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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第8章
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91話 事後処理と新たなる冒険へ2



「最初にこっちの片付けを押し付けられるとは思わなんだ。」



頭をガシガシと乱暴に掻きながらぼやくノトさんの目の前に二つの死体、否、倒れ伏している二人がいた。近くに落ちている紙を拾い、内容を確認する。



「えっと、『更に役立てて頂けるように調教致しましたので存分にご活用ください。今後はくれぐれも自分から何でもやろうと動かないように願います。』ですって。誰がこれを?」


「意趣返しか、あの野郎。お前も後で戻ったら半殺しにしてやる。」


「??」



私は意味が分からず首を傾げるが、差出人が分かっている様子のノトさん。溜息を長くつくと話し声では反応が無かった二人がピクリとする。


起床した後、着替えを済ませ、執務室に向かっていた。と言うのもルピさん、レイトさんの姿が見えなかったのでそこに居るだろうという結論に至った。根回し等で動いてもらおうと到着してドアを開けたら倒れている二人を発見したところだった。



「別に動けないならそのままで取り敢えず良い。どうせシファルにボコられたんだろ。弛んでるとか難癖つけて。」



何も返答しない二人にノトさんは肯定と取った。



「彼奴の言ったことは気にすんな、俺が好きでやってる事だ。面倒な事も含めて適材適所に人を動かしてるつもりだからそのままで構わねえよ。」


「..........それでは駄目なんすよ。」


「あ?」


「........変わらねば同じ事が繰り返されます。」



ガタガタと震えてうつ伏せのまま言う二人に少し同情していると紙を取るのに屈んでいた私にブツブツと呟く声が両者から聞こえてきた。



「.......魔王様も、シファルも容赦ないのは一緒で嫌になるっす。」

「.......何でこうもお二人は性格というか行動が似ているのでしょうか。」


「.......何か言ったか?」


「「いえ、何も。」」



取り敢えず回復魔法を発動させ二人を回復させる。殺し合いとかで無いため直ぐに動けるようになった二人は咳払いをした。どうも見苦しい姿を見せたのが良くなかったらしい。



「直ぐに動いてもらう予定が狂ったんだ。彼奴はエルシリラに戻ったら解らせてやらねえとな。」



悪い笑みを浮かべて楽しそうにするノトさんに誰しもが何も言えずに通常通りに戻った二人に今後を指示していく。



「勇者たちからで良いだろう。彼奴らが一番関わりある事で渦中にいたんだからな。」


「その事ですが。」



ルピさんは軽く手を挙げて発言する。



「勇者を含めた皆様はお二人が眠られた後お集まりになり時間をずらして就寝した為か起きてくるご様子、気配が有りませんので少しゆっくりされた方が良いかと。」


「そっすね、特に今の魔王様の言葉を聞いて過剰に反応を示したユリナ様が心配っす。」


「私たちはスムーズにお集まりいただき、お話出来るよう場を整えて参りますので。」



そう言って静かに退室していく。特に過剰に反応した様にはしなかったつもりだがいざ落ち着いてしまうと色々を思い返してしまう。




特に、と言われると........



「う゛っ。」



思わず口を抑えて吐きそうになるのを抑える。鮮明に思い返すのは死んだ彼女らの姿。大量の血飛沫と恨めしそうにしていた目がこびりつき記憶から離れない。



「人の死を一度見ていると思っていた俺の考えは過信だったか。」



奴隷商人を銃で殺していた鮮烈さは他人だった故か心を動かされることが無かった。危機感も無かった。けれど今回は違う。自分も彼女らと同じ末路を辿る事になったかもしれないという事案と魔力というものを封じられて何も出来なくなった慢心していた自分、そして、人の害悪を身に受けた。それら全てが恐怖心を煽られただただ辛かった。その時は状況が許さなかったが今は違う。



「すまなかった。」



膝を折っている私に合わせ、優しく抱きしめ、宥めるようにさすってくれる。嗚咽を洩らし泣きじゃくる私にただ謝罪の言葉だけを掛けてくれた。そして、落ち着き始めた辺りでポツポツと語り始める。



