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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹はバーサーカー

 俺の妹は脳みそを筋肉西は煎れている、この場合の筋肉とは力全般のことを指し魔力による攻撃力も含んでいる。要するに力こそ正義という信念を持っているようだ。


「お兄ちゃん! 魔物が出ましたよ! バフお願いします!」


 俺はいつものように妹バフをかける。


――――

力「A+]

体力「AA]

魔力「B」

精神力「A]

素早さ「A」

スキル「なし」

――――


 スキルはを付与すると破壊の限りを尽くすので力のみで最小限の力をアップさせる。魔力は魔法を使わないので控えめだ。


「よっし! お兄ちゃん! ひと狩り行ってきます!」


 そう言ってブラッドベアに突撃するミント、初めての頃なら直視できないような惨状を想像してしまうところだが、今となっては筋肉で解決するのが目に見えているので眺めることにしている。


 ミントが魔物の大きな拳を素手で軽々と受け止め、そのままつかんだ手をひねって魔物の巨体を軽く転倒させる。


 倒れたところでマウントポジションを取って力に任せてグーで殴り続ける。はじめの頃はビクンビクンしていたブラッドベアだったがすぐに意識を失ったのか動かずサンドバッグ状態になっている。


 しばらくして動くことのなくなった息絶えた魔物を俺が妹ストレージに放り込んでしまっておく。今回はこの魔物の討伐が目的ではないので素材としての毛皮や肉を売るために保存しておく。


「相変わらず強いなあ……」


 まさに力があればどんな難敵にも余裕で勝ってしまう、そんな力を持ってしまった妹に畏怖と感謝を禁じ得ない。俺達兄妹がいれば実質無敵に近くなる。


 そんな独り言を言っているとミントが俺の方にツインテールを揺らしながら近寄ってくる。


「おにーちゃん! 今日もバッチリですね!」


 そう言うミントに対して根本的な問題を告げる。


「そもそもゴブリンの討伐依頼が目的じゃん? こんな大物狩ってどうするんだよ……」


 これで次の被害者が出なくなるので無意味ではないがコレを狩ってもギルドで素材買い取りをしてもらえるくらいで実力の指標には関係ない。もし関係させてしまうと必要以上の獲物を探す連中が増えてしまうので突発的に倒した場合はギルドの貢献度に影響がない。


 そしてゴブリンの巣はとうに壊滅していた。ミントが木製の葉っぱを重ねた巣を殴り飛ばして一掃していた。

 妹は敵に対しても気分屋で、基本的には情はかけない。サーチアンドデストロイが基本スタイルだ。


「お兄ちゃん、時には無駄なことだって起きる物ですよ。想定外にも対応できるようになるべきでしょう?」


 なお、さっきブラッドベアに襲われていたのはコイツがゴブリンの巣を根絶やしにしたときに木製の巣を思い切り破壊したのでその音に驚いて出てきたのだが……


 ちなみにゴブリンの方は討伐報酬は出ても素材としての価値はないに等しい、だから討伐の証拠として鼻をそぎ取って妹ストレージに入れている。


「お前はもっといろんな事を想定するべきだと思うがな」


 そうは言っても不服そうにしているミントだが、負けるとは思っていなかった。いなかったのではあるが危険性はできるだけ排除しておきたい、そんな兄心を気にする様子は全くなかった。


 そうしてゴブリンが営巣していた森からギルドへと帰り道を歩く、ギルドの皆もゴブリン討伐くらいで俺達が死ぬことはないだろうと温かく送り出してくれる程度の信用は得ていた。なお、その時のギルドの一部では俺達が死ぬことはないだろうがさすがにゴブリンが気の毒だという声もあったらしい、さすが俺の妹、破壊神のような扱いを受けている。


「すべては計算通りなのですよ? お兄ちゃんがバフをくれるのも分かってますし、ここいらで出てくる最強クラスのさっきの熊くらいどうにかなると分かってたんですよ」


 小さな体にバフを大量に受けて敵を倒す残虐ショーは町の中では起こらない、さすがにその程度の空気は読めているようだった。


 そしてようやくギルドに帰り着いた、討伐作業より移動時間の方が長くて面倒なのは贅沢すぎる悩みだ。


「あら、ユニさん、ミントちゃん、もう討伐は終わったんですか?」


 俺達をいつも通りで迎えてくれるセシリーさんだった、さすがにもうこの程度の依頼で問題を起こすとは思っていない程度には信頼されているようだ。


「ついでに討伐した魔物もいるんで素材売却はできますか?」


 俺がそう問うとセシリーさんの顔がピシリと凍り付いた。


「ちなみに……何を狩ったんですか?」


 小声で問いかけてくるので俺も小声で今日のかわいそうな熊について話す。ますます顔が動かなくなってから「裏へどうぞ」と案内されてしまった。


「まーたお前らか……? 今度はどんな化け物を討伐してきたんだ?」


 俺は妹のストレージからブラッドベアの死体を取り出す、素材業者も乾いた笑みを浮かべている。


「ブラッドベアです! そこそこの値がつきますよね?」


 ミントがそう訊くと好奇心と恐怖の混じった声で俺達に質問をする。


「コイツ動かないよな? まだ死にたてみたいだし、切りつけた後も燃やしたり凍らせた後もないんだが?」


「それはもう、私の正拳できっちり締めましたからね! 傷がつくと買値も下がるじゃないですか?」


「いやまあ……それはそうなんだが……嬢ちゃん怖いな?」


 初回ではないので素材報酬も比較的スムーズに終わっていく、初回はどこかから盗んできた死骸じゃないかと疑われて揉めに揉めて、ミントの多少の実力行使でその実力を証明していた。


「もう大概のことでは驚かないがな……そのうちドラゴンの死体でも持ってきそうだな」


「やだなーそんなことしませんよ」


 ドラゴン相手だと消し飛ばして買い取ってもらえる素材も残さなかったからな。


「じゃあこの紙に査定書いといたから受付で買い取り金をもらっといてくれ」


 そう言って買い取りが借りのひとは査定の紙を渡す、チラリと目をやる。


 ――

 「状態」大変いい

 「鮮度」不自然なほど新鮮

 「買い取り査定」 金貨五枚

 ――


 未だにこのストレージについては誰にも教えていないが、いつもの事なので聞いてくる人もいなかった。


 そうして受付に再び行って査定の紙を渡す。


「さすがですねえ……あの人、魔物の買い取り査定にうるさいので有名なんですが」


 そんな人を紹介したのか……あれだけの大型だと買い取りにも専門的な知識が必要なのだろう。


 そうして金貨を受け取り俺達は帰途についた。


「お兄ちゃん、ゴブリンの報酬の五倍の値段ですね」


「そうだな、依頼ってなんなんだろうな……」


 ゴブリンの巣は大規模になっていたのに殲滅して金貨一枚、熊が金貨五枚、目標よりもついでの獲物の方がよほど高値だった。


「お兄ちゃん、もう熊狩りだけで生計を維持できそうな気がするんですが?」


「いやだよおっかない……こういう事でもないとわざわざ戦わないよ」


「お兄ちゃんは気が小さいですねえ……私に対しても気が小さいのはどうかと思うんですけど……」


「なんだよ?」


「いいえ、なんでもないですよ!」


 そう言ってミントは俺の腕に自分の体を絡めて二人で一緒に帰り道を歩いたのだった

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