッカーでもあり、ワンピースに心を奪われた男でもありました。
肩書きが増えすぎて、名刺に入りません。
そしてわたしは思いました。
本編のPVが落ちても、エッセイのネタはまだ尽きていない。
AIイラストに夢中になっても、現実はちゃんと笑いを供給してくれる。
職場は今日も平和です。
ただし、ひとつだけお願いがあります。
頼む、我が社。
「とてもくさい臭いを徹底的に除去する強力洗剤」を売るのはいい。
売るのはいいんだけど。
臭いチェッカーに、
「洗剤もとても臭いですよ」
と言われる商品を作るのは、そろそろやめてくれ。
今回もお読みいただきvery very thanks‼︎です。少しでもおもしろいと思われましたら、評価、ブクマ、感想くださると泣いて喜びます。




