41話 ドラゴン討伐
「俺はこの依頼、降りるぜ」
俺は二人にそう答えた。
「そうだよね」
「は?二人とも何を寝ぼけているの?王様からの直々の要請よ?それを断るの?」
リッチーはすぐに返事をしたが、そのリッチーの返答を聞きミリアが反論した。
「確かに王様の要請ではあるし、兵士団の数を減らしたという点では俺達にもこの件の原因の一端はあると思ってる」
「じゃあなんで?そこまで分かっていて断るなんて相当アホなの?それともバカなの?」
「まぁまぁ、ミリア落ち着いこう。アレンには理由があるだよ」
リッチーがミリアをなだめようとした。
「ミリア、俺とリッチーは学校を卒業後にチームを組んだ。冒険者にも色々あるよな?」
「ん?えぇ、そうね」
「例えば、今回の様に依頼を受け村や街に被害をおよぼす魔物を討伐するハンター。他にも依頼を受けて薬草や宝物を発掘するトレジャーハンター。その他にも自分達で積極的に未知のダンジョンに巣くう魔物を倒し、新しいアイテムを見つけ出したり未開の地を切り開いていく冒険者」
「それと、私達のように賞金首を捕まえる賞金稼ぎね」
「あぁ、俺達が何故賞金稼ぎを選んだかわかるか?」
俺がミリアに問いかけたが、ミリアは少し考えて首を横にふった。
「俺の限定強化は基本、人相手じゃないとあまり意味がねぇ。そりゃ最初は魔物に向けてやったり、横で見ているリッチーに対して恥ずかしさを感じる事があるかもしれないが、そんな戦いはすぐに慣れちまう。それこそ学園長の様にスランプになるかもしれない」
「それに僕の限定強化も短期決戦向けだからね。何匹もの魔物相手や、時間差で何度も来られたら勝ち目が無いんだ」
「それで一番理にかなう賞金稼ぎ……というわけね」
「あぁ。ちなみにミリアはなんで賞金稼ぎを選んだんだ?」
「色んな街を旅するけど、基本的に依頼を受けても街を出なくて済むからよ。賞金首は街中にいるから。野山を駆け回るなんてごめんだわ、猿じゃあるまいし」
「お前の理由も相当ひでぇな」
しかし、女性らしい考え方なのかもしれない。野宿やダンジョンに籠もりっぱなしになるから不衛生になりがちなところがある。その点賞金稼ぎは日常生活の延長にあるもんな。
「まぁ、そんなわけで俺達がドラゴン相手に戦ってもそんなにいい戦いが出来るとも思えねぇ。他の魔物ならまだしも、ドラゴン相手に中級スキルで応戦したところで勝てるみこ……ブヘェア!!」
ミリアの突然の回し蹴を顔面にもろに食らった。
「……え?」
地面に倒れ、蹴られた頬を押さえてミリアを見る。痛みより先に「何故?」という気持ちでいっぱいだった。
倒れる俺にミリアは何も言わず太ももあたりや尻やらをバシバシ蹴ってくる。
「痛っ!えっ?なんで?え?いったぁ……!痛いって!」
理由も聞かされぬまま蹴られる。めちゃくちゃ痛いわけではないが、とにかく股間にだけは一撃をもらわぬよう、受ける側としても細心の注意を払う事に神経をとがらせた。
これはあれか?自分で答えを出すまで終わらない系のやつか?俺が弱気な発言をした事が悪かったのか?それとも王様の依頼を断った事が原因か?
