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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第7章
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68話 再びのルギシニラと少女(幼女)との出会い



 ワーワーと歓声が聞こえる。



「目、開けていいぞ。何で毎回転移で目を瞑ってるんだ?」


「開けてたら酔いそうで。」


「まあ、別に瞑ってても良いんだが、そろそろ目を開けて周りを確認した方が良いぞー。」



 目を開けると大きな天窓から光が差し込んでいるのが分かる。ノトさんが抱きしめていた手を解くと周りの状況がよく分かる。教会の様なその場所は静かなのに外から大きな声が聞こえてくる。



「情報が早いこって。」


「? どういう意味ですか。」


「外に出ればわかるさ。」



 ノトさんから手を差し伸べられて握るとそのまま引っ張られ外に出る。すると多くの獣人や他の種族の者達が出迎え城までの道を示す様にして道の両脇にいて、手を振って出迎えをしていた。



「....此処通らなきゃいけないんですか?」


「ここ以外道無いけど。」


「....この前一人で帰った時もこんな感じだったんですか?」


「この前はお忍び。城に直接転移したから帰った事すら知らなかっただろう。本当はいつもこうやって帰ってくる様にしてるんだ。」


「こういうの嫌いそうなのに。」


「嫌いだけど仕方ないんだ。」



 溜息をこっそりと吐きながらも沿道に集まった住人に手を振っている。振っているというより上げていると言った方が正しいけど。手を繋いだまま城までの道を歩く。ひそひそと噂をする声も聞こえているが、それをノトさんに言ったところで「気にするな。」の一言で済まされる未来が見えているのでせめて、堂々と歩くようにした。



「..........。」


「何ですか?」



 城の門が見えてきた辺りでじっとノトさんが見て来たのでそう言葉を掛けると面白そうな表情を浮かべて言葉を返される。



「いや、心構え変わったなーと。てっきり文句言われるかと。」


「どういう言葉が返されるか分かってて文句言うとでも思いましたか?」


「.......。」



 自覚はある様でバツが悪そうな表情を浮かべている。そのまま歩いて行くと城門が空き今度は多くの臣下たちに出迎えられる。頭を下げるものと傅くものと二分されるその反応を無反応で通っていくノトさんに何とも言えない気持ちを私が抱えながら城の中に入ると目の前に4、5歳位の歳だろうか、少女が立っていた。その立ち振る舞いは幼さはなく流麗だった。



「お帰りなさいませ、魔王様。」


「ただいま、ミリア。元気にしていたか?」


「はい! 魔王様、後でわたしの頑張りを見て下さい!」


「ああ、楽しみにしてるよ。」



 そう言ってミリアと呼んだその少女の頭を撫でている。嬉しそうにしている少女は私の方を見て一歩後ろに下がるとスカートの端をつまんでお辞儀をすると丁寧な言葉づかいで挨拶をしてくれる。



「お初にお目にかかります。わたしはミリアと申します。以後お見知りおきを。」


「私は桜城(ユリナ)百合奈(サクラギ)と言います。よろしくお願いします。」



 軽く頭を下げる。じっとミリアちゃんに見られている意味が分からず引き攣った笑みを浮かべながらいるとノトさんは言葉を発する。



「ミリア、後で執務室に来い。」


「はい、魔王様。」



 手を繋いだままというのをすっかり忘れていて手を引かれて歩いて行く。ある部屋の前に止まると扉を開けてそのまま入っていく。



「「お帰りなさいませ。」」



 そう言ったのはルピさんとレイトさん。



「おー。」



 そうノトさんは言うとそのまま手を引いて奥の椅子に腰掛け私には隣にある椅子に座らせる。そのまま机の端に多くの書類が積み上がっているのを見ながら突っ伏す。うねりながら髪も黒髪に戻っていく。



