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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第6章
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65話 S級昇格試験2日目とハイランク同士の戦闘2


 そもそも私を出場させようっていうのは完全にお遊びじゃないのかと言いたくなる。実際この人たち、師匠を除く目の前の2人はちょっとニヤついているように見える。楽しそうな表情をもう少し隠して欲しいと思うこの心は永遠に伝わらない事だろう。


 試合始まりの合図で歓声がどっと上がりそれに気圧された私は硬直してしまい動く事が出来なかった。瞬間、目の前に拳をこちらに向けて殴りかかっている『怪力』が映り、攻撃を貰う事を覚悟した。しかし、それは果たされることは無かった。



「最初に容赦なくか弱い女子を狙うとは思っていた。」


「当たり前だっ! これも全て『焔姫』の作戦通りだからなっ!!」


「『怪力』! 避けなさい!」


「おう!」


「っ!!」



 魔術の構築、詠唱を終え発動させたそれは強力な火系統の魔術。多分偽装。本当は魔法を行使したに違いないその威力に舌打ち一つした『暴嵐』は障壁を張る事で無傷でやり過ごす。


 まるで第三者視点で見ている様だが私はこんな最初から飛ばしてくる人たちを相手にしなきゃいけないのかと思うと今にも倒れそうになる。



「しっかりしろ。全て見えているなら対処可能だ。レベルは関係ないと言ったのを忘れたのか。」


「はい、少し会場の雰囲気に圧されてしまってました。もう、問題ありません。それに貴方にとってはこれも修行の内と思っているのでしょう?」


「こんな経験滅多にないからな。あっちがまるで利用していると思わせておいた。大番狂わせの試合にしてやろう。」


「可能だと思っているのですか?」


「不可能は口にしない。それに、」



 ニッと笑顔を見せて魔力を一気に解放する。



「全力で出来るんだからなっ。」


「そうでしたね。私も出し惜しみしませんっ。」



 『焔姫』よりの攻撃が止み、障壁を解除し改めて相手を見据える。



「今のはほんの挨拶です。」


「次から生温い攻撃なんて無いからな!!」



 『焔姫』、『怪力』より放たれる殺気に近いような(好敵手)と認識したかのような高まる魔力の波動を受けるとピリピリと肌を刺すような痛みを感じる。けれど、私の最初に目覚めたスキルにとってはプラスにしかならない。



「今度は此方から行きますっ!」



 基礎の授業を思い返し何度も基礎だけを反復していた為か魔術の構築を素早く済ませ、詠唱する。それを邪魔するかのように『怪力』が距離を詰める。その行動に臆せず詠唱を続ける。一人では無しえなくても今は一人で戦っている訳では無いのだから。


 キィンンンと甲高い音が響く。『怪力』の拳に対し、『暴嵐』は剣で対抗した。拮抗どころか『暴嵐』の方が押している。


 私は『暴嵐』を巻き込むようにして魔術を発動させ、火炎放射器のように火を放散させた。持続時間が長いが距離が短いそれは確実に『怪力』に届いた。直前で上に回避した『暴嵐』は後ろで魔術の構築をしていた『焔姫』に対し、剣を弓に変え、狙撃する。その事で魔術の構築が途絶え回避せざる負えない状況を作っていた。



〝長年、トップとしてギルドに立っていた2人はチームワークも良く落とすのが難しいと言われていたが、即席の最強と異例の少女のパーティーに倒されてしまうのか!? 何より、少女が彼ら、彼女らの動きに対処できているのが凄まじいの一言に尽きる!! この試合どうなるのか!!?〟





 会場の一角では3人が真剣な表情をしつつも楽しんでいる様なそんな雰囲気を纏っているその少女をじっと見ていた。



「彼女が本当に遠い存在に感じてしまうのは私だけかしら。」


「千春ン、美奈もそうだよ。何か一緒にいたと言える状況でも無かったけどなんか別人に見えるね。生き生きしてる。」


「......彼女は望んでいたのだろうか。」


「さあ、それは輝にも私にも一生分からないでしょう。確かな事は、楽しく生きてくれているというという事実だけよ。」



 「何も出来なかった私たちがとやかく言える立場じゃないけどね。」と最後に付け加えると納得したかのように黙ってそれを聞いて試合に目を向ける。



 格上の相手。そんな相手と戦っている筈なのに楽しそうにしている彼女はきっと今の状況を後悔していないし、過去の事もどうでもいいと思っている様に見えてしまう。ただただ今を生きていると思えるそんな雰囲気すら感じさせる。