「助けられたかと聞かれれば、答えはイエスだ。俺はあの場で直ぐにユリナを殺さないであろうと考え、お前を守る為という大義名分を建てて見殺しにした。お前の望みは同郷者の生存、自分自身は憎くても殺させない、殺さない。そう決めていた事も全て分かった上で、だ。恨むなら俺を恨め。どんな罪も罰も受けよう。」



言われなくても何となく分かっていた。ユウが生きて返さない事を察していただろう。私が人質だったのだ。なのに我儘を言ってしまった。少しピクリと動いたものの余裕そうな表情の下に謝罪の念が見え隠れしたノトさんのどのように行動するのか、この後があの時予想出来ていた。



「そもそも俺の油断から危険な目に合わせたんだ。警戒をしていたのにも関わらず深部まで潜り込まれ、対策の立てようは幾らでもあったっていうのに、俺はそれを怠った。そもそもの事の発端から見込み違いでこうなったんだ。後手に回ったとはいえ、結果論に過ぎない無事も身体的な物だけで精神は守れなかった。」


「............。」


「俺に出来ることなら何でもしてやるから言ってくれ。」



ピクリと反応する。今まで懺悔のように紡がれていた言葉を黙って聞いていたが顔を上げると真剣な表情で私を見据えていた。



「何でも?」


「前にも言ったような気がするが限度はあるぞ。」


「...........。」


「急に黙られると怖いんだが?」



それは此方の台詞でもある。今更して欲しいことと言われても色々と貰っている私が更に我儘を.......あ。



「........イヤリング。」


「.....ああ、良いぞ。」


「但し、前と同じものが欲しいのであの人たちを殺さないで下さい。」


「それは。」



困ったような表情を浮かべて言い淀み、ポリポリと頬を掻く。殺そうと考えていた訳では無いというのが暗に伝わって来てそれならば何故はっきりと言わないのか、疑問を抱く。深呼吸をしてゆっくり答える。



「詳しい話は彼奴らと交えて話すから多くは言わないが元より殺すつもりだったら彼処で躊躇いなく殺っただろう。俺に非がある以上むやみやたらに殺せる程知らんやつでもないってこった。」


「........。」


「どっちにしても丁度いい。時間はあるわけだし大分落ち着いてきたんだ。先にこっちを済ませるか。」



確かに落ち着いては来ていたが状況を客観的に見て恥ずかしくなる。誰かが見ているわけでは無いが抱き締められているのには変わりなく冷静に物事を見た今では羞恥しかない。



「誰も俺に文句を言う奴は、特にこのルギシニラでは居ない。俺が魔王だからな。」



抱き上げられそのまま目的地に向かい歩いていく。生憎と力が入らず為されるがままだが含みある言い方に引っかかる。



「魔の住まう街で魔王と呼ばれているのでは?」


「.....フフッ、まさかそれは建前に決まっているだろ。そうでもしないと殺しに来るだろう。勇者たる資格を持ったヤツらが。」


「え、は?」



目的地は以前も行ったことがある地下牢。そこまでの道すがら今までは会釈やフレンドリーな感じで手を振ったりしていたルギシニラの臣下達はノトさんを目にした瞬間、膝を付き恭しい態度を示す。



「お戻りでしたか、魔王様。ルピ殿とレイト殿と共に準備を滞りなく進めております。」


「うむ、ご苦労。引き続き頼むぞ。」


「有り難きお言葉。」



建前。それはつまり......。



「ルギシニラ出来た経緯。俺が気紛れに世界中を旅しながら変革した世界を気ままに旅していた時代。亜人と蔑まれた者が辿り着いた島の噂を聞き好奇心で近寄った。亜人と言う言い方も良くはないが社会から省かれた存在、蔑まれた者。そんな彼等に俺の存在は近かった。」



語り始めたのは、ルギシニラを街と呼べるまでに発展させた顛末。最初こそは警戒された、特に大人たちからは。家畜相応の扱いを受け荒んでいた彼らからしたら思ってもみない来客であり必死になり躍起になっただろう。子供の中には大人と同じ考えを持つ者と無邪気に物事を捉える者と二分した。そんな無邪気な子供による長髪を弄った行為で露呈したのは魔王の特徴と言われるオッドアイ。当時は同じ場所に長いこと留まることが無かった為、注意力が散漫していた。



