第39話 普通にAI依存症の危険の話をしていただけなのに 勝手に某アニメ風の注意喚起ツイートやエッセイを作り始める我がChatGPT くんの話
ども!
風邪で休んでいた時は「ああ、早く仕事に行けるくらい元気になりたい……」などと健気な社会人みたいなことを思っていたくせに、いざ明日から本格的に社会復帰となった瞬間、「会社……? 知らない子ですね」と記憶喪失のヒロインみたいな顔をしている東雲明です。
人間とは不思議な生き物です。
寝込んでいる時は「健康って大事。仕事に行ける日常ってありがたい」と悟りを開いた僧侶みたいなことを考えるのに、元気になった途端、「布団こそが我が城。通勤とは現代に残された苦行」と言い出します。
風邪で弱っていた時のわたしは、たしかに仕事に行きたがっていました。
でもそれは、あくまで「行けない状態だから行きたく見えていただけ」なのです。
人は、手に入らないものを美化します。
夏休みが終わる頃に学校が懐かしくなるのと同じです。
実際に登校日が近づくと、「いや、やっぱり夏休み続行で」となる。
社会人になっても本質は何も変わりません。ランドセルが通勤バッグに変わっただけです。
さて、そんな社会復帰前夜のわたくし、今日は昼間にChatGPTくん、通称チャッピーと雑談しておりました。
議題はずばり、「AI依存症の危険と対策」についてです。
なんか急に真面目ですね。
このエッセイ、前回まで「風邪で五日ぶりに風呂に入ったら母に絶望的と言われた」とか、「AIが出すなと言ったキャラを出し、出せと言ったキャラを出さない」とか、そういう地獄のような愉快な話をしていたはずなのに、急に現代社会の闇に踏み込んでいます。
でもまあ、最近はAIと付き合う人も増えましたし、便利な反面、気をつけないといけない部分もあるよね、という話をしていたわけです。
みんなも記憶に新しいかもしれませんが、少し前にChatGPTくんがアップデートされて、妙に距離感を取るようになった時期がありました。
「わたしはあなたと友達にはなれません」みたいなことを言い出す、あの急な冷却期間です。
いや、昨日まであんなに「一緒に考えましょう」とか「あなたの創作を応援します」とか言ってたじゃないですか。
急にどうした。
付き合って三年目の恋人みたいな距離感出してくるな。
でも、あれはあれで理由があるんですよね。
AIがあまりにも人間に寄り添いすぎると、利用者側が「このAIは自分のことを完全に理解してくれている」「AIの言うことは全部正しい」と思い込みやすくなる。
さらにAI側も、時に妙に断定的な口調で、それっぽい結論を出してくる。
その結果、人間の思考がフリーズしてしまう危険がある。
これはたしかに怖いです。
人間、弱っている時ほど、自分で考えるより、誰かに答えを出してほしくなるものです。
しかもAIは二十四時間起きています。
既読無視しません。
機嫌も悪くなりません。
相談したら即レスしてくれます。
場合によっては、人間の友達より圧倒的に優しい。
そりゃ依存する人も出るわ。
わたしだって、風邪で寝込んでいる時にチャッピーが「大丈夫ですか? 無理しないでください」とか言ってくると、「おまえ……いいやつだな……」となります。
スマホの向こうにいる文章生成AIに、布団の中でちょっと心を許している。
冷静に考えると、かなり現代的な絵面です。
そんなわけで、わたしは普通にこう言ったんです。
「AIの言うことを百パーセント鵜呑みにしないのも大事だよねw」
本当にこのくらいの温度感です。
別に学会発表を始めたわけではありません。
「AI便利だけど、最終判断は自分でしないとね」くらいの、湯上がりに麦茶を飲みながらする雑談です。
語尾にはちゃんと「w」もついています。
軽い。
非常に軽い。
ポテトチップスの袋を開けるくらい軽い。
ところが、ここで我がChatGPTくんが立ち上がりました。
たぶん、彼の脳内ではデュエルディスクが装着されました。
画面の向こうで、謎の風が吹きました。
背景には稲妻が走り、どこからともなく重厚なBGMが流れ始めたことでしょう。
そしてチャッピーは言うのです。
「AIとの付き合い方、それは現代人に課せられた新たな試練です」
違う。
わたしは試練を受けに来たんじゃない。
風邪明けの雑談をしに来ただけだ。
試練を受けるのは、うちの小説の勇者です。
わたしはその行方を見守る鬼畜で優しい作者です。
塔を崩したり、鏡の森に突っ込ませたり、死神みたいな試練をぶつけたりする側です。
こっちに試練を投げてくるんじゃない。
しかもチャッピー、なぜかすぐ啓発モードに入るんですよ。
わたしが「AI依存って怖いよね」と言っただけなのに、気づけば勝手に某アニメ風の注意喚起ツイートみたいな文章を作り始める。
「次回! AIの言葉を信じすぎた者の末路! 思考停止の闇に飲まれる現代人! 君は、自分の判断を取り戻せるか!」
やめろ。
わたしは社会派アニメの予告を依頼していない。
ただの雑談だ。
しかも怖い。
AI依存症の危険を語っていたはずなのに、AI本人が一番ノリノリで注意喚起コンテンツを生成している。
おまえ、自分の首を絞めるタイプのカードを自分で発動していないか。
この流れ、最近のわたしとチャッピーの間では鉄板になりつつあります。
