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見習い魔法使いが最強に至るまで  作者: 鬼仁雪姫
第6章
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58話 S級昇格試験1日目と夜中の出来事


 俺は粛々と蔓延る闇を屠っていく。相手が魔物であっても、ヒトで有っても沸いてくる感情は何一つない。淡々と一撃で抹殺していく。全身にはその行動の成果として大量に返り血を浴びている。



「こんな姿を見られたらまた怒られちまうな。」



 ユリナに怒られる姿を想像しながら乾いた笑みを浮かべる。



「あ、悪魔か.....」



 残り僅かな命で呟かれたその言葉に俺は怪しい笑みを浮かべて言う。



「そうだな。似た様なもんだ。」



 既に息絶えているそれに冷ややかな目を向ける。死して直、此方を畏怖するような視線を向けている気がするそれに苛立った俺はそれを細切れにする。



「何やってんだか、俺は。」



 『魔の叡智』、その組織に属していると思わしき人物たちの排除と冒険者での禁止事項へ触れようとしている者への制裁、をしている、はず。何でこんなことしてたんだっけ。こんな面倒臭い事本来の俺ならしないと思うんだけどな。頼まれたわけでも無い筈。


 どんどんと大通りから離れて街灯の光さえ届かない場所まで来た頃俺は足を止めて気付く。



「チッ。............やられたっ。」



 [黒]魔法を即座に発動し鴉羽に最低限のメッセージを届ける為、幻術で烏を作り宿に向けて送る。それにホッとしたのも束の間足元から迫って来ていた闇に覆われ飲み込まれた。その瞬間俺の意識も途切れた。完全に意識を手放す前に脳裏をよぎったのは無茶をしてでも助けに来ようとしている姿のユリナだった。その行動をしない事を望みながら深く、深く沈んでいった。










 烏の鳴き声が聞こえてくる。烏はそんなに好きじゃなかった。でも、師匠が烏と一緒にいるので好きになった訳では無いけど嫌いではなくなった。


 段々と意識が現実に引き戻され声が烏の鳴き声と男の人の声だという事が分かる。途端、私は起き上がる。



「師匠っ!!」


「ああ、申し訳ございません。起こしてしまいましたか。」



 バルコニーに立っていた男性は此方を振り返り私を見てそう言う。私は状況が理解できず疑問符が浮かぶ。



「??? し、師匠は??」


「今、此処にはいらっしゃいません。そして、遊び歩いているという状態でもない様です。」


「貴方は?」



 此方に敵意を向けてきていない事が分かる男性に私は警戒心はあったものの質問を投げかける。それに対して丁寧に挨拶を返してくれる。



「度々申し訳ございません。名乗るのが遅れてしまいました。あの方が下げていた黒い剣が有りましたでしょう? 信じて貰えぬかもしれませんが私がそれなのです。そして、この世界に存在する烏を束ねております、鴉羽(カラハ)と申します。以後お見知りおきを、ユリナ様。」


「さ、様.....。よ、よろしくお願いします。」


「私に敬語は不要です。気軽に接してもらって結構です。」


「え、気軽はちょっと、難しいかも....です。」



 そんな会話をしているとバルコニーにとまっていた烏が一鳴きするとその姿を一瞬で消した。消えた瞬間にそれが魔法で出来ていた事に気付く。殆ど気付かせることが出来ない程精巧に出来ていたので何となく魔法を発動させた人が誰かを察する事が出来た。



「あまり良くない状況ですね。すみませんが私はこれにて一度失礼します。」


「師匠の所に行くんですよね!! 私も行きます。」


「あの方はそれを望んでいないと言っても?」


「! ........はい、後で何と言われようと行きます。」


「それでは、」



 そう言った鴉羽さんは漆黒の翼を広げ手を差し出す。



「あの方の様に転移は出来ませんから飛んで行きますよ。場所が完全に分からなくなる前に向かいましょう。状況は向かいながら簡潔に説明します。さあ、」


「はい。」



 幸い、寝る時に服はいつもの戦闘服(正装をそう呼ぶようにした。)のままだったので魔法のバッグだけを取って、鴉羽さんの差し出された手を取る。その瞬間身体がフワッとして空を統べていく。私は重力に従って下に落ちそうになっているのを片手だけで支えられている。もう片方の手は空いてるので何時でも戦闘態勢に入れるように準備を進める。その間今の状況を説明される。



「敵に意識を誘導されていたようです。普段でしたら気付いていたでしょうが良い状態でいたと言えるような状況では無かったですし今回に限っては仕方が無かったかもしれません。事後措置になってしまうのは何とも情けない限りですが。.....話が逸れてしまいましたが、敵は私達も翻弄する為の策を講じる筈ですのでどのような状況であっても冷静でいて下さい。」