「ノトさん?」



 声を掛けても何も反応が返ってこない。寝ている訳では無さそうなので疲労からぐったりしているだけだろう。別に静かでも気にしないのでそれぞれの仕事に戻っているルピさんとレイトさんの出している音だけを聞いているとノックされる。



「ミリアです。入ってもよろしいでしょうか?」


「ああ。」



 いつの間にか背筋を伸ばして座っているノトさんに驚いているとミリアちゃんが入って来る。ノトさんは立ち上がり中に入って来るミリアちゃんの元へ歩いて行く。



「パパー! 何でこの前帰って来たの教えてくれなかったのー?」


「!?」


「悪い悪い。仕事だけで帰って来たから構ってやる暇がないと思って極秘で帰って来たんだ。」


「むー、構ってもらえないからって怒ったりしないもん。」


「今むくれているじゃないか。」


「むくれてないもん!」



 今の状況に頭が追いつけずただただ疑問符を浮かべる。ノトさんが見せる心の底からの笑顔でミリアちゃんの頭を撫でながらいるとミリアちゃんが嬉しそうに笑う。呆けて見ているとミリアちゃんが私に気付き指を指す。



「んっ!?」


「パパー。この人だーれ?」


「え、さっき名前言ったのに....。」



 さっきの自己紹介は何だったのかとか態度が一変してないかとか色々思う所はあるけれどミリアちゃんの「誰」という質問の意図は名前の事では無かったようだった。



「んー。ミリアからしたらママ、になるか?」


「いやいや、この歳でミリアちゃんの歳の子がいたら吃驚ですけど。」


「....ママー?」



 じーっと私の方を見て最初は困惑したような目を向けていたミリアちゃんだったがトテトテと座っている私の横に歩いてくると意外な行動に出た。



「ママー!!」



 座っている私に抱き付いて来てぐりぐりと頭を擦りつけてきた。



「ん、んー!?」



 私は訳が分からず硬直しているとノトさんが笑っているのを視界の端で捉えて少し睨む。



「ミリア、ユリナが困ってるから離れてやれ。」


「魔王様、ユリナ様に説明されていないのですね。」


「質問じゃなくて確定事項のように言うな。まあ、否定できないんだけど。」


「やっぱりっすか。じゃーオレの方からちょっと説明します。魔王様はミリア様の頑張りでも聞いていてあげて下さい。」



 ミリアちゃんは大人たちの会話に首を傾げたけど続くレイトさんの言葉に目を輝かせ、ノトさんに色々と文句なのかむくれたまま話し始めた。それを宥めるノトさんとの光景を確認してからレイトさんとルピさんもミリアちゃんについて教えてくれる。



 先ず、ミリアちゃんは人間であること。この町の住人は人間以外なので会った時に疑問には感じていた。過去に亜人たちが奴隷にされ蔑ろに扱われていた事をノトさんが助けて回った事で奴隷商人は亜人から同種族の何かしらの問題を抱えている人間を奴隷にする風習に変わっていった。そして、ミリアちゃんもその一人だった。捉われていた亜人たちを救った時にたまたま人間の子もいたので救ったそうだ。中でもミリアちゃんは位の高い人物だったけれど畏怖すべき容姿の為捨てられ、孤児院で育てられていたがその孤児院も襲われ、奴隷まで落ちてしまった。畏怖すべき容姿、それは魔王にしか発現しない筈の魔眼の特徴、オッドアイ。それを持ち得ていた。実際魔眼としての機能はないそうだが、魔力が同世代の他の子と比べると高かった。奴隷として痛めつけられおおよそ人間とより家畜のような人間より劣っている存在なのではないかと思わせるような扱いをずっと受けていた。救った処で帰る場所も無く、魔力も高いのでまた狙われる可能性を考慮し、ノトさんが奴隷を開放したついでに連れてきたとの事。この街は、そもそもヒトではない者が住まう場所であったし、魔王であるノトさんが連れてきて厳正な審査を受けたため、街の者にも受け入れられ、このように今は城で暮らしているとのこと。勉強する事が楽しいのか、街に出て多くの人と触れ合い、話す事で街の人達も差別する事無く温かく声を掛けてくれる人が多いとか。