「おめめ、片方赤いの!」



自分たちを害しに来たのかと畏怖した彼らだった。けれど彼らにとっては意外な返答が返ってくる。



「別に俺は迫害されてるお前らをどうこうしたくて来た訳でもないし、そんなこと微塵も興味が無い。面倒くさいだろ、んなこと。興味があって来た。どっちにしてもあっちの大陸の方にバレたら生きにくいし、皆殺しも無謀だし、文明滅んでどうにもなくなるし、面倒くさいし。兎に角そんな感じでお前らにとっては俺は未知の存在だろうが俺は俺の興味あるものにだけ労力を割く。まあここは面白そうだし暫くは邪魔にならない所で過ごさせてもらう。」



面倒くさいを二回言ったのは本心だから。畏怖の念が無くなったのは無邪気な子供たちが懐いていたから。子供嫌いをその後主張したにも関わらず、話し掛けられれば、ちゃんと返すし、無茶振りもある程度面白可笑しく叶えたらしい。そんな様子を大人たちは陰から見守りいつしか多くの人に慕われるようになった。最初の扱いが酷かったのにも関わらず、秀でた能力を余すことなく使用し発展に手を貸しただけでなく、怪我した者の治療を無料で行うなど。本人的にはただの人生長い内の気紛れの施しだったがそれを知らない彼等は感謝しか無かった。様々な知識を提案し、一つの島が完成した暁には彼は統治者として請われ、仕方なく引き受けた。


対外的には疎外されている街や力が集まる凶悪な街だとか色々と言われた。しかし、何でもちょっかいを出そうとした様々なヒトが統治者を『魔王様』と呼んだのが聞こえてきたことによって、『魔の住まう街』の魔王というのが定着したらしい。だから外の住民はルギシニラの魔王がまさか災厄の魔王とイコールとはならなかったという訳だ。



「つまりですよ、ここの住民は全員知っているという訳ですか。」


「そもそも悪魔を呼べること自体『邪王』スキル前提だしな。」


「何とも急な話で現実味が薄いです。」


「勝手に思い込んでいたのを利用しただけだ、俺は。勘違いをしたそいつらが悪いだろ。」



確かに。と頷き変えたがそもそも皆の共通知識として魔王は自我を持たない化け物なのだからひょっこり現れて手を施すような聖人君子と結びつくわけが無い。



「ノトさんに突っ込むのは今更なので諦めます。」


「さいですか。」



話が一区切りついたところで目的地に辿り着く。



「自死なんて選択してなくて安堵した。」


「出来ないのを知ってて言ってるでしょ〜? 腹が立つ魔王様ね〜。」


「......殺すなら一思いに殺ってくれ。覚悟は出来ている。」


「はあ、ユリナにも言ったんだが殺すならその場で殺してるっつーの。わざわざ捕える意味ねーだろ。それにお前らを殺すことは禁止されたし。」


「はい、私はお2人には死んで欲しくありません。この世界で紡いだ絆や縁は大切にしたいんです。それにカリナリーさんには勇気ある言葉を貰えました。」


「.....それも作戦の内かもしれないのに〜? 相手を信用しすぎよ〜?」


「それは忠告として前向きに受け取ります。」


「.......相変わらず、手強い嬢ちゃんだ。」



緊張感を漂わせていた二人は息をつく。安心出来る状況になった訳では無いが常に気を張っていて疲労したと言った所だろうか。



「禁止されなくてもこういう道を進ませたのは少なからず俺のせいだから。俺の記憶は未だ曖昧だから本当かどうかもこれから確認しに行くんだが。その前にやってもらいたいことがあるからな。」



そう言って『異空間収納』から取り出したのは細工台と工具一式。



「少し明るくしたら見えるだろう。それであの時作った蒼のイヤリングを作り直してくれ。材料はある。まあメシス、お前がやりたくないなら無理にはやらせん。当てはあるからな。だが、ユリナ自身の望みだったから声は掛けた。」


「.......俺以上の溺愛ぶりを見せつけられただけになるのは癪だな。」


「それじゃあメシスが作ってる間に覚えてる限りを話しましょうか〜。」



語ったのは200年程前の魔法使いが沢山の生きていた時代の幼い頃のカリナリーさん、メシスさん、そして少年のノトさんと彼ら全員の師であった賢者であるトレント様の所に居た頃のお話。

















今章も長くなりますね、多分。

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