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39話 真の限定強化

「『限定強化』についてじゃ」


学園長の一言に室内の空気が一変した。


「『限定強化』って、どういう事だよ?学校でさんざんおそわったぜ?」


「うーん、正確には『真の限定強化』について、かな?もしくは『限定強化の真の意味』じゃな」


「『真の限定強化』!!?」


俺達が悩まされ続けた限定強化に続きがあったと言うのか。


「あぁ、そうじゃ。本当はみんなに教えた方が良かったのかも知れんが、教えない方が良かったヤツらもいたのでな。どちらにせよアレンにはプラスになりそうだったから教えとこうと思ったのじゃ」


「教えない方が……?どういう事でしょう?」


進行役はリッチーに任せて俺は頭の整理をしながら話を聞こう。

学園長はみんなの顔を見ながら少し考えて話を始めた。


「大丈夫じゃろか、これ?みんな聞く覚悟ある?」


みんなはお互いの顔を見合わせた後、一息置いて頷いた。


「最初 にみんなに適性の職業を教えた時についでに『限定強化』も教えたじゃろ?」


みんなが頷いた。


「あの『限定強化』、ありゃ全部わしのハッタリじゃ」


「「「え?」」」


みんな声が出た。


「みんなに暗示をかけたんじゃよ。職業を聞かされる、自分の将来が左右される。そんな状況で『限定強化』の話をされたら、みんな信じるじゃろ?実際信じたおかげでその暗示に従って強くなったじゃろ?」


ん?え?よくわからないが確かにそう言われるとそうなのか?と思えてこないでもない。


「みんな暗示にかかっているから、その『限定強化』の条件でしかスキルを発動出来ないと思っておるか、おぬしら全員本当は普通の魔導士だったり戦士じゃよ?」


「え?普通の?」


誰が言ったのか?俺の声だったのか?それともリッチーだったのか?もはやみんな無意識に声が出ていたのかもしれない。


「あぁ。本当は詠唱しなきゃスキルとか使えないが、みんな暗示にかかっているからそういう過程をすっ飛ばせてるわけじゃな」


「そ……そんな事できるはずが……」


「現におぬしら出来とるじゃろ?」


「まぁ……確かに……では暗示が解けたとすれば?」


「無論、他の普通の職業のヤツらなんらかわらんよ。ただ、一気に弱くなると思うのじゃ。アレンに関して言うと、恥ずかしさを感じれば感じるだけ際限なく強くなっていたじゃろ?ただの初期スキルでも桁違いの威力になったはずじゃ?でも、暗示が解けたら最上級スキルを出してもあんな威力を出せないじゃろうな。そもそも最上級スキルの詠唱なんて教えとらんから出来んじゃろ?」


確かに、暗示にかかっていたからこそ初期スキルで

も力の強弱が調整できたし、暗示のおかげで本来使え無いスキルも自分が使えると錯覚させていたから使えるようになっていたと言うことか。


「じゃあなんでみんな変な条件ばかりなんだよ!?」


「酔った時に考えたものだからじゃ」


「は?」


聞き間違いかと思った。


「酔った時に考えたものだからじゃ」


聞き間違いじゃなかったようだ。


「だから、アフターケアとしてこうしてみんなのところ回って仕事を斡旋してたのじゃ」


「そんな罪滅ぼしじゃ全然足りねぇよ!」


「そうじゃろうか……」


俺は椅子から立ち上がり怒鳴ったが、学園長の視線の先のポンパの反応はちょっと鈍かった。ピートに関してもそれなりに満足してたのだろうか?