「ねえ、私たちさ、全てが終わったら戻ると思う?」


「え、それは無理だって言われなかったっけ?」


「僕ら次第だし、彼女次第だろ、それは。」


「そうね。できれば今の関係以下には戻りたくはないわね。」


「ん? 日本に戻るって事じゃないの?」



 ぼやいた言葉に意味を察し話し合う彼、彼女らの声は大きな歓声に飲まれた。









「明らかにAランクの実力にいていい存在ではない気がするのは私だけでしょうか。」


「『焔姫』がそう言うならそうだろう! 『暴嵐』よっ! 一体何をした!」


「禁止と言ったのは其方だと思ったが。俺は何もしていない。強くしてやっただけだ。」


「余所見、厳禁ですよっ!!」



 『暴嵐』が引き付けている間に後ろで魔術でコロシアムを覆う様にして雨を降らす。しとしとと弱い雨から強く変わっていく雨に『焔姫』から苛つくような歯痒く感じているのが分かる。前に聞いた属性による発動のしやすさとしにくさ。今、かなり炎系統の魔法が発動しにくくなっている事だと思う。魔術で発動した雨を魔法に変え、持続させながら次の手を打つため動いた私を見て『暴嵐』も動き始める。


 そもそもこの世界豪雨というのがあまりないらしい。なので視界が悪く身動きが取りにくいというのを教えてもらっていたので今のうちに()()で 仕留める為の策を進めていった。







 基本的にユリナの策で動くようにシフトチェンジしていた雨を降らせたことで次の一手を打つため『焔姫』と『馬鹿』がいる場所の雨を更に強めながらあいつらの周りに罠を仕掛けていった。ユリナもそうするつもりだったのだろう。これは俺が昨日罠の仕掛け方などを教えたからユリナなりにアレンジを加え挑戦してみる様だった。



「何時でも良いぞっ。」


「了解しました。」



 あいつらの立っているのを挟むようにして仁王立ちする俺と楽しそうな笑顔を浮かべ立っているユリナ。この距離なら俺が庇う事が出来ないと思ったのか雨を止ませたことで高熱のエネルギーが凝縮された炎を俺に打ち出した『焔姫』。明らかな足止め。その間に『馬鹿』がユリナを狙うつもりなんだろうが。さっきの雨で何も弄してないと思っているからこそ俺が『馬鹿』を『馬鹿』と呼ぶ所以なのだが一生分からぬことだろう。



「気を付けて下さいね、そこ。」



 笑顔でそんな事を言いながら『馬鹿』が踏んだ足元を指差すユリナ。大分相手を煽る事を何とも思わなくなってきている。と、いつの間にか大量になって迫ってきている高密度の火球をユリナの方を見ながら片手間に弓で全て迎撃する。そのついでに仕掛けていた罠の場所に弓を打ち出すと、ユリナの方もわざと足元を指差して注意を促し別の場所を踏ませたことで同時に発動されるその罠は。



「嫌な予感がしますね。」「最悪だっ!!」



 コロシアム内にパチパチと大量の電流が流れる。俺は同系統の魔法を発動して障壁を張っていたユリナを回収し、空中に留まりその様子を見る。すると、ユリナを抱えて浮遊し続けていた事に会場からどよめきが聞こえ、司会も何やら解説を始める。



〝おーっと、これは相当なダメージを負うのではないのでしょうか!! 『暴嵐』様は少女を抱えて浮いている様に見えるがそれ位朝飯前という事なのか!? .........む、何やら今重要な情報が入ってきました! どうやら『暴嵐』様とその少女が昨日手を繋いで歩いていたとの事です!!〟



「ぐふっ。」「......っ!?」



 司会の言葉で俺は昨日街中でやらかした事にダメージをユリナはこんなところで言われると思っていなかったのか驚き目が彷徨っている。



〝だからこその即席のパーティーでも連携が取れていたという事でしょうか!? .......何やら動きがおかしいが大丈夫だろうか!?〟



「あの司会後で絞める。」


「いやいや、物騒すぎます。急にあの人消えたら皆吃驚して捜索しますよ。」




「そんなことしていたなんて報告上がっていなかったわ。『暴嵐』で更に目立つことしないでって言ったはずなんだけど。」


「大会に必要な人物を消されちゃあ困るんだがな!!」



 雷が暫くして止んだ地面からは呆れた様な声で言葉を発する二人がいた。一見して無傷に見えるあいつらはそう見える様に立ち振る舞っているのが分かる。ユリナもそれを感じていたのか立っていた二人を見てあまり動揺しなかった。いや、爆弾を既に投下された後だったからなのか。



「ユリナ、魔力に余裕は?」


「結構飛ばしていたのでそんなに。後2割くらいです。ストックも使い切ったので。」


「酷使し過ぎたか?」


「いえ、これ位消費する事は覚悟していましたしその成果は有るので問題無いです。」


「そんじゃあ、次で最後にしよう。合わせてやるから最大級の魔法を打て。魔術に見せる必要は無い。」


「文句言わないで下さいね。」


「当たり前だ。」



 降り立って直ぐに地面に手を付き魔法を発動させるユリナの手の周囲に大きな魔方陣を展開させながら俺は確実に当たる様にあいつらを引き付ける為に距離を詰め一対二の構図で剣と魔術を行使し、注目を集めさせる。次第にスピードを上げ急所を的確に鋭く狙い始めた俺に意識を向けてきたので俺は横目でユリナに合図を送るとその合図の前に好機だと思って発動し始め此方を見ていたので俺は直前でユリナの方に跳んで回避する。



「最後まで気を抜くなっ。」


「はいっ。」



 短剣を取り出しユリナの魔法によって凍らされた2人は身動きが取れず体まで侵食し始めていた氷をどうにかしようともがいていた所で俺とユリナによって剣が喉元に突き立てられた。



「チェックメイトだ。」「チェックメイトです。」


「降参です。」「降参だ!」



 諦めて溜息を吐くと二人は同時に降参した。静かだった会場が大きな熱気と歓声に包まれる。



〝な、なんと、最後の決定打はあの少女の攻撃だと誰が予想しただろう。剣を向けている表情もさながら獅子を狩る小柄な狩人にも見えたのは自分だけだろうか!? 息ぴったりのコンビネーションを打ち倒し、スペシャルマッチ、『暴嵐』様と異例のランクアップを果たした名をユリナさんというパーティーでした!!〟



「疲れたな。」


「.......。」


「大丈夫......か? おい。」



 魔力切れの影響かふらふらとしているユリナを支えて魔力を流そうとすると氷から脱していたサラに面白がるような声音で俺に提案をする。



「もう公表したらいいじゃない。女が寄らなくなるわよ。」


「......何を?」



 朦朧とした頭でサラの言葉に疑問符を浮かべ掠れた声で聞いてくるユリナに俺はサラの術中に嵌る事を覚悟して、手で顔を上向きにさせる。未だ状況が呑み込めずポカンとした表情を浮かべているユリナに俺は、



〝おーっと!!? これはそういう事なのか!!?? 一部の女性ファンから妬ましい声が聞こえなくも無いが!! それにしても長いぞ!!〟



 魔力を流しながらだったので状況を次第に理解し始めたユリナが目を彷徨わせ始めるのは遅くなかった。離れた後俺は面白がるようにして言う。



「....俺のだ。」



 頭がショートして白い煙を出して気絶したユリナを抱えて会場を出る事に誰も文句を言わなかった。



 後に聞いたらブーイングを上げていた女性連中はユリナに言ったその言葉に同じく気絶した人が多数いたそうだ。理由は分からない。サラは聞いても答えてくれなかったから俺が理由を知る事は訪れないだろう。






「さて、どうっすかな。」



 まだ2日目が始まったばかり。午前中のプログラムが終わった所だ。夜に見世物がある位でそれまで何も予定が無いので街を見て回るしかないのだが。



「早く起きねえと夜になっちまうぞ?」









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