「あ、あの……もしかして……」
「黙りなさい!」
どうやら違ったようだ。トドメと言わんばかりの蹴りを尻に叩き込まれて謎のお説教タイムが終わった。尻に痣が出来た気がする。
「な、何するんだよ?」
「あなた、状況が分かっているの?今この瞬間も王都はドラゴンによって焼かれ、破壊されているのよ!しかもドラゴンを止められる可能性があるのは私達しかいないの!王様は私達にしか頼る事が出来ないのよ!!」
これまで冷徹とすら思えたミリアだったが、ものすごい気迫だ。愛国心なのか。ミリアの熱のこもった説得に俺も思わず心を動かされた。
「弱気になってすまねぇ……無理だろうと、俺達の大切な王都だもんな。守ってみせるぜ!」
「本当にやるのね?!」
「あぁ、やってやるよ!!ドラゴンごときぶちのめしてやるぜ!!なぁ、リッチー?」
「そうだね。アレンがそういうなら僕もとことん付き合うよ!僕達は仲間だ!」
俺とリッチーがお互いの拳を合わせ、信頼を確認しあった。それを見たミリアが頷く。
「わかったわ。なら私の考えた作戦を伝えるわ」
「作戦か……いいね。最初を思い出すぜ」
「聞かせてもらえるかい?」
俺とリッチーが身を乗り出した。
「まずはドラゴンの方向へ向かいつつ、燃えた街の消化作業を行いなさい。そんなに丁寧じゃなくていいの。これ以上火事が大きくならないようにして、街の人達や義賊軍の魔導士が駆けつけた時に消火が楽になる程度よ」
「わかった。ならリッチーは避難誘導をしつつ、周囲を確認しながら火元を探してくれ」
「了解!」
「そうしながらドラゴンに近づいて行って、遭遇したら戦闘を開始すればいいんだな?」
「ええそうよ。難しいオーダーだけど、急ぎつつも出来るだけ時間を稼いで欲しいの」
「わかった。周りと連携しながらうまくやってみせるぜ。ミリア、お前はどうするんだ?」
「私はあなた達が時間を稼いでいる間に王様に会って報酬額を出来るだけ釣り上げてくるわ。街の被害も減らして、ドラゴンも倒すとなればふざけた額で依頼を請けるわけにはいかないわ。明日から私が王様に代わってこの国を支配するくらい搾り取るわ」
「お、お前火事場泥棒の手本みたいなヤツだな。まぁ、ドラゴン相手となるとミリアの出番は無さそうだけどさすがに盗人根性が逞し過ぎるだろ」
つべこべ言ってないでさっさと支度しなさい。
そう言うとミリアは黒服に馬車を用意させた。
「私は王様に直訴してくるから、あなた達は首尾良くやるのよ」
そう言ってミリアは馬車に乗り、王城へ向かった。
「さすがミリアだね。じゃあ、僕達もミリアが釣り上げてきた報酬をいただくために頑張らないとね!」
「あぁ、そうだな!」
俺は黒服に作戦を伝えた。手の空いた魔導士は街の消火に当たってくれ、と。
俺達はすぐに準備を整え、走りながらドラゴンのいるところまで向かうことにした。
ドラゴンまでの距離はおよそ10分といったところか。
消火作業もしながらだと20分くらいかかるかもしれない。
あいにく先ほどからドラゴンは移動はしていないようなので誰かが足止めもしているのかもしれない。
しばらく進むと街が燃えていた。3階建ての建物が建ち並ぶ住宅街があり、1つの建物の2階と3階部分が燃えていた。辺りに住人らしき人集りが出来ていた。
「みんな、危ないから下がっていてくれ。俺が火を消す!」
「な、中に子供がぁ……」
泣き叫ぶ母親と思われる女性が、周りの人達に取り押さえられていた。
「お子さんは何人で、どこにいるんですか?」
「一人よ!きっと3階にいるわ!お願い!助けて!」
リッチーは頷き、俺をチラリと見た。
「ちんこ!」
俺は水魔法でリッチーの体を水浸しにした。リッチーは息を止めジャンプして二階の窓から侵入した。
俺はその間に3階から出てこれるよう、見えている窓に水魔法で鎮火に努めた。
人が多い中で叫ぶってのもあってここから見える建物の火の勢いは弱まった。多分奥の方はまだ燃えているだろう。
すると3階の窓からリッチーが現れ、子供を抱きかかえて手を振っている。リッチーは俺に合図を送り3階から飛び降りた。
「ちんこ!!」
俺はリッチーの足元に強めの水弾を飛ばし、空中に足場を作った。リッチーはその水弾で3階からの衝撃を弱め、無事に着地した。周りから歓声があがった。
「ただの変態じゃねーぞこのにーちゃん!!」
複雑な気分だった。




