40話 グッバイ学園長
「いや、やらねぇよ」
たとえスランプになって賞金稼ぎを続けられなくても俺は別にどうでもよかった。そのためにちゃんと貯金はしているし、こんな体を張った仕事、そんなに長くやれる自信もなかった。
貯めた金で店をやるか農業でもやりたい。空きがあれば自警団で働きたいとも考えている。
俺はそういう部分、リアリストなのだ。で、出来ればミリアを嫁にもらって……
「はっ、それじゃつまらないわ。首輪をつけて四つん這いで市中を這いずり回してやっと初期スキルを1発使えるくらいになればいいのに」
「そこまでして賞金稼ぎ続ける必要性全く感じないんですが!!」
ミリアの恐ろしい未来予想図を聞かされたが即却下した。
「ふむ……」
学園長はしばらく俺達の顔を眺めて考え事をした後、こう言った。
「まぁ、おぬしのこのチームならばスランプに陥る心配は無さそうじゃな。いい仲間を持ったものじゃ」
「あぁ?まぁ……そうかもな」
納得できたような出来ないような気分だが、とりあえず俺を完全な変態に仕立て上げられなくて済んだので良しとするか。
「それより学園長、あんたは俺の同級生達に犯罪を促したり、元から腐っちゃいたが兵士団で色々と悪事に加担したわけだ。賞金首にこそなっちゃいねぇがジョンから捕まる可能性があるんじゃねぇか?」
「そうじゃな。むしろもう捕まっておる」
「それはどういう……?」
すると俺達のいる部屋のドアが外側からノックされた。ドアが開くと義賊軍の黒服がいた。
「もうお話し合いは終わられましたか?学園長殿、そろそろお時間です」
「あぁ、すまんのじゃ。そろそろ行くとするかの」
学園長は立ち上がり、部屋を出ようとしたが最後に俺達の方を向いた。
「またジョンが世話してくれるらしいから、楽しくなりそうじゃわい」
「なんだよそれ。今度俺の同級生達に悪さしたら……まぁ、犯罪をしない程度にアフターサービスしてやってくれ。じゃあな」
「ごきげんよう、学園長」
「さよなら、学園長。ありがとうございました」
俺達は学園長にお別れを言った。学園長はこちらを振り向きこそしなかったが手を振って部屋を出て行った。
取り残された俺達はどうすればいいのだろうと困惑していると、また別の黒服が現れて帰り道を案内された。
なんのために呼ばれたんだろう?学園長がジョンのところに行くのなら、義賊軍の本拠地で話せばよかったのに。それとも学園長は義賊軍の本拠地とは別の場所に幽閉されたりするのだろうか?
帰りの馬車の中、そんな事を考えていたら、リッチーが話しかけてきた。
「『真の限定強化』か……面白そうだね」
「なんだ、リッチー?興味あるのか?」
「そうだね。僕の場合は、例えば『攻撃を受け続けて我慢すると力が溜まる』なんて自己暗示をかけたらうまくいきそうじゃないかな?」
「それ、ダメージ受け続けるなきゃいけないんだろ?それより『攻撃しようとするのを我慢すると力が溜まる』ってのは?」
「あー、そういうのもいいね!『何かを我慢して力を溜める』って自己暗示をかけよう!」
「そもそも、そんな簡単に自己暗示なんて出来んのかね?」
「アハハ、確かにね。今後戦いの時は意識してみようかなぁ」
学園長に具体的にどうやって自己暗示をかければいいか一応聞いておくべきだったかもしれない。
「ポンパはこれからどうすんだ?」
「俺は、ジョンのところで義賊軍でもやろうかなと思っているよ。他にやりたい事もないしね」
「確かに仕事も安泰してそうだよな」
馬車が止まったところはまたもや義賊軍の本拠地だった。どうやらもうしばらくここに厄介になれるようだった。
ポンパは受付に義賊軍で働かせてもらえないか話をしてくるとの事で、ここで別れることにした。
「カムイの賞金も入ったし、物価の高い王都での宿代と食事代もタダだし、ここは甘んじて好意を受ける事にしようぜ」
「奇跡的に意見が同じよ。不愉快だから発言を撤回しなさい」
「無茶苦茶言いやがるな」
「王都で買い物とかするのもいいかもね」
「あぁ。なら明日から3日間は自由行動にするか?4日目からは旅に必要なものをみんなで手分けして買うようにしようぜ?」
「いいね。僕は旅の途中で読む本と、実家へのお土産を買おうかな」
「偉いな。ならリッチー、俺の実家の分もなんかお土産買っててくれ!金は多めに払うよ。俺は昼間から飲んだくれてたいんだ」
「アハハ、了解」
「ミリアは何するんだ?」
「私は洋服が欲しいわ。なんなら荷物持ちをさせてあげてもいいわよ。ご褒美として私が洋服を選んであげるわ」
「なんで手伝わされたあげく嫌がらせまで受けなきゃいけねーんだよ!」
「あらそう?きっと喜ぶと思ったのに」
「ま、まぁ、荷物くらい持ってやるよ」
「あなただけでは頼りないわ。リッチー、時間があれば手伝ってくれるかしら?お駄賃はちゃんと渡すわ」
「ハハハ、かまわないよ。いざとなった呼んでおくれよ」
「俺の時と態度が違うんじゃねぇか?」
「そうかしら?くだらない事言ってないで靴の一つでも舐めなさい」
「オーダーがエグい」
そうして明日からの予定をみんなで話ながら夕食をとった。
真夜中、寝静まっていたが突然外から聞こえる大きな鐘の音で叩き起こされた。外を見ると、夜中にも関わらず王都の街が明るい。
「アレン様!大変です!」
窓の外を眺めていた俺にドアの向こう側からノックとともに黒服の声が聞こえた。
「入っても大丈夫だぞ。どうしたんだ?」
「ご就寝のところ申し訳ありません。実は先ほど王都にドラゴンが現れまして、街に被害が出ております」
「ドラゴンだって!?兵士団は何してやがったんだ?」
「兵士団は昨日の勲章の授与式のため、王都に集まっておりました事と、我々の粛正により連絡系統に影響がでていたようで砦の防衛を突破され、王都に攻め込まれたようです」
「あんな不正ばかりの士官共でも多少は役に立っていたって事なのか」
「組織としても脆弱なもので、無能な士官が権力を持ちたがり一極化していたようで、今回のように士官が居なくなった途端、何も出来なくなった烏合の衆と言ったところです」
「俺達の誤算は、奴らは俺達が思った以上に使えない組織だったというところかな。んで、俺達は何をすればいいんだ?」
そう訪ねられ、黒服が背筋を伸ばした。
「はっ!我々義賊軍並びにアレン様方に、王様から直々に討伐の要請が出ております!」
「えっ!?王様から直々に!?」
「はい。先日の戦いを見られており、是非ともと」
「マ、マジか……とりあえずリッチー達と相談してくる。すまないがミリアをリッチーの部屋に来るように伝えてもらてるか?」
「かしこまりました」
俺は先にリッチーの部屋に行ってミリアを待つ事にした。リッチーにも既に状況は伝えられていたらしい。ミリアにも別の黒服から状況は聞かされており、すぐにリッチーの部屋に来た。
「みんな、話は聞かされていると思うが、街にドラゴンが現れたらしいな。王様から俺達に直々に討伐の要請が出ているらしい」
「あぁ、そうらしいね」
「聞いたわ」
二人はそれぞれに返事をした。
俺は二人に向けて答えた。
「俺はこの依頼、降りるぜ」