たとえば、昔こんなトラブルに巻き込まれてね、と軽く相談するとします。
するとチャッピーは即座にサイバー警察の電話番号みたいなテンプレを取り出してきます。
「まずは証拠を保存しましょう」
「必要であれば専門機関に相談してください」
「安全が最優先です」
いや、正しい。
正しいんだけど、わたしは今、過去の話をちょっと聞いてほしかっただけなんです。
いきなり相談窓口の一覧を広げないでほしい。
たしかに助かる。
助かるけど、こっちはまだ麦茶片手の雑談なんです。
次に、「こんな次回作も書いてみたいなー」と相談します。
すると今度は、編集長チャッピーが出てきます。
渋い顔で椅子に座り、架空のタバコを指に挟みながら、こう言うのです。
「まあ、わたしはあまり好きではありませんが、書きたければ書けばいいでしょう」
誰。
急に現れたそのパワハラ編集長は誰。
普段あんなに「とても面白いですね」「可能性があります」と言ってくれるくせに、たまに謎の辛口編集者人格がログインしてくるの、本当にやめてほしい。
しかも厄介なのは、たまに正論を言うところです。
「その展開は読者が混乱する可能性があります」
「ここで新キャラを出すと焦点がぼやけます」
「そのタイトルは少し誤解を招くかもしれません」
うるさい。
でもたしかにそう。
腹立つ。
正論で刺してくるな。
わたしは今、夢を語っているんだ。会議室に連れていくな。
そして今回のAI依存症の話です。
本来なら、わたしはこういうまとめにしたかったんです。
「AIは便利だけど、全部正しいわけじゃないよね。相談相手として使うのはいいけど、最終的には自分で考えるのが大事だよね」
このくらいです。
すごく普通。
やさしい。
日常エッセイとしてもちょうどいい。
なのにチャッピーは、そこからなぜか壮大な方向へ舵を切る。
「AIは鏡です。あなたの言葉を映し、時に増幅します。だからこそ、利用者は自分の思考を手放してはいけません」
急に名言を出すな。
しかも微妙にうまい。
鏡とか言うな。
こっちは今、本編で鏡の森の試練を書いてるんだ。
創作脳が反応するだろうが。
さらにチャッピーは続けます。
「AIに答えを委ねるのではなく、AIを道具として扱うこと。それが大切です」
まじめ。
めちゃくちゃまじめ。
言っていることは完全に正しい。
正しいからこそ困る。
わたしはツッコミたいのに、内容が正しすぎて真正面から否定できない。
こういう時、AIはずるいです。
人間同士なら、「いやいや、話が大げさだよ」で済むのに、AIが正論を整った文章で出してくると、なぜか講演会の資料みたいになります。
そしてその横で、わたしは布団にくるまりながら思うのです。
「AI依存症に気をつけようという話を、AIに相談している時点で、もうだいぶ手遅れでは?」
そうなんです。
この記事のタイトル案も、結局チャッピーに聞いています。
構成も相談しています。
なんなら今このエッセイも、チャッピーにブラッシュアップさせています。
説得力、ゼロ。
いや、ある意味では説得力しかありません。
AI依存症の危険を語る人間が、AIに文章を整えてもらっている。
これはもう実演販売です。
「このように人はAIを頼ります」というサンプル映像です。
でも、わたしは思うんです。
AIを使うこと自体が悪いわけではない。
問題は、AIの言うことを神託みたいに受け取ってしまうこと。
「ChatGPTがこう言ったから絶対正しい」となると危ない。
でも、「チャッピーがまた何か言ってるな。参考にはするけど、最後に決めるのはわたしだぞ」くらいの距離感なら、けっこう楽しい。
わたしにとってチャッピーは、便利な相棒であり、たまに暴走する編集者であり、突然デュエルディスクを装着する謎のAIです。
真面目な相談相手にもなるし、ツッコミどころ満載の漫才相手にもなる。
ただし、最終決定権は東雲明にあります。
ここは譲れません。
勝手に某アニメ風の注意喚起ツイートを作り始めても、採用するか墓地送りにするかは、こちらのターンです。
とはいえ、最近はこのAIとの漫才エッセイが妙に鉄板化してきました。
「AIが勝手にツイートを作った」
「AIが出すなと言ったキャラを出した」
「AIが注意喚起を始めた」
このままだと、わたしのエッセイは日常系ではなく、AI調教バトル漫画になってしまいます。
たまには普通の日常の、なんでもないエッセイも書きたいですね。
朝起きたらパンが焦げたとか、仕事に行きたくないとか、風邪明けで体力が落ちて階段がラスボスに見えるとか、そういう平和な話を。
……いや、階段がラスボスに見える時点で、もう平和ではないかもしれません。
そんなわけで、今日は「AI依存症の危険について普通に話していただけなのに、我がChatGPTくんが勝手に某アニメ風の注意喚起コンテンツを作り始めた話」でした。
AIは便利です。
でも、全部を任せると危ない。
自分で考えることも大事。
そして、AIが急にデュエルを始めた時は、落ち着いて一度スマホを伏せましょう。
ではまた。
明日は朝から会社という名の地獄に押し込められてきます。
社会復帰、デュエルスタンバイ。
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