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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第6章
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59話 3人と回想1



「そりゃあ、明日、いや、今日になるのか。休まず出るが?」



 キョトンとした表情でしれっとそんな事を言う師匠に思わず溜息を吐く。


 ふらふらとしっかりとしていない足取りだった師匠の横を歩き、様子を見ながら宿へ帰っていく。S級昇格試験の日程は3日。1日目はAランクからSランクの昇格試験、2日目がSSランク、SSSランクによる模擬戦披露、3日目はお祭り騒ぎの閉会式、だそうだ。そして、2日目になる今日はSSSランクである師匠が出なきゃいけないので「どうするんですか?」と聞いた所師匠らしいと言えばらしい言葉が返ってきてしまった。



「普通に考えたら無理じゃないですか?」


(マスター)は無理の意味を知りませんからね。良くも悪くもポジティブですし。》


「おい、鴉羽。喋れなくすんぞ。」



 若干ドスの効いた声で言うと鴉羽さんは途端に黙り、私もこれ以上何を言っても無駄だと分かっていたので黙っていると足音だけが木霊して聞こえてくるので妙にそわそわしてしまった。



「.......!! 大きな声出すんじゃねえ、この馬鹿がっっ!! いい加減調整しねえとそろそろぶっ殺すぞ!!」


「!!?」



 急に大声を出す師匠に私は目を白黒させる。なおも続く会話に私は口を挟まずに聞いていた。



「あ゛あ゛? 何でお前がいんのに馬鹿に喋らせんだよ。耳が聞こえなくなるかと思ったぞ...........治せるだあ? んな面倒臭い事させんじゃねえよ。...........ああ、全部話す、お前だけでも来い。うるせえのは置いとけ。」



 話がまとまったのか、溜息を吐いた師匠に私は状況を説明してほしくて声を掛けたが考えに耽ってブツブツと独り言を喋っているせいか聞こえていないみたいだったので袖を引っ張ると漸く気付いて私の方を見た。



「わ、悪い。何だ?」


「誰と、何を、どうやって、話してたんですか?」



 一言一言区切ってそう聞くと「あー」と言葉を若干濁しながら目を彷徨わせ答えるのを躊躇っている様だった。迷った末に言われた答えが、



「宿に着けば分かる。」



 だった。その言葉の後小さな声でもう一言付け加えたのは聞き逃さなかった。



「....ちゃんと話す、全部。」



 その言葉に頷き、ゆっくりとした歩みでされど着実に宿へ向かって、真相のゴールを目指して進んでいった。







 宿に着くと一階の出迎えにサラさんとヴェロックさんがいた。私は二人が素の状態でいる事に驚きつつも声を掛け頭を下げると二人は手を上げて答えてくれた。師匠は明らかに嫌そうな声を出して唸っている。



「ノトリア、何時かこういう時が来るのは覚悟してこの子と一緒にいたんでしょうね? 勿論。避けて通れない事は貴方自身が一番分かっていた筈よ。何時までうじうじと悩んでるのよ、らしくないしキモいからさっさとシャキッとして。」


「........決めたからそれ以上言うな。」



 サラさんに言われムスッとしながらも話をしっかり聞いて小さな声で答えていた。



「なら良し! ここでは人目も多いし上に移動するわよ。」


「ああ。」



 ヴェロックさんがやけに静かだと思ったら口を開こうとした瞬間サラさんだけじゃなく師匠にも睨まれ喋れない様だった。なので勝手に話が進み歩いて行くのに付いて行くだけだった。うるさ.....じゃなくて元気なヴェロックさんが師匠と同じように小さな声で「オレの存在空気....。」と言ってたのは私しか聞こえて無かったと思うけど笑うのを堪えた。



「ノトリア、何処まで話したの?」


「あー、どうだったっけ? あんまし覚えてねえや。」



 師匠が使っていた部屋に戻ってきて怠そうにソファに腰掛け(実際本調子で無いので誰も文句は言わない)思い出す素振りさえ見せない様子にサラさんは溜息を吐き私に視線を転じる。