「でも、普通の眼に見えますよ。」


「それは魔王様特製の魔道具のお陰です。街の者は周知の事実なので別にどちらでも畏怖したりしないのですが。今までの歴史で子供の魔王というのが存在しなかった影響なのでしょうかね。はたまたミリア様の性格ゆえなのか。」


「最初は何に対してもびくついて大変したからね。今じゃあんなに活発な子になったっすけど。この街はミリア様にいい影響を与えてくれて助かったっすよ。」


「.......でも、」



 私は今のノトさんとミリアちゃんの楽しそうな光景を見て思わず笑顔になり呟いてしまう。



「本当の意味で心を救ってくれたのはノトさんなんでしょうね。その証拠はミリアちゃんの懐き具合を見れば一目瞭然ですし。」



 笑顔だった私に気付いてミリアちゃんがこっちを見てニコッと笑う。そして、ノトさんとの話が終わったのか、こちらに駆け寄り声を掛けてくる。



「ママもミリアと同じ人間だよね?」


「うーん、そうなのかな?」


「仲間だねー。」



 ニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべるミリアちゃんに私は言いにくそうに声を発する。



「あのね、ミリアちゃん。」


「なーに、ママ?」


「私の事ママって呼ぶのを......やめて......ほしいかなあ......なんて。」


「ダメなの? ミリア、ママの事ママって呼んじゃダメなの?」



 泣きそうな顔を見せられて私は返答に詰まる。子供が苦手な私にはちょっとこの歳でこの位の歳の子の親にされるのは。なんてことをぐるぐると考えていると楽しそうな声音で声を上げる人物がいた。



「ミリア、ユリナは嫌なんだってよ。」


「いや? 嫌いってこと?」


「そうかもしれないぞ。」



 ニヤニヤした表情で私を見ながら言うノトさんに更に表情を悲しくさせるミリアちゃんとで怒りたいような気持も今この場を収める方が優先事項と考え、いったん頭の隅に置いて、溜息を吐いてミリアちゃんに向き直る。



「嫌いって訳じゃ無いんだけど、いきなりで驚いたんだよ。ミリアちゃんが呼びたい様に呼んでもらっていいよ。ごめんね、悲しませるようなこと言って。」


「ううん、ミリアも困らせちゃったからごめんなさい。ミリア、ママもパパもいないから、パパがママって言ってくれて嬉しかったの。」



 そこで私はハッと気づく。この歳で奴隷解放されたと言ってもほんの数年前、数十か月前なのでは無いか。そしたらミリアちゃんを捨てた本当の親が生きていると考えるのが妥当な考えだ。だから街で他の種族の親子、両親と子供の仲睦まじい姿も見ている筈だろう。そしたら自分には何で両親がいないのだろうという考えに聡明なこの子は気付いたのだろう。



「こんな私で良いなら、ママって呼んでいいよ。」


「うん、ありがとう!」



 ノトさんの方をちらっと見ると少し安堵したような表情を浮かべていた。わざと煽る様に言ったのも私に何としてでも肯定してほしかったのかもしれない。まあ、本心は分からないけど。



「ミリア、明日から暫くここにいるから見て来たもの学んできたものをじっくり聞こう。それに他の街にも久し振りに出掛けようか。」


「! ほんと!? 約束だよ!!」


「今日はもう遅いし、明日からゆっくりな。」


「うん! それにパパたち返って来たばっかで疲れてるもんね。また明日!」



 執務室をきちんとお辞儀をして出て行ったミリアちゃんを見送って静まり返った室内。二つの溜息が木霊し、二つの言葉が零れる。



「「疲れた。」」



 その後、私もノトさんも次の日の朝までお互い爆睡していたのだった。





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