 どんな状況でも、を強調して言ったのを私は聞き逃さなかった。大体の状況は察する事が出来る。敵の目的とか構成とかは全く分からないけど碌な状況では無いだろう。



「そろそろ着きますので、何度も言いますが冷静に。」



 どんどんと高度を下げながらそう言った鴉羽さんに頷き返し降り立った場所は妙に暗い路地裏の一角。きょろきょろと辺りを警戒しながら降りた場所より少し歩く。路地裏の様な暗がりを抜けた瞬間目の前にボロボロの教会らしき建物が有った。鴉羽さんは歩みを止めないので歩く速度を変えずに進んでいく。


 教会の中に入っても今にも崩れるのではないかと思うほど老朽化しており時折、パラパラと天井から埃が落ちてくる。教会の奥の方まで行くと地下へ向かう為なのか下への階段が有った。隠しもせず剝き出しであるそれに気付いて階段を降り始めようとした瞬間に声が木霊して聞こえてくる。その声は明らかに激痛を伴っている様な悲痛な叫び声にも聞こえる。


 隣で鴉羽さんがぽつりと声を漏らす。明らかな嫌悪感を表していた。



「.....外道が。」



 私はその言葉に何も返せぬままいると再び歩みを進み始めた鴉羽さん。少し遅れて後を追い掛ける。此処に歩いて向かって来た時よりも歩みは早く、一歩一歩に力が入っていた。



「一体どこまで続いて......」



 長く続く地下階段に思わずそう呟くと気配察知に漸く人の気配が引っ掛かる。それもかなり遠くの方に。



「少し急ぎましょうか。」


「はい。」



 スピードを上げて階段を降りて行った先には扉があった。この奥から複数の気配を感じる。鴉羽さんと顔を見合わせ頷き合うと勢いよく扉を開けて中に入ってく。



「!」



 部屋はそこまで大きくなく直ぐ目に飛び込んできたものは部屋の中央辺りで倒れ伏している師匠。ピクリとも動かない様子に私に強い動揺が走り敵地にも関わらず油断してしまった。



「冷静で、と言いましたよね。」


「ご、ごめんなさい。」



 敵からの攻撃が飛んできたのを弾きながら鴉羽さんがそう冷たく声を掛ける。その言い草は辛いものが有ったが事実私は死んでいたかもしれないという事実を思い浮かべ震え、気を強く持ち直し向き直る。



「私が敵を引き付けますので最低限の治療を(マスター)にしてきてください。それが終わったらユリナ様にはお手数お掛けしますが敵を引き付ける役を変わって下さい。」


「それが最善策ならば乗ります。もう、迷いません。」


「それでは。」



 簡潔に作戦を立て終えると敵も見計らったように動き出す。今まで敵の姿が視認できていなかったが奥の方からゆらりと目を光らせ現れる。



「....アンデッド...。」


「少々面倒ですがユリナ様は[光]持ちですから楽でしょう。それではよろしくお願いします。」


「はいっ!」



 鴉羽さんは敵に突っ込んでいき私はそれを追い掛ける様にして倒れている師匠の元へ近づいていく。辿り着くと思ったより状態が良くない事に気付く。多くの切り傷が体中にあり、血を流していて血溜まりが出来ている位に。意識も失っている様だった。素早く[光]魔法を発動させ傷を塞ぐ。魔法は万能とは言え失った血までは回復できないので兎に角自分が出来る応急処置をしていく。


 深い傷も有ったものの治しきった後、鴉羽さんに聞こえるよう大声で叫ぶ。



「鴉羽さん、終わりました。交代します!!」


「! もう、ですか! それでは、お願いします。」



 途中ですれ違う様にして声を掛け合うと私は多くのアンデッドと対峙する。回復に大分魔力を消耗していたが集中し直し攻撃魔法を練り上げ敵を倒していった。











「漸く目覚められましたか、遅いですよ。」



 顔を覗き込まれそう声を掛ける男にただ一言、言葉を返し、静かに決意する。


「うるせえ.........殺るぞ。」


《承知しました。》



 一本の黒剣に変化したそれを難なく立ち上がり手に取り、トリガーを引く。



「『魔剣《鴉羽》、真の姿を示せ』」



 二本になった剣を握り、敵を見据えるとそこで奮闘する一人の少女が目に飛び込む。明らかに敵に攻撃を受けたと思わしき傷を多く受けながら諦めずに立ち向かっているのを見て奥歯を噛み締める。



「敵は全て.....殺す。」



 そう言って一人戦い続けている少女の元に飛び込んでいった。











「敵の数が多いっ。これを一人で抑えていた鴉羽さんが凄いのか、この敵の量が異常なのか....。魔力が少なくなってきて打ち洩らしとか、回避する奴らも出てきて対処が大変になって来てるのに。」



 後ろは見れない。見てしまったら隙が大きく出来てしまうから。それに鴉羽さんが裏切るとは思っていない。そう考えて目の前の敵を対処していく。すると、敵側から馴れ馴れしく話し掛けてくる人がいた。



「あれ? 何でこんな所に居るの、君?」


「え、何で....。」



 姿を見せたのはバルディアに一緒に来た4人のクラスメイトの内の一人、神楽優君だった。彼の足元には大きな魔方陣が構築されておりその魔方陣の中から黒い靄が発生し、アンデッドが生み出されているのを確認できた。


 若干の動揺を突いて敵の攻撃を幾らか食らってしまった私は気を引き締めなおし残り少なくなってきた魔力で効率よく敵を倒していきながら優君に攻撃しようとするものの一緒に頑張ってきた思い出やこんな事をする訳ないという思いが攻撃を躊躇わせていた。大元を倒さない限り戦いが続くのを頭で分かっていても攻撃できずいるとその心の葛藤からも攻撃がぶれてしまったりして敵の攻撃を受けてしまう回数が増えていた。



「キリがない.....。」



 姿を見せて以来話し掛けてくる事無く敵を生み出し続けている優君。中々状況が好転しない中、優君は笑顔を向けて口を開こうとした。だけど、その声は私に届く事は無かった。



---シュッ



 何かが私の横を凄まじいスピードで通っていき目の前に迫っていたアンデッドが一瞬で倒された。私はその光景に驚き、声を出せずに呆然と立ち尽くしていた。一瞬見えた優君の表情は怒りに包まれていた。



「....悪い、任せっきりにしてしまって。」



 そう言い両手に黒い剣を持ち、振り返る長髪黒髪の男性。真剣な表情を浮かべ私に近付いてくる。直ぐ目の前に立つと私を抱きしめた。



「!?!? え、あ?」


「......本当は来て欲しく無かったが、来てくれたことに嬉しさを感じてしまう。ありがとうな。」



 そう静かに言ってくれることに嬉しさを感じながらいると負っていた傷が治っていく。少しの間、そうしていると、私は今の状況を思い出し声を掛ける。



「師匠! 状況!! まだ敵が.....。」


「分かってる。後は俺が。」


「いえ、師匠だけには任せません。私も戦えます、いえ、戦います。」


「魔力切れ掛けてるくせに何言ってる。」


「切れ掛けてるだけでまだ切れてません。」


「.....倒れるまで無理は禁止だからな。」


「! はいっ!」



 師匠は眼前まで迫っていた敵を一撃で葬り去ると私を庇う様にして敵の方へ向き直ると握っていた剣に力を込めると手数の多さで次々と敵を倒していった。私は打ち洩らすことなく敵を倒していくのでする事が無く呆然として見ていた。確かサークレルトさんの話によると笑って敵を倒すとか話していたけど.....。


 真剣な表情を浮かべたまま敵を倒している。生み出され続けている筈のアンデッドも数を着々と減らしていき視認できる範囲には数匹しかいないのが分かってきたところで奥から笑い声と共に声を投げ掛けられる。



「うーん、今回は此処までだね。また今度『魔の叡智』が全力でお迎えに来てあげるから待っててね、僕らの魔王様。」



 そう言い残すと完全に姿が消え最後のアンデッドも丁度師匠が倒し終わっていた。



「ふう。」



 息を吐く師匠に私は駆け寄る。



「お疲れ様です。と言いたいですけど、師匠こそ無茶し過ぎじゃないですかっ! 何であんな状態だったのに動けるんですかっ!?」


「あー、気合??」


「そんな訳無いですよね?」


「まあ、その辺色々と疑問に思った事は有るだろうから全部、洗いざらい話すよ。俺が覚えている事は全て。」



 二本になっていた剣がいつの間にか一本だけになっていたのを見ながら話していたせいかバツが悪そうに頭を掻きながら言った師匠に私は驚きじっと見ていた。何も言い返さない私をちらっと見て師匠はプッと吹き出し、



「話さなくても別に俺は良いんだぞ。まあ、その顔は面白いから俺の記憶には残しておくよ。」


「ちょっ、変な所だけ覚えておく必要性は無いですっ!! 」


「ハハハ、無理だなあ。」



 一頻り師匠が笑い、私がむくれていると師匠は笑いを抑え、優しく微笑む。



「帰るか。」


「そうですね。」









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