「ユリナちゃん。聞きたい事答える方が良さそうだから欠落してるテキトウな説明の部分を教えて頂戴。どうせ一部はぐらかして言ったんでしょうから。」


「そうですね。否定はできませんね。分からない事の方が多かったですし。」


「......勝手に話しててくれ。俺は少し寝る。」


「オレはこういうの担当じゃないからサラに任せるわ!!」



 師匠は師匠でベッドに移動して横になってしまい、ヴェロックさんは聞く事に徹する様だった。



「はあ、相変わらずね。ユリナちゃん、[光]持ちだったら回復掛けてあげて。魔法発動しながらだと質問が難しいかもしれないけど。」


「いえ、大丈夫です。それ位はこなしてみせます。」



 ベッドに横になって目を瞑って寝てるのか寝てる振りなのか分からない師匠に回復魔法を掛けながら師匠の話した過去について思い出す。







「まあ、間違っては無いけど大分端折っているわね。」


「やっぱりそうなんですね。」



 小さな傷も全部治しきった所で話してくれた内容をサラさんに伝えるとそんな答えが返ってきた。



「オレらの事話してないようだな!!」


「まあ、いろんな立場有っても一々説明するような奴じゃないし。ノトリアの通常ね。」


「あ、え、もしかしてお二人は一緒に冒険していた....?」


「ええ、そうよ。意外だった?」



 確かに意外だと言えばそうだけど、何だかんだ言って仲が良いのを見ているので意外では無かった。だから、全力で首を振る。



「フフ、面白いわね。」


「そうだな!!」



 言われてる意味が分からなくて首を傾げるとサラさんもヴェロックさんも笑う。



「いやね、悪い意味では無いのよ。こんな可愛くて素直な子がよく捻くれ者のノトリアといられるんだろうと思ってね。ね、ヴェロック?」


「おうさ!! まあ、嬢ちゃんが最初は押しかけた形だったんだろうが今じゃ逆に見えるしな!!」


「流石に変わり過ぎて驚いちゃったしね。」


「ど、どういう意味ですか?」



 増々分からなくて口を挟むとサラさんがクスクスと楽しそうに笑いながら説明してくれた。



「ノトリアはね、昔から面倒事は嫌いな性質だったし。それにね、」


「.......。」




「誰も人を寄せ付けようとしなかったのよ。」










 私達と会う前はどんなことをしていたかは多分ノトリアが説明してくれたことだとは思う。確かめようが無いけどね。私が21歳、ヴェロックが29歳で二人で村々を回って困りごとを解決して回っていた時に会ったのよ、ノトリアとね。20歳だったと言ってたわね、確か。ノトリアも魔物を狩るだけの頼まれごとを引き受けて人助けしていたみたいだったから村民から話を聞いた時にヴェロックと声を掛けようと決めていたの。その村は畜産が盛んでね、その家畜を襲いに狼型の魔物が多く現れて被害も大きくて困っていたようだったから私達も引き受ける事にして依頼主から同じ依頼を受けた人を紹介してもらうように取り計らってもらって会う段取りをしていたんだけどね。



「....失礼します。何の御用でしょうか?」


「ああ、ノトリアさん。紹介したい人がいましたのでお呼びしました。」



 その時のノトリアは黒髪短髪、黒の両目で私は彼に見られた瞬間に背筋が凍ったわ。勿論当時のルーセンユラの世界にも黒持ちは居なかったし初めて見たからというのも有ったんだけどそれ以上にまるで私たちを映していないその眼に恐怖を覚えたわ。彼は私達を一瞥した後村の依頼主にはっきり言ったのよ。



「断る。」



 何も用件を言っていないのにそれだけ言って部屋を直ぐに出て行った。呆けていた私はヴェロックに揺さぶられて慌てて彼の後を追い掛けたの。



「私達まだ何もあなたに言っていないのだけれど!」


「.....何の用位察した。だから断った。それ以上に何が必要なんだ?」



 首だけ振り返って初めて合った目は変わらず冷たいものだったわ。この人とは分かり合える事なんて一生出来ないんじゃないかと思った程。ぶっきらぼうのその態度が当時は気に食わなくてね。理由も分からずあしらわれて苛ついていたってのも有るんだけどちょっと煽り文句を言ってやったのよ。



「.....小さい男。」


「あ?」


「何でもないわよ。」


「サラ、それ以上はやめてやれ。」



 今まで無表情だった彼の顔に少し不快そうな表情を覗かせて少しばかり優位に立ったと思って笑ってやろうと思ったのにその瞬間此方に敵意を向ける人がいたのに気付いて警戒態勢に入ったんだけど。



「気付くのが遅いぞ。そんなんじゃ死ぬぞ?」


「......っ!」


「死ぬなら勝手に死んでくれ。目の前で死なれると気分が悪くなるからな。........ああ、ついでに死体の処理もしておいてくれ。」



 それだけ言うとさっさと歩いて行ってしまったから追い掛けて何かを言う気も失せてしまったわ。自分達より遥かに強いと分かってしまったというのも有るんだけど。言いなりになるのは癪に障るんだけど「死体の処理」と言った言葉が物騒だったから敵意を向けてきた方角に向かったらそこには複数の人が血溜まりの中伏せっていた。見ていて気持ちの良い光景では無かったしはっきり言うと人間の死体なんて滅多に見るもんじゃないから吐き気を覚えたわ。



「ヴェロック、悪いけど決めたわ。」


「何をだ?」


「彼奴の面を歪ませるまで付きまとうわ。このままやられっぱなしでいられるもんですかっ!」


「熱くなったお前を止める事なんて出来ないし、サラが決めた事に反対はしないぞ!」



 わざとなのかは分からないけど気配を消していなかったから察知を発動させて追い掛けたわ。ご丁寧に彼の通ったと思わしき場所には多くの狼型の魔物、依頼されていた討伐すべき魔物の死体が頭と体が離れた状態で多く転がっていた。



「何よ、これ。」



 依頼の話を聞いた時も思ったが魔物の割には統率が取れていると思っていた。彼に追いついたと思ったら彼は退屈そうな表情を浮かべて他の狼型の魔物よりも一回り、若しくは二回りも大きい群れのリーダーと思わしき魔物の死体の上に座っていた。でも、私がこの時言った言葉はその敵の状況が惨状だったからとかじゃなくて返り血を大量に浴びて汚れているにも関わらず何とも思っていない態度に戦慄したのよ。で、何故か私は彼の元までずかずかと歩いて近づいて少し高所に座っていた彼が変わらぬ視線で見下ろして来たのを確認してから、



「あんた! 人間なのっ!?」


「.....は?」



 どうしてこの時こんな事を言ったのか私も今でも頭を抱えているんだけどそんな予想外の言葉で目は変わらなかったがポカンとした表情を浮かべて私を見たのを今でも覚えてる。そのせいで言ったセリフを覚えてるんだろうけど。



「フン、アンタがどう思って、どう考えようが私の知ったこっちゃ無いけどこのまま引き下がると私のプライドが許さないからアンタという人物が分かる迄付きまとうわ!」


「....目の前でそんな宣言する奴がいるか。ストーカーかよ。」


「スト....?」


「お前みたいなやつの事だよ。.....付いて来れるもんなら勝手にしろ。だが、話し掛けるな。会話なんて面倒臭い事したくないからな。」


「ええ、勝手にさせて頂くわ。だから、勝手に付いて行くし、勝手に話し掛けてあげるわ。」



 彼が面倒そうな顔をして、自分の発言に若干後悔したような表情を浮かべたのを見逃さなかった。座っていた魔物から降り立ち私の方へ蹴って来たのでその意味が分からなくて疑問符を浮かべると彼は明らかに顔を顰めて言った。



「......持ってけ。」



 その一言を言うとスタスタと村の方へ帰っていこうとしたので私とヴェロックで急いで死体を回収しながら追い掛けたわ。この日から行動を共に、というのは少し意味が違うかもしれないけど旅をするようになったわね。表面上は、だけどね。









「何か出会いが酷いというか、何と言うか。」


「まあ、第三者から見てもそうよね。」


「というか、過去のヴェロックさんも割と空気....。」


「それは言うな....オレ自身が一番感じてるんだ.....。」



 そこから一体どんなことが有ったら今の師匠になるのだろうか。まだ回想は始まったばかり。前に過去を少し話しくれた後に師匠は小さな声である事を言っていた。私に聞こえない様にと思っていたんだろうが聞こえてしまったのだから仕方がない。



「......生きる事を許された新たな人生の始まりと共に破滅への道に進んでいた事はその時は知る由も無い事だ。先の分かってる人生なんて存在しない事なんて一番自分が分かっていたんけどな。」









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