妹と危ない薬草採集
「お兄ちゃん、暇ですねえ……」
「いいことじゃないか……」
俺たちは金銭の余裕が出来たのでのんびりと家で駄弁っている、贅沢な時間の使い方だとは思う。
のんびりと優雅な午後を過ごしていると、家の外が慌ただしくなってきた。
多分なんか出たんだろうなあと思いつつギルドカードをポケットに入れたまま取り出さないように気をつける。平和というのは不断の努力によって実現するのだ。
ところがそんなことは全く気にすることもない空気を読んだギルドカードが音を鳴らす。
コイツ音が出るんだな……
「普通の呼び出しなのでいかなくてもそれほど文句言われないとは思いますが、せっかくだからいきましょうか」
「やれやれ、どうにも運命というものは俺を離してくれないらしい、災難な体質だと思うよ」
「そういう星の下に生まれたんでしょう」
ミントはバッサリと俺の悩みを切り捨てる。きっとそれが宿命というものなのだろう。
神がいるなら随分とハードモードに試練を与えてくれるものだな……
「俺たちは何をやらされてるんだろうな?」
ミントは事もなげに言う。
「きっと運命を粛々とこなしていくためでしょう」
その絶望的な諦めにたどり着きたくは無かったのだがな。
そうこうしているうちにギルドについてしまった。
面倒なことを想像しながらギルドのドアを開けた。
「待ってましたよ! お二人さま!」
セシリーさんが笑顔で言う時は大抵ロクなことではない。
「で、何のご用なんですか? それなりに厄介なことなんでしょう?」
「私たちを呼んだからにあうドラゴンや魔王軍幹部クラスの敵なんでしょう?」
俺たちの問いにセシリーさんは珍しいことを言った
「実は薬草採集の依頼を受けて頂こうかと……」
ミントは食ってかかる。
「薬草採集! 私たちが出るまでもないじゃないですか!」
「それが今回は少々イレギュラーな事件でして……」
「何か理由があるんですね?」
むしろここまで言って何もないという方があり得ないだろう。
「実は……その植物なのですが……人間を襲うのです」
「植物が人間を!?」
セシリーさんも静かに事情を伝える。
「はい、時々薬草採集から帰ってこない人がいるんですが……どうやらその栄養が豊富なのを覚えてしまったらしく、しかもちょうど魔力が充満していた時期なので……」
間の悪いことに魔物化した植物に何人かやられたらしい、煩わしいころになったな……
「まあ所詮薬草の副産物程度なのが気に食わないですが受けてあげましょう」
「ありがとうございます!」
こうして俺たちは討伐にいくハメになったのだった。
――
「お兄ちゃん……逃げちゃダメですかね?」
「ダメに決まってんだろ! 誰かさんが堂々と引き受けたんだからな?」
目の前に広がる植物たちは人間を取り込みおぞましい動く植物へと変容していた。
「お兄ちゃん! 炎魔法付与を!」
「はいよ」
――
魔力「S」
スキル「炎系魔法」
――
幸い相手が植物ならこの程度でも十分だろう。大したことがない相手なのが幸いだ。
「お兄ちゃん……アレを倒すんですか……」
「まあ汚れ仕事だわな」
敵として存在している植物は所々に吸収しきれなかった人間のパーツがはみ出ている。
もちろんその全てはもう死んでいるわけで、アレを傷つけたところで何の問題も無い。
「お兄ちゃん? 神聖魔法くれません亜k?」
「ああ、いいぞ」
俺はミントに神聖魔法を付与してこの植物の倒し方を考える。
「バニシング・レイ」
植物は動きを止めてその場に倒れた。
「一発か……?」
「お兄ちゃん、食虫植物ってあんまり虫を捕ると枯れるんですよ? つまり中の人たちを成仏させればこの変異種は自力で動くしか出来ないんです」
「へえ……知らなかったな」
「お兄ちゃんも知らないことがあるんですね!」
そう言って笑う妹はどこか犠牲者達を悼んでいるようだった。