「はぁ……んで?俺に伝える予定だった『真の限定強化』ってのは何なんだよ?」


俺はもう何も言うまいと思い、椅子に座った。


「そうじゃの。『限定強化』はわしによる暗示じゃ。暗示がとければ弱くなる」


「あぁ、それで?」


「だが長年の月日で習慣化されてるじゃろうから暗示がとけるということはそうそうないじゃろうがな」


学園長は一息置いて話した。


「『真の限定強化』はさらに自分自身に自己暗示をかける事でさらに強くなるものなのじゃ」


「……どういう…………事だよ?」


「アレンを例にあげると、アレンは別に変態じゃないが恥をかくと強くなるじゃろ?仮に、恥をかくような事をして、さらに『恥をかくことに興奮を覚えてると強くなる』という自己暗示をかけたら『限定強化の重ねがけ』状態になって強くなるのじゃ」


「つまり本当の変態になってしまえばさらに強くなるということね!」


「なんで俺より先にミリアが食いつくんだよ」


「なるほど。人間ってのは思いの外単純なんですね。僕の場合はどうかなぁ」


リッチーは学園長の話に素直に耳を傾けている。


「待て待て。俺はそんな事しないぞ。変態になってまで強くなりたくねーよ」


「まるで今は変態じゃないみたいな言い方をするのね?あなた、やっぱり頭がどうかしてるんじゃない?」


「俺は変な事はしてるが、別にやりたくてやってるわけじゃねぇーよ!」


「じゃあ『やりたくてやってるわけじゃない!自分の意思に反してるところに興奮する』ってのはどうじゃ?」


「これまで恥ずかしい想いをして死にたい気持ちになってたやつが突然興奮するって、反動やばすぎるだろ!一体俺の身に何が起こったんだよ!」


「まぁ、それもそうじゃな。じゃが、それゃおぬしがドMになるにはどうすればいいのじゃ?」


「ドMになる限定で話をすすめるんじゃねぇよ。そもそも俺はやらねぇよ!」


学園長があれこれと提案してくるが、俺は自分を曲げてまでそんな事をしたくなかった。


「そんな事だから学園長には済まないがもう用は済んだろ。それより学園長、俺にはあんたが悪の元凶に見えて仕方ねぇんだ。力付くでも捕まえさせてもらうぜ?」


「そうかのぉ……まぁ、わしはもう力も使えんがね」


「力を使えない?!」


「わしが自己暗示をかけた限定強化は『変態的な事をやる』だけで発動出来たんじゃがな。ある時から『果たしてそれが変態的な事なのか?』と、疑問を抱いていき、いつしかそれすらもわからなくなってきてしまったんじゃ」


「俺みたいに『恥ずかしいかどうか』の感情は関係無く、『変態的な事をする』だけで発動させる事が出来たのに、その行為自体に馴れすぎて、もはや日常化してしまったのか……」


「そうじゃ。いつしか『ちんこ』と叫んでみても挨拶をしている気分になったし、裸で街を歩く事に何の抵抗も無くなったんじゃ」


「それはツラいですね」


「あぁ、より変態的な事を求めていかなくちゃいけねぇのかよ……」


ポンパと俺は学園長の不憫な現状に同情した。


「安心していいわ、それかなり変態よ」


「!!?」


ミリアの一言にポンパと俺は我に返った。


「お、おぅ……ぜ、全然可哀想じゃね……ねぇよ……ハハ……ハハハ」


「う、うん……学園長ったら……まだまだご健在で何よりですよ」


ミリアの視線がポンパと俺に突き刺さる。俺達は今すぐ中級スキルを連発させられる自信がある。


「それで学園長は、さらに自らに暗示をかける事はしなかったんですか?」


さすがリッチー!進行役はリッチーに限るぜ!


「試してはみたんじゃがな。おそらく基盤となる限定強化があって初めて真の限定強化になることが出来るんじゃ」


学園長は一度話を止め、俺の方を見て続けた。


「だから、アレン。おぬしがスランプになる前にそれを伝えようと思っておったんじゃ」


学園長の真剣な眼差し。それはまさしく先ほどまでの金に目が眩んで色んな人を貶めてきたクズの顔ではなく、俺達が知っていた教育者の表情だった。


「いや、やらねぇよ」


でもやっぱり俺はしたくなかった。


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