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ジョブ「お兄ちゃん」ってなんですか? 謎のジョブを与えられて困惑していると妹が最強になりました  作者: にとろ


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妹ときょうだいげんか

「お兄ちゃんのバーカ!」


 その後威力の低いミントのあおりに俺は乗ることはなく無言で手元の本に目を向ける、今何をしているか? 要するに兄妹喧嘩だ。


 昔……父さんと母さんが生きていた頃はよく喧嘩になっていたけれど、二人がいなくなってから久しく喧嘩をすることはなかった。


 ミントは俺が守らなくちゃならないし、喧嘩なんてしているヒマは無かった。二人で生きるだけで精一杯な生活だったんだ。


 きっかけはミントが楽しみにしていたプリンを俺が買ってこなかった、些細なことだけれど、俺は多分コレはきっかけに過ぎなくて今までつもりに積もった物が噴出して前述の語彙力の低い罵倒につながったんだろう。


「はぁ……」


 ため息をついてもどうにもならないが、兄妹関係というのは難しい物だ。時にはこういうことだって起きる、それが「普通」のはずだ。


「しかし……きっかけが無いとなあ……


 ピコーン

 ――

 スキル「妹への精神干渉」が一時的にアンロックされました

 コレは非常時用の措置です

 ――


 どうやらコレを使えということらしい……しかし、妹への精神干渉か、いいのか?


 兄妹間でも精神干渉は超えてはならない一線のような気もするのだが……とはいえ精神干渉を行う魔物はいるし、それを攻撃手段にしている魔導師もいる。とりわけ使ってはならない物ではないといえる。


 考えに考えた末、結局家に帰ってきてしまった……


「お兄ちゃん!」と明るい声で出迎えてくれるんじゃないかと期待しながらドアを開けた、残念だがその期待はやはり無駄な物となってしまった。


「ふぅ……」


 さて、ミントは部屋にいるのだろう、さて精神干渉を使用するべきか?


 ――

 精神干渉を使用しますか?

 →はい

  いいえ

 ――


 このシンプルな二択に果てしなく悩んでしまう、使えば安易な解決を行えるのだろう。しかしそれに頼ったら、次に同じ事が起きたときも同じように安易な解決方法に頼ってしまうだろう。それはよくない、何が悪いとは言えないし感覚的な問題だがそれはやってはいけないことだと思う。


 ここ数年、出かけて帰ってきたときにミントが家にいれば必ず明るい声で出迎えてくれた。それがついつい当たり前になりすぎてしまって甘えていたのだろう。


 俺はミントの部屋の前に立ち、ノックをしてみる。


 コンコン


 扁桃は帰ってこない、ただ部屋の中には気配がある。


 ――

 精神干渉を使用しますか?

 →はい

  いいえ

 ――


 俺は脳内の選択肢から苦渋の思い出「はい」を選択した――途端に意識がピンク色の奔流に飲まれていった。


 あれ? ここはどこだ? 確か俺は……


 辺りを見回してみる、周囲に散らばるのは俺とミントが移った思い出の欠片だ。少々欠片と呼ぶには数が多すぎる気がしないでもない、足の踏み場もないほどに散らばっている。


 そして目の前には見慣れたいつもの自宅が建っている。小さな頃の姿のミントが誰かとにこやかに遊んでいた、いや、遊び相手は幼かった頃の俺だ。


 俺達は結局一歩もこの頃から進んではいなかったのだろうか? いくつもの成長を重ねていたと思ったのだがミントの精神は幼い頃のままなのだろうか?


「うぅ……えっぐ……ぐす……」


 何も気にせず遊んでいる幼い俺とミントを家の陰から泣きそうな顔で眺めている顔があった。それは確かに見慣れたもので……


「何やってるんだ、ミント?」


 ビクッと肩をふるわせて見慣れた方のミントは気がついたようだ。


「おおおおおお兄ちゃん!? なんでここに!? 私の夢なのに……あそこにお兄ちゃんがいるのに!? 二人目!?」


 驚いてパニックになっているミントに俺は静かに語った。


「なあ、俺達っていくつも修羅場をこなしてきたよな?」


「そうですね。私の心の中でまでお兄ちゃんはお兄ちゃんをやってるんですね?」


「ああ、俺は確かにお前の「お兄ちゃん」だからな」


「はあ……もうちょっとこの幸せな光景を見ていたいですね」


 心底目線の先の少女をうらやましそうに見ながら言う。


「過去は過去だぞ? 確かにあの頃は汚れた物を知らなかった、いい頃だったかもしれないが俺はこの頃からの積み重ねだって十分に大事だと思ってる」


「私の心が生み出した割には本とのお兄ちゃんみたいなことを言うんですねえ……?」


 ため息をつくミントだがこのままにしておくわけにはいかない。


「なあ……今の俺達の関係はそんなに嫌か?」


 ミントも自身が問いかけているのだとすっかり勘違いをしているようだ。


「嫌いではないですよ、でもお兄ちゃんが昔ほど私と一緒にいてくれないのが寂しいだけです」


「じゃあそれでいいじゃないか? 嫌いじゃない、きっと俺だってそう思ってるだろうな」


 嘘と言えば嘘だ、そう思っているが「きっと」ではなく「実際」そう思っている。


「気楽ですねえ……私の中のお兄ちゃんは……」


「それはそうだろう、だって俺達は兄妹なんだからな」


 シンプルな答えを返すとミントはぽろぽろと涙をこぼしだした。


「うぇえぇ……だってお兄ちゃんにひどいことを言っちゃったんですよ? お兄ちゃんが私を嫌いになっちゃってますよ」


 面倒な奴だなあ……まさに俺の妹だな……苦笑しながら俺は泣くミントを慰める。


「ほら、いつまでも考え込んでないで起き上がってみろ、きっとお兄ちゃんが晩ご飯とか作ってくれてるぞ」


 ――意識が途端にブラックアウトしてミントの悲鳴が上がってきた。


「どうした! 何があった!?」


 俺は思わずミントの部屋へ飛び込む。ミントはそこでガタガタ震えていた。


「お兄ちゃん!? 料理作ったりしてませんよね!?」


 なんだよ急に……


「いや、作ろうかと思っていたところだが……」


「私が作ります! 私が作りますからお兄ちゃんはじっくり待っててください!」


 迫力に負けて俺は椅子に座ってミントが料理を作っている様子を眺めていた。


 コイツもなんだかんだでいろいろ心に抱えてたんだな……


「ねえお兄ちゃん?」


 ミントが突然俺に話しかける。その後の一言で兄妹喧嘩は終わったのだった。


「ありがとうございます!」


 ――

 「妹への精神干渉」が再びロックされました

 ――


 そう響いた声がそれはもう必要がなくなったことを教えてくれたのだった